年商3兆9000億円、トヨタグループの大手自動車部品メーカー・アイシンが、自動車業界でつちかった最先端技術をもって美容業界への参入を進めている。
第1弾となる「Hydraid(ハイドレイド)」は、“キューティクルの隙間より小さい水粒子”で髪を補修するという世界初の美容機器だ。
美容業界での認知を得るため、ビューティーワールド ジャパン2022にブースを出展。ヘア&ネイルステージでは、先行導入したPEEK-A-BOO代表取締役社長の川島修身氏、MINX取締役の歳嶋建国氏が、サロンでの活用事例や効果実感について語った。
スチームの600分の1、世界最小の無帯電水粒子
美容室での加湿施術は、水を細かな粒子にしたスチーム(蒸気)を髪や地肌にあてるというものが一般的だ。ところが、自動車のカートリッジフィルターの知見などを活かして開発した「Hydraid(ハイドレイド)」には、水を入れるタンクが無い。
世界初※のテクノロジーで、空気中をただよう水分子をキューティクルの隙間よりも小さな水粒子に変換し、地肌はもちろんのこと、髪の内側まで水分を補給する。
スチーム粒子が1μm(ミクロン)を超え、シャワーヘッドなどに使われているウルトラファインバブルでも数十nm(ナノミクロン)以上なのに対し、ハイドレイドの水粒子はわずか2nm以下。スチーム粒子の約600分の1という極小の粒子だ。
この目に見えないほど小さい、世界最小の無帯電水粒子は、髪の内部で結合水となる。
クセや傷みが気になる髪にうるおいを定着させ、ツヤ・柔らかさをキープすることで、カラーやトリートメントの施術の効果を高めるという美容機器だ。
空き時間に手間いらずで単価アップ
ハイドレイドは2021年4月より、都内の協力サロンでテスト導入を開始。12月には、Makuake(マクアケ)で一般生活者に施術体験つきのクラウドファンディングを行い、125人の賛同者から225万5600円を集めた実績がある。
これから本格的に展開するにあたり、ビューティーワールドジャパンに出展。セミナーでは、先行導入サロンであるPEEK-A-BOOとMINXから、それぞれ川島修身氏と歳嶋建国氏が登壇し、マクアケの専門性執行役員でハイドレイドのブランドプロデュースを手がける北原成憲氏が司会進行を務めた。
ハイドレイドは、カラーやトリートメントのコールドタイムに機器のスイッチを入れるだけで放置できるため、余計な時間も施術者の手間もかからない。
PEEK-A-BOOでは、カラーやトリートメントの施術と組み合わせるだけでなく、さらにハイドレイド単体でもメニュー化しているという。
川島氏は「ふけが出づらくなったり、薬剤が染みなくなったと言われる。(コールドタイムの)空き時間を活用して単価アップができ、来店動機にもなる」と期待を寄せた。
また、「最初は正直、半信半疑だったが、サロンでの半頭実験などから効果を実感するようになった」というMINXの歳嶋氏も「髪をしっとりさせる方法はいろいろなものあるが、ハイドレイドはサラサラの“素髪っぽい質感”になる。カットしやすく、デザインしやすい状態になる」と太鼓判を押した。
フェイス用美容機器とあわせ本格展開へ
アイシンでは、髪と地肌をいたわる「素髪ケア」を訴求するハイドレイドについて、いよいよ本腰を入れて展開する構えだ。
スチーム粒子の600分の1以下という世界最小の無帯電水粒子は、多岐にわたって活用できるといい、フェイス用美容機器の投入も予定している。
なお、施術体験つきのクラウドファンディングには、今回登壇したPEEK-A-BOOとMINXを始め、Hair Brisa、Laf from GARDEN、Lien、LECOも協力。今後さらに導入サロンを増やしていく考えだ。
※世界初:国内外論文および特許についてのアイシンによる調査結果(2021年9月15日現在)
文/大徳明子、杉野碧 撮影/杉野碧