女性の手で女性のためのサロンをつくりたい。その思いで東京を離れて栃木・宇都宮に店を開いたというドゥコーポレーションの阿部弘枝社長。
「未来を創る 女性リーダーによる成長戦略」をテーマに行われた一般社団法人プログレス(全国美容経営協会)の美容経営シンポジウムに登壇し、美容師のキャリア形成について語った。
創業33年、一人ひとり武器をつくる
2024年7月2日に東京・台場のグランドニッコーで開催された美容経営シンポジウム。全国各地から集った800名の美容室経営者らの前で、地方で複数店舗を展開する4名の女性社長が自身の経営論を語った。
都内で2サロンで働いた後、宇都宮で独立した阿部社長。創業から33年経つ今も、現役美容師として店頭に立つ。
スタッフ数は3店舗あわせて15名。「男性は息子2人を入れて3人。女性が12人です」。ドゥコーポレーションは女性が8割を占める企業だ。
「価格競争に巻きこまれない価値づくり、一人ひとりが武器をつくるということを考えて、みんなで勉強しています。全員が(ミルボンの)ビューティーソムリエの資格を取れるように目指していて、施術と同様に店販にも力を入れて生産性を上げるよう努めています」
生き生きと仕事を楽しむ人を応援したい
1つ目のテーマである「男性経営者と女性経営者の目線の違い」について、阿部社長は「自身の経験を重ねて女性ならではの苦労に配慮している」と話した。
「女性は体調が不安定なときがあったりする。さらに子供を宿すと、そこから体がどんどん変化していく。私も出産と子育てを経験しているので、大変な状況でも生き生きと仕事をしている女性スタッフを見ると応援したくなる」
パネルディスカッションのファシリテーターを務めるアルテ ジェネシスの吉原直樹会長CEOは「女性はお金よりも共感を求める。その組織にいること自体にも共感を得ていて、そういうのをすごく大事にする。(美容経営シンポジウム前半の講演であった)女性が共感を重視するという話」とこれを受けた。
若い幹部の誕生を目指したい
2つ目のテーマは「時代の変化で感じる仕事における性差」。
ドゥコーポレーションは今年4月、久しぶりに女性店長が誕生した。「彼女は店長に向いた性格ではないかもしれない。でも、周りの仲間と励ましあって5年の間、店を引っ張ってくれた点を評価して店長に決めた」。
旧来の男性店長に多いリーダーシップ型である必要はない。「彼女のような存在が今いるアシスタントの励みになり、店長まで育ってくれれば。ぜひ若いうちに幹部になってほしい」と願っている。
経営者の寄り添いが女性の社会進出につながる
3つ目のテーマは「次世代の女性に向けたメッセージ」。
阿部社長は「20代前半、後半、30代とそれぞれ年代別の悩みがあって、悩みは尽きないもの。キャリアに悩むスタッフがいるとき、私たち経営者が一緒に考えてあげることで、別の道が開けるかもしれない」と話した。
そのうえで「美容師のキャリアプランには、ハサミを持つ以外の選択肢もある。この会場にいる皆さんでバックアップして、女性が活躍できる美容業界をつくっていきたい」と締めくくった。
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取材・文/大徳明子 撮影/布施景