Amazonが理美容プロユース参入 「プロフェッショナル・ビューティーストア」近日オープン

経営・業界動向
Amazonが理美容プロユース参入 「プロフェッショナル・ビューティーストア」近日オープン

理美容業特化のECサイト

Amazonは、理美容業に特化したBtoBのECサイト「プロフェッショナル・ビューティーストア」を2020年10月末をめどにオープンする。これに先駆け10月19日、オンライン記者説明会を行った。

取扱品目はヘアカラー剤やパーマ剤、ヘアケア用品、消毒剤、マスクなどで、数百ブランド・数千種類を予定。大半がディーラーによる出品だが、一部は直販となる。

利用にあたり、理美容師・理美容室は理美容師免許や保健所の許認可書類などを提出してAmazonの認証を受ける。

◆取扱品目
〇ヘアカラー剤、パーマ剤
〇シャンプー、トリートメント
〇ヘアケア、スタイリング剤
〇除菌剤、消毒剤、マスク
など

◆メーカー・ブランド
ミルボン、ウエラ、ナプラ、ルベル、アリミノ、資生堂プロフェッショナル、ホーユープロフェッショナル、ビューティーエクスペリエンス、中野製薬など
※現状、出店事業者はメーカーではなくディーラーが大半を占める。ただし、一部は直販。

◆利用者
理美容室・理美容師(Amazonの認証が必要)

スキンケア、メイク、バス用品まで幅広く

Amazon、理美容業界特化のECサイト「プロフェッショナル・ビューティーストア」のカテゴリー

会見で言及されたカテゴリーは、説明スライド(上図)のⒶにあるヘアカラー剤、パーマ剤、シャンプー、トリートメント、ヘアケア、スタイリング剤、除菌剤、消毒剤、マスクのみ。

しかし、左上のⒷには、より詳しいカテゴリーが表示されている。

プロフェッショナル・ビューティー下のカテゴリーは

〇スキンケア・ボディケア
〇バス用品
〇ヘアケア・カラー・スタイリング
〇メイクアップ
〇香水・フレグランス
〇メイク道具・フェイスケアツール

となるようだ。ただし、最終調整中とのことなのでローンチまでに変更される可能性もある。

ヘアカラー剤・パーマ剤の取り扱いブランド

「Amazonプロフェッショナル・ビューティーストア」の取り扱いブランド・メーカー

気になるヘアカラー剤・パーマ剤の取り扱いブランドについては、資料(上図)にあるナプラ、ルベル、中野製薬、ホーユープロフェッショナルが挙げられた。

「Amazonプロフェッショナル・ビューティーストア」の取り扱いブランド・メーカー

また、言及されなかったものの、「メーカーで探す」機能画面などで、ミルボン、ウエラ、アリミノ、資生堂プロフェッショナル、ホーユープロフェッショナル、ビューティーエクスペリエンスの名前が確認できた。

現状、出店事業者の大半はディーラーであり、Amazonは「メーカーとディーラーの契約内容について関与しない」との姿勢を取っている。どのブランドが直販なのかは明らかにされていない。

9割が個人経営、1個からのネット仕入に需要

アマゾンジャパンAmazonビジネス事業本部の石橋憲人事業本部長、消費財事業本部ビューティー事業部の北尾悠樹事業部長
Amazonビジネス事業本部の石橋憲人事業本部長(左下)と消費財事業本部ビューティー事業部の北尾悠樹事業部長(右上)

記者会見では、アマゾンジャパンAmazonビジネス事業本部の石橋憲人事業本部長、消費財事業本部ビューティー事業部の北尾悠樹事業部長が概要を説明した。

個人経営の比率が年々向上。理容業の93.1%、美容業の88.7%が個人経営という業界構造
個人経営の比率が年々上昇。理容業の93.1%、美容業の88.7%が個人経営という業界構造

