厚生労働省の衛生行政報告例において、平成29年度の理美容室の店舗数と、従業している理美容師数を発表しました。
来年4月30日で平成の世も終わりを迎えます。次の時代の始まりが意識される今、平成の理美容室店舗数の推移をまとめました。
⇒平成30年度統計:美容室の店舗数が初の25万軒超え!従業美容師数は1万人増の53万3814人
平成29年度統計。美容室は増加、理容室は減少傾向続く
美容室が過去最高の24万7578店。減少続く理容室は12万965店
厚生労働省は、平成29年度衛生行政報告を発表した。美容所(以下、美容室)は4218店(前年度比1.7%)増の24万7578店となり、過去最高を更新。
一方、年々減少傾向にある理容所(以下、理容室)は、1574店(1.3%)減の12万965店となった。
美容師数は2.8%増の52万3543人、理容師数は1.1%減の22万1097人
従業美容師数は、1万4264人(2.8%)増で、過去最高の52万3543人。従業理容師数は2509人(1.1%)減の22万1097人だった。
理美容の合計では、店舗数が2644店(0.7%)増の36万8543店、従業員数が1万1755人(1.6%)増の74万4640人となった。
平成時代の理美容室店舗数の推移
美容室にとって平成は成長の時代
美容室は、平成の時代を通して増加傾向にある。前年を割ったのは11年度、22年度の2回のみ。
このうち22年度は東日本大震災の影響で、一部地域のデータが集計されていないためと見られ、翌年は平成を通してもっとも高い伸び率(2.3%増)を記録している。
一方、理容室は、平成の時代を通して減少傾向にある。前年を上回ったのは、わずか4回のみ。
そのうち23年度は、前年が東日本大震災の影響で実際より少なく集計されたためと推測され、実質は3回といえる。なお10年度の100%は、小数点2ケタの切り上げによるもので、正確には99.98%で前年を下回っている。
平成時代に美容室は6万店増加
まとめると、平成元年の店舗数と比べて、美容室は6万2126店増え、理容室は2万3557店減った。理美容室を合わせると、3万8569店増加したことになる。
産業として見ると、理容業は店舗数、従業員数とも減少が続くが、これを上回る勢いで美容業の店舗数、従業員数が増えている。つまり、理美容産業としては成長を続けているといえる。
圧倒的な店舗・人員数。美容関連物販の強力なインフラに
コンビニやドラッグストアを大きく上回る店舗数
「数は力」ではないが、この店舗数、人員数は力になる。
美容室を、美容に関する物販を行う拠点としてとらえた時、競合となる店舗数は、百貨店・スーパーマーケットが合わせて5133店舗、ドラッグストアが1万5049店舗、コンビニエンスストアが5万6374店舗(経済産業省・平成29年商業動態統計)。
最も店舗数の多いコンビニでさえ、美容室の2割強にすぎない。美容室の平成時代(元年~29年度)の増加店舗数である6万2126店にさえ及ばない。
何より、美容室には美容のプロフェッショナルがいる。ドラッグストアもビューティアドバイザーなど独自の資格を設けているが、美容室で働いているのは、専門教育を受け、国家資格を有する美容師だ。これは大きなアドバンテージになる。
美容関連物販は今が変化の時
これまでも店販の重要性は繰り返し指摘されてきたが、店販を得意とする美容室は多くない。
しかし、時代は変わりつつある。
ドラッグストアは化粧品の最大の販売チャネルだが、カウンセリング化粧品を常時ディスカウントで販売する価格クラッシャーという側面を持つ。
コンビニはそもそも品ぞろえが少なく、昔ながらの化粧品専門店は、商店街の衰退にともない、数を減らしている。
百貨店は全体的に不振の中、訪日外国人の需要もあって化粧品については好調だが、店舗数自体が減っているため、買い場としての利便性はよくない。
百貨店まで遠い町にも、近くにコンビニが無い町にも店があり、国家資格を持つ美容のスペシャリストが勤務する美容室は、本来、化粧品の販売に適した場であるはず。
メニュー単価の下落に苦しむ美容室も少なくないが、今こそ、ヘアケア製品にとどまらない、トータルビューティを意識した物販に力をいれるべき時だ。
「美容室で化粧品を買う」ことが当たり前の時代へ
美容関連の物販を取り巻く環境は、潮目が変わろうとしている。美容メーカー最大手のミルボンが、化粧品メーカー大手のコーセーと手を組み、昨年7月にコーセーミルボンコスメティクス株式会社を設立したのは周知の通り。
販売戦略と教育をミルボン、商品開発はコーセーがおこなうため、実際の販売を行う美容師にも、一般消費者にも受け入れられやすいものになると見られる。
来春には先行販売が始まるとの話であり、これが成功すれば「美容室で化粧品を買う」という行動が当たり前のことに近づく。化粧品を販売しやすい環境になっていくはずだ。
「美容」という言葉を冠にいただく美容室。
百貨店や化粧品専門店といったカウンセリング化粧品の販売先が減少している今こそ、社会的インフラとなりうる店舗数とプロフェッショナルなマンパワーを活かし、化粧品の新たな販売チャネルとして存在感を示す時ではないだろうか。
コーセーミルボンコスメティクスの第1弾商品は、平成の終わりか、それとも新元号の始まりとなるのか。いずれにせよ、美容業界は変化の時を迎えている。