業務改善にあたり日々のルーティンを「これって本当に必要なこと?」と見直す姿勢が大切だ。「前からこうだったから」を見直して成果を上げた、デミ コスメティクスの龍村和久プレジデントに聞いた。
IT企業の役員から、一介の営業担当者に
2004年、低迷が続いていたデミの建て直しを期待され、日本オラクルから日華化学に転職した龍村和久さん。プレジデント就任前の数カ月間、デミの営業(サブリーダー)を担当していた。まったくの門外漢からスタートするにあたって、現場を知ることが第一と考えたのだ。
最初は「営業として表に出してくれ」ってお願いして、一介の営業から始めました。配属されたのが大阪支店でディーラーを担当して臨店もやっていました。
実際に現場に出た龍村さんは驚いた。全てにおいて効率化と採算性が優先されてきた大手IT企業のとは大きな差があったのだ。
最初は年下の先輩の臨店に同行して「ああこうやってやるんだ」と勉強しました。臨店して驚いたのは効率の悪さでした。
臨店が終わり、龍村さんは帰りの車の中で、年下の先輩社員とこんな会話をしたという。
「今回のパーマの臨店、導入されると、月いくらになるの?」
「三、四千円くらいかな」
「(そんなに安いのか)じゃあ、パーマって1回入ったら10年20年使ってくれるものなの?」
「いや、下手したら3カ月で変わっちゃう」
「えっ、それじゃあ、商売にならないのでは?」
「いや、そんな観点で仕事はしたことがなかった。前からこうだった、先輩に教えられた通りやっている」
その採算度外視の姿勢に龍村さんは驚いた。しかしもっと衝撃を受けたのは、先輩社員の「そんな観点で仕事をしたことがない」という言葉だった。龍村さんは大きな改革を決意した。
逆指名で狙い通りV字回復
営業で大切なのは「目先の売り上げを上げること」ではない。いかに会社の利益につなげるかだ。経営陣に回った龍村さんは営業推進部を作り、型破りの営業スタイルで効果を上げた。
ノミネート制を取りました。営業推進部が「このサロンに入ったら、デミも市民権を得るだろう」という、各地の有名サロンを選んで、直接営業をかけました。それで『トリクルダウン』が起きるのを狙ったわけです。
トリクルダウンとはしたたり落ちるように広がること。どのサロンに営業をかけるか、メーカーが逆指名する形である。有名サロンに採用してもらうだけでなく「あのサロンが使っているならウチも使おう」と他のサロンに「したたり落ちるように広がる」だろうと想定しての営業戦略だった。これが当たった。
この営業改革により、デミの業績は、1年でV字回復した。
取材/大徳明子 文/曽田照子 撮影/横山翔平
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