厚生労働省の「生活衛生関係営業経営実態調査(平成27年度)」によると、理美容業は個人経営の比率が非常に高く、理容業が93.1%、美容業が88.7%に上る

業界の大多数を占める小規模サロンでは大量発注は難しく、過剰な在庫を避ける意味でも少量での発注が求められている。

北尾事業部長はこうした業界事情を踏まえた上で、Amazonによる理美容室へのインタビュー調査でも「最低発注金額があるためにこれだけちょっと欲しいというときに発注を見送ることもある。少ない単位で発注できればいい」「ディーラーに1本だけ頼むのは気が引ける」などの声が上がったことを紹介した。

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また「田舎だと買えないものが多い」との声もあったとし、「全国各地の理容室、美容室、理美容師の皆さまが、必要な商品を1点からでも購買できるようにする」と、プロフェッショナル・ビューティーストア開設の意義を語った。

理美容業に特化、米国に続き2カ国目

日本におけるAmazonビジネスは2017年9月スタート。アメリカ、ドイツ、イギリスに続く4カ国目だった

BtoBであるAmazonビジネスは、日本では2017年9月にスタート。アメリカ、ドイツ、イギリスに続く4カ国目の導入であり、この3年間に請求書払い、月末締め翌月末払いなど、日本の商習慣に対応してきた。

新たにオープンする理美容業に特化した「プロフェッショナル・ビューティーストア」は、2019年スタートのアメリカに次ぐ2カ国目だ。

なぜAmazonは、本国に続く導入先として日本を選んだのか?

しばしば「日本は中小企業の割合が高いから生産性が低い」と言われるが、欧米も中小企業の割合は決して低くない。正確には、卸売業・小売業などのサービス業において小規模零細企業の割合が格段に高く、狭い国土に無数の事業所があることが労働生産性の面で不利に働いている。

==参考記事==
中小零細企業の割合が圧倒的に高いという弱み(東洋経済)

理美容ディーラーは全国に1000社あると言われるが、その大半は小規模事業者。サロンについても美容室25万軒強、理容室12万軒弱、合わせて約37万軒と、コンビニエンスストアやドラッグストアに比べて圧倒的な数があり、その9割が個人経営だ。

ディーラー、サロンともに数が多く事業規模は小さいという環境では、情報が行き渡りにくく、進化も起きにくい。こうした業界事情に対してAmazonは「デジタルトランスフォーメーション(DX)を進める余地がある」(石橋事業本部長)とし、理美容業特化のECサイトを開設するに至ったという。

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価格競争進むか、体力は続くのか

今回の発表は、率直に言って革新的と呼べるほどの仕組みはなかった。メーカー・ブランド・商材別の検索機能、請求書払い、理美容師免許や保健所の許認可書類による認証は、先行のECサイトでは当たり前に行われている。Amazonポイントの汎用性は確かに高いが、美容サロン特化のビジネスクレジットカードもすでにある。

今回のプロフェッショナル・ビューティーストア開設に先立ち、通常のAmazonでは理美容プロユース商材の販売ができなくなった。プロフェッショナル向けのヘアカラー剤やパーマ剤を一般生活者が購入できるという状態はリスクがあるため、規制によるリスクヘッジもストア開設の目的のひとつと推察される。

しかしながら、これも先行サイトでは当然はなから規制されていたことであり、やはり最大の注目は、マーケットプレイスの出店事業者同士による価格競争だろう。

プロフェッショナル・ビューティーストアには、複数のディーラーが出店事業者として参加する。「地方の小規模ディーラーであっても、営業の人手をかけずに全国の理美容サロンに販路を拡大できる」のは魅力的だが、これまで取り組みが進まなかったのには理由がある。

そのひとつが集客。相当な規模の販促費を投下しなければ、ECサイトの存在を知ってもらうというスタートラインにすら立てない。その点、Amazonが用意するプラットフォームを利用すれば、集客面のハードルは下がる。

しかし一方で、他の出店事業者との価格競争は否応にも加熱する。それに耐えうる体力が果たしてあるのか。手数料や協力金の負担に耐え切れずにマーケットプレイスから撤退する事例は、枚挙にいとまがない。

理美容室にとって、仕入れやすい価格帯になっていくのか、はたまた体力が尽きた事業者の撤退によってディーラーの集約が進むことになるのか、あるいは業界のデジタルシフトにギアが入るのか。Amazonの参入が理美容業界に何をもたらすのか、今後の動向から目が離せない。

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