
弁護士の松本隆さんによる連載『ヘアサロン六法』。
第54回は美容室の倒産を取り上げます。
美容専門学校で美容師法の講義を担当している松本さんが、軽妙なトークとイラストでとことんわかりやすく解説します!
目次
「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく!」

こんにちは!弁護士の松本隆です。
この連載では「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく」をモットーに、あえて内容をシンプルにしてお送りしています。
事例から見てみましょう。
私はXサロンの経営者でAといいます。
知人のYサロンの経営者Bさんに300万円ほど貸しているのですが、先日、Yサロンの弁護士から「受任通知」が届きました。
どうやらYサロンは倒産するようですが、貸している300万円は戻ってきますか?
これを機に倒産する場合の流れを教えてほしいです。
美容室の倒産件数は過去最多!
2024年度(令和6年度)の美容室の倒産件数が過去最多になったという記事がビュートピアで出ています。
厳密には令和6年4月~令和7年3月までで計算するのでまだすべてのデータではありませんが、令和6年4月~令和7年2月時点で197件です。
ですので、1年度で「200件」を超える見込みです。
今回は美容室が倒産するときの流れについてお伝えしたいと思います。
ご自身のサロンが倒産する事態はあまりないとは思いますが、友人の会社が倒産することはあるので、耳学問として、また、友人にお金を貸す際に参考にされるとよいと思います。

法人破産をするときはどんなことがポイントになる?
倒産は法律用語ではなく、法的には「破産」と呼ばれます。
破産をするタイミングは弁護士に相談して綿密に打ち合わせをすることが必要です。
弁護士として興味がある点は
・債権者がどのくらいいるのか、債務がいくらあるのか
・代表者が保証人になっているかどうか(一緒に破産することが多いです)
・不動産を所有しているかどうか(サロンは借りていても代表者が不動産を所有している等)
・売掛金はあるのか(電子決済を利用している場合は売上が入るタイミングがズレるため)
・処分しなければならない動産(物品)がどれくらいあるか(シャンプー台や椅子の処分等)
・任意整理、再生手続や事業譲渡をすることで切り抜けることができないか
などです。
従業員の解雇もしなければなりませんので、できる限り迷惑を掛けないようにしたいところです。

受任通知の威力!?
弁護士に依頼した場合、何より大事なのは「受任通知」です。
「この件は弁護士がついたので、連絡はすべて弁護士にしてください」というお知らせです。
弁護士が債権者に受任通知を送ると本人に対する取立ては止まることになります。
今後、すべての連絡が弁護士を通してされることになります。
取立ての連絡は経営者自身に大きなストレスになるものですが、取立てがピタリと止まるので、実務上はこれが一番重要です。
経営者の方はこの間に体制を整え、裁判所に手続きをするための費用を工面したり、資料の準備を進めたりします。

