Ash、NYNY、チョキペタなどの美容室を関東・関西で約330店舗展開するアルテ サロン ホールディングスが、2022年6月7日をもって上場廃止となった。
成長投資のための上場廃止
今回の上場廃止は、成長投資に向けて計画通りに行ったもの。
アルテ サロン ホールディングスは今年2月7日付で上場廃止を発表するととともに、その理由として「抜本的な経営改革に着手すること」、そのためには「大規模な先行投資が必要で、短期的には収益を悪化させ、一般株主の利益を損なう可能性があるため上場廃止すること」と説明していた。
一般株主が保有していた株式は、創業者で現会長の吉原直樹氏が代表を務める株式会社ジェネシスが引き受けた。
事業の継続を前提としたMBO(マネジメント・バイアウト)であり、上場廃止後も、現在の経営陣が引き続き舵をとる。
美容室上場企業は5社に
アルテ サロン ホールディングスは、吉原直樹氏が1986年8月に横浜で開いた美容室が始まり。1988年11月に有限会社アルテを設立し、1997年12月に株式会社アルテへ組織変更した。
2000年からフランチャイズ(FC)への暖簾わけを本格化し、2004年8月にJASDAQへ上場。今年4月の東京証券取引所の市場再編で、JASDAQスタンダードに移行していた。
ちなみに、美容室で初めて上場したのは、1999年に東証2部に上場した田谷(2001年に1部へ市場変更。現在は東証スタンダード)。
今回のアルテ サロン ホールディングスの上場廃止により、美容室の上場企業は、田谷、キュービーネットホールディングス、ヤマノホールディングス、AB&Company、エム・エイチ・グループの5社となった。
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コロナ禍から持ち直し業績好調
アルテ サロン ホールディングスの業績は好調で、2021年12月期の売上高は前年同期比9.8%増の86億3900万円、営業利益、経常利益も前年を大きく上回った。
新型コロナウイルスの影響で減収減益だった前期から着実に持ち直している。
売上高 | 営業利益 | 経常利益 | |
2021 | 86億3900万円 | 5億7000万円 | 6億3600万円 |
2020 | 78億6700万円 | 1億2300万円 | 3億300万円 |
2019 | 85億円 | 5億1300万円 | 5億2500万円 |
また、5月10日に発表した第1四半期決算も、売上高20億7500万円(4.5%増)、営業利益9100万円(118.1%増)と好調だった。
業界の急激な変化を重視
業績好調のアルテ サロン ホールディングスだが、先行きについては決して楽観視していない。
美容室のメニュー価格の二極化、シェアサロンや業務委託美容室の台頭、従業員のいない“ひとり美容室”の増加など、社会や業界の急激な変化を踏まえ、抜本的な経営改革に着手するという。
具体的には大きく5つの施策をあげており、「美容室向けコンサルティング会社」の構想、DXの推進、M&Aなどに取り組む考えだ。
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文/大徳明子