2024年8月に1000店舗を達成したAgu.グループ。所属するスタイリストは4300名に上る。
業務委託サロンで初の上場を果たし、スピーディーな出店を続けているAB&Companyの市瀬一浩社長にお話をうかがった。
フランチャイズオーナーになるチャンスを
── 1000店舗達成おめでとうございます!1000店舗達成したときのお気持ちは?
ようやく達成できた、という安堵です。あとは41人のフランチャイズオーナーに感謝の一心ですね。
── 全員美容師出身とのことですが、どうしたら41人ものフランチャイズオーナーが育つのでしょう?
特段、難しいことをしてきたつもりはありません。企業理念にあるようにスタイリストファーストの精神で、この業界で成功するために、ないしは業界に貢献するためにはどうしたらいいか、業界を変えていきたいという想いなどを11年間コツコツ伝えていった結果、41人につながったんじゃないかと思っています。
── フランチャイズオーナーはそれぞれ何店舗くらい経営しているのですか?
今年オーナーになったばかりの方もいますから少ない方は1店舗。11年前にフランチャイズオーナーになった方は、今や100店舗強になっています。10年で100倍ですね。
── 皆さん、美容歴何年くらいでフランチャイズオーナーになっているのですか?
短い方はうちの在籍年数6年です。5、6年でフランチャイズオーナーになれるチャンスがある、という意味では、チャンスを作るのが得意な会社だと思っていますし、チャンスを活かしてくれるのはありがたいと感じています。
── 今後も美容師さんから?
現段階では、美容師さんから42人目、43人目と担っていただきたいと思っています。
女性スタイリストが活躍しやすい環境を作る
── ふだんはパワフルに休みなく働いている美容師さんを取材することが多いのですが、Agu.グループの“ママ美容師”を取材させていただいた際は「あまり無理して働かず、気兼ねなく休みたい」と話されていて、それもとても大切なことだと思いました。
働きやすい環境作りに力を入れているので、スタイリストの半分以上が女性です。そのうちの半分近くが、お母さん。出産や育児で美容師をやめた方が復帰できる場にしたいと思っています。
「子どもを迎えに行くために帰らなきゃいけないけれど、職場の状況で帰れない」というのは、今も、これからの時代にも合わないので、フレキシブルな働き方を推奨していきたい。女性が活躍していかないといけないと思っています。
── 多店舗展開でネックになるのが採用です。スタイリストファーストによる働きやすい環境がスムーズな採用につながっている印象です。
若干課題はありますが、他社に比べると復職などもスムーズかなと思っています。この働き方をもっと広げていけば、働き手のファンも集まってくるだろうと信じています。
── 出店スピードが速いですから資金も必要ですよね、現在ファンドとの関係は?
上場準備のためにファンドに協力していただきましたが、2021年の頭にはファンドは手を引いていたんです。その年の11月に上場して、現在はファンドの資本は全くのゼロ。自己資金と金融機関からの借り入れでまかなっています。
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業務委託サロンで初の上場を果たす
── 「業務委託サロンは上場できない」と言われていたのを御社が打ち破ったわけですが、上場してよかったことやご苦労は?
役員人事とか人事周りが非常に難しかったですね。今も難しいんですが、上場直後は一番難しかった。
グループや会社が向かうべき中長期の事業戦略、ゴールに向かっての会話ができない。上場するまでは「上場」という目標に向かって、熱量をもって業務をこなしてくれていたんですが、目標が達成されてしまうと、モチベーションが変わってくる人達もいる。僕は創業者ですし、これから先もやっていかなきゃいけない立場は変わらないので、熱量は変わらないのですが、そこの違いが難しかったです。
── 株価への声は出ますよね。すぐに結果を求める株主もいますし。
それはありますね。上場するということは、ステークホルダーがとても多くなるということなので。
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多種多様な選択肢から、自分で選び経験してほしい
── 市瀬社長の思い描くゴールは?
スタイリストとその先にいるお客さまに、幸せを提供し続けるグループであり続けたいと思います。店舗数は今後も増やしていきたい。上限は決めていません。海外に1000店舗も変わらず目指しています。
── 以前のインタビューで、アジアよりもアメリカに出店したいとおっしゃっていましたね。
アメリカに出店というのは、上場前から変わらない目標です。2020年、ニューヨークのマンハッタンに「A GRAND UNION」をオープンしました。
── 日本の美容室が勝ちやすいのはアジアというイメージがありますが、なぜアメリカなのでしょう?
夢があるから。アメリカンドリームってあるじゃないですか。日本の美容師がアメリカでも成功できる!という成功した背中を見せたい。スタイリストさんたちが多種多様な美容師人生を選択できる環境にしたいんです。
── 選択肢と言えば、社内でシャンプーの開発などもされていますね。
「美容師はハサミを持ち続けるのが正義だ」という考え方、これも正しい。でも、私自身、美容師で始めて今は経営者をしていますが、運営に携わりながら違う業務をしたり、商品開発に参加したり、そういうのも美容師のキャリアパスです。長い人生でいろんなことを自分で選択しながら経験していくのも、幸せなんじゃないかなって思います。
── 国内1000店舗、スタイリスト4300名。まさに一大グループですね。
スタイリストゼロ、お客さまゼロからスタートして15年目を迎えました。いま当たり前に思えることも全然当たり前じゃない。美容業界の未来のためにも、また初心にかえりイチからがんばっていきます。
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