東京商工リサーチは、2019年の「理容業・美容業」倒産件数が119件(前年比8.1%増)に達し、過去30年間で最多となったことを明らかにした。※2019年1-12月・速報値
理美容室の倒産件数は、2016年の82件から4年連続で増加している。
美容室の倒産は初の100件超え
これまでの過去最多は、東日本大震災のあった2011年の118件。
1件しか増えていないともとれるが、その内訳は、美容室が2011年比で15.3%増の105件で初の100件超え。理容室はほぼ半減の14件となっている。
2011年→2019年の変化
〇美容室の倒産件数 91件→105件(15.3%増)
〇理容室の倒産件数 27件→14件(48.2%減)
理容室の倒産は、2011年以降、8年連続で10件台に落ち着いている。市場環境として美容室は増え、理容室は減っているため当然ではあるものの、明暗が分かれた形だ。
理美容市場の現状分析
東京商工リサーチは、理美容市場の現状を次の通り、指摘する。
〇理・美容業は大都市を中心に店舗が乱立し、過当競争が続く
〇人口減少や顧客の高齢化などで顧客の囲い込みが激しさを増すなか、1000円カットなど低価格チェーンも台頭し競争が過熱化している
〇小資本でも独立できる業界なため参入障壁も低く、既存店舗と相次ぐ新規参入組との間で熾烈な競争が繰り広げられている
生き残り競争における課題
また、今後求められることについては、次のように分析している。
〇生き残り競争には、新規顧客の獲得に向けたPRやクーポンなどのアイデアだけでなく、技術や価格競争力も必要になっている
〇予約システム、顧客のヘアデザインのデータ化など、顧客獲得にはIT化と利便性も求められる時代を迎えている
閉店は数千店舗に上る恐れ
倒産ではないが、事業停止した休廃業・解散も2018年は317件(前年264件)と増加している。
「1社で複数店舗を経営しているケースも多く、店舗数ではかなりの数が休廃業・解散で閉店し、一般的な閉店も含めると数千店舗に達する可能性もある」(東京商工リサーチ)。
さらに、経営者の高齢化や人材確保の問題などの問題もあり「理・美容業は小・零細規模を中心に淘汰を余儀なくされている。今後も倒産が増加する可能性が高まっている」としている。
ビュートピア編集長の目
理美容室の倒産件数がバブル末期の1989年以降で最多、過去30年間で最多とのことですが、それ以前に今よりも倒産していたとも思えないため、東京商工リサーチに問い合わせました。
東京商工リサーチでは1952年から倒産統計を取っているそうですが、理美容室の業態や形態は時代とともに変遷していて一概に比べられないため、現在の理美容室と比較できるデータとして過去30年としているとのことでした。例えば、介護業界も訪問介護が増えたりなど、業態・形態が変わっているので、変遷を取り上げる際は配慮しているそうです。
東京商工リサーチとしては、30年で過去最多との見解・発表ですが、おそらく日本の美容史上で過去最多の倒産件数なのではないでしょうか。
※本調査は日本産業分類(小分類)の「理容業」「美容業」の倒産を集計・分析した速報値。記事では随時、理容業を理容室、美容業を美容室とした