急増する美容室の倒産。過去最多2018年を3割増で上回る勢い
東京商工リサーチは11月11日、「美容室の倒産状況」を発表した。これによると、2019年1~10月の倒産件数は92件(前年同期比29.5%増)に上る。
年間の倒産件数は数年来、東日本大震災のあった2011年の91件が最多だったが、2018年(1~12月)の倒産件数が95件となり、最多記録を塗り替えたばかり。
しかし2019年は10月末時点で、昨年同期(71件)の3割増で倒産が増えていることから、東京商工リサーチは「2018年を上回ることが確実になった。初めて100件を上回る勢い」としている。
9割が小規模・零細企業の倒産。倒産した美容室の負債額、資本金は?
倒産した美容室のほとんどが、小・零細規模。
資本金別では、1000万円未満(個人事業含む)が88件(前年同期比31.3%増、構成比95.6%)で9割以上を占める。
なお、1000万円以上5000万円未満は4件(同33.3%増、同4.3%)、5億円以上はゼロ(前年同期1件)だった。
負債額別では、1000万円以上5000万円未満が、昨年の59件から4割増で83件に上る。
これに5000万円以上の4件を加えた「負債額1億円未満」が87件(前年同期比27.9%増、構成比94.5%)で、小規模倒産が大半を占める。
なお、1億円以上5億円未満は5件(同150.0%増、同5.4%)、 5億円以上はゼロ(前年同期1件)だった。
増える「不況型倒産」。倒産原因は「販売不振(業績不振)」が8割
原因別の最多は「販売不振」。92件のうち75件(前年同期比19.0%増)と全体の8割以上を占めた。次いで、赤字累積の「既往のシワ寄せ」が7件(同75.0%増)、運転資金の欠乏など「過小資本」が3件(同200.0%増)の順だった。
「不況型倒産」と呼ばれる「既往のシワ寄せ(赤字累積)」「販売不振」「売掛金等回収難」を合わせると82件で約9割に上る。
ただし、「売掛金等回収難」は前年と同じくゼロだった。
飲食業などと比べてクレジットカード決済を導入している美容室が少ないからという単純な理由なのか、先行してクレジットカードを導入している美容室は他の面でも経営手腕が優れているからなのか。
消費税の増税以降、一気にキャッシュレス決済の普及が進んでいることを考えると「売掛金等回収難」による倒産が来年以降増えるのかどうかが注目される。
近畿圏の倒産が増加、全体の4割強を占める
地区別では、近畿の倒産件数が前年の26件から38件へと増加、全体の4割強を占めている。
次いで多いのが関東。17件から25件に増加し、全体の3割弱となっている。
なお、形態別では、破産が81件(前年同期比22.7%増)と全体の88.0%を占めた。
倒産した企業の大半が消滅型の破産を選択し、再建型の民事再生法は11件(構成比11.9%)にとどまった。
2018年は休廃業・解散も過去最多で242件
倒産件数が過去最多だった2018年は「休廃業・解散」についても242件と、過去20年間で最多だった。この数は、2018年の倒産件数95件の2.5倍に当たる。
休廃業・解散は2013年から大幅に増え、2016年に初めて200件を突破。倒産と休廃業・解散の合計は「市場から撤退した美容室」を示すが、急カーブで上昇が続いている。
「休廃業・解散」は、東京商工リサーチの企業情報データベース(379万社)からの抽出。個人事業の美容室まですべての美容室を登録しているわけではないため、実際の休廃業・解散数はさらに多いものと推測される。
なお、倒産件数については、それまでデータベースになかった美容室についても官報などで把握しているため、ほぼ正確な数値となっている。
【編集注】倒産件数の計測については、2018年の美容室倒産の記事で詳しくご紹介しています
コンビニエンスストアの4.5倍。25万店がしのぎを削る美容室
2019年10月31日に厚生労働省が発表した「平成30年度衛生行政報告例」で、初めて25万軒を超えた美容室。
人口が減少しているにもかかわらず、店舗数はコンビニエンスストアの4.5倍(※)というオーバーストア状態となっている。※2019年9月末で5万5711店(日本フランチャイズチェーン協会調べ)
今回、倒産状況を調べた東京商工リサーチは「美容室は参入障壁が比較的低く、典型的な労働集約型の業種である。人口減少が続き、顧客獲得が厳しさを増すなか、追い打ちをかけるように大手や低価格チェーン、1000円カット店が台頭し、生き残りは厳しさを増している」と指摘。
労働集約型の産業では、小・零細店舗に「人手不足」と「人件費」が重くのしかかることになる。さらに、1000円カットを始めとする価格訴求店、安価なヘアカラー専門店などが台頭し、一段と厳しい価格競争が巻き起こっている。
こうした状況を踏まえ「美容室が生き残るためには、予約システムのIT化など初期投資とコスト削減も必要だが、顧客ニーズに見合う柔軟なサービス提供がより重要になっている。そのためには技術力やカリスマ性だけでなく、口コミやSNSなどを活用した顧客にアピールする力もまた求められている」と分析している。
※本調査は「日本標準産業分類 小分類」における「美容業」の倒産、休廃業・解散を集計・分析したもの。東京商工リサーチ作成の図表に編集部で注釈を加えた
【関連記事】「2018年の美容室の倒産件数、過去10年で最多か。東京商工リサーチ1-11月調べ。全国で86件、昨対比1.3倍」
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