弁護士の松本隆さんによる連載『ヘアサロン六法』。第11回は「有給休暇」についてです。
美容専門学校で美容師法の講義を担当している松本さんが、軽妙なトークとイラストでとことんわかりやすく解説します!
目次
「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく!」
こんにちは!弁護士の松本隆です。
第11回は「取ろう、取らせよう!有給休暇」です。
“ヘアサロン経営者向けにわかりやすく”をモットーに、あえて内容をシンプルにしてお送りします。
どうしたら有給休暇がもらえるの?
お給料をもらって休めるのが有給休暇。
せっかくもらえるならしっかり休んでリフレッシュしたいですね!
前回に引き続き、有給休暇も「労働基準法」に書いてあるので、見てみましょう。
労働基準法39条(年次有給休暇)
1 使用者は、その雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。
有給休暇がもらえる条件は、
①雇われた日から6か月継続して働いたこと
②8割以上出勤したこと
です。
①②を満たせば「10日間」の有給休暇がもらえます。
働く年数が長くなれば有給休暇も増える!
しかも、働く期間が長くなると、有給休暇は少しずつ増えていき、最終的には「20日」になります。
労働基準法39条2項に規定されていますが、表にすると以下のとおりです。
そして、2019年4月からは「有給休暇が10日以上」与えられる人には、会社は「必ず5日以上は取得させる義務」を負います。
つまり、「フルタイムの人には必ず年に5日の有給休暇を使わせなきゃいけない」ということです。
パートさんの有給休暇は少なめ
パートさんは働く日数が少ないので、有給休暇も少なくなります。
週1~4日勤務で、週の所定労働時間が30時間未満の場合を指します。勤務日数ごとに1つ1つ見ていきましょう。
まずは週1回勤務の場合です。
有給休暇は「最大3日」なのでとても少ないですね。
また、確実に取らせる義務もありません。
次に、週2回勤務の場合です。
有給休暇は「最大7日」ですが、まだ10日より少ないため、確実に取らせる義務はありません。
週3回勤務の場合はどうでしょうか。
有給休暇は「最大11日」です。
「5年6か月以上継続している方」には年5日の有給休暇を確実に取らせる義務があります。
週4回勤務の場合はさらに増えます。
有給休暇は「最大15日」です。
「3年6か月以上継続している方」には年5日の有給休暇を確実に取らせる義務があります。
「パートだから有給休暇は取らなくていいでしょ」なんて考えはもう通用しませんので、お気をつけ下さい。
特に、「有給休暇が10日以上ある労働者に年5日取らせなかった場合」には、労働基準法120条で「30万円以下の罰金」を科せられてしまうので、要注意です。
週3、4日勤務するパートさんを雇っている場合は、早速勤務年数を確認してみて下さいね!
時間単位で取れる有給休暇で働きやすさアップ!
知っている方は少ないのですが、実は、有給休暇を時間単位で取れるようにすることができます。
一見、経営者にとってメリットがないように感じますが、時間単位の有給休暇があると、
・病院の通院やイベントに行きやすくなる
(「早退」扱いにならずに早めに退勤できる)
・従業員が子どもの行事に参加しやすくなる
(「遅刻」扱いにならずに午前中の学校行事に出てから出勤ができる)
などといった従業員のメリットが大きいため、「離職率が下がる」という効果が期待できます。
時間単位で有給休暇を取れるようにするための条件は、
①就業規則で定めること
②労使協定を締結すること
経営者の方へ
2019年の改正によって、もはや「有給休暇は絵に描いた餅」とは言えない時代になりました。
有給休暇をきちんと取らせることで、従業員の忠誠心もアップしますので、ぜひぜひ見直してみてください。
それではまた!
松本 隆
弁護士/横浜二幸法律事務所・パートナー
早稲田大学法学部、慶応義塾大学法科大学院卒業。2012年弁護士登録(神奈川県弁護士会)。企業に寄り添う弁護士として労働問題を多く扱っており、交通事故や相続にも精通している。また、美容師養成専門学校において「美容師法」の講義を担当しており、美容業界にも身を置いている。社交ダンスの経験も豊富であり、メイクやヘアスタイルにも詳しい。2021年にはメンズ美容のモニターとして100日間チャレンジを行うなど、メンズ美容の重要性も説いている。「髪も肌もボディもケアさえちゃんとすればアンチエイジングは必ずできる」というのがモットー。
横浜二幸法律事務所
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▽TEL=045-651-5115
監修・執筆・イラスト/松本隆(弁護士) 編集/大徳明子 撮影/幡司誠