少子化対策のために新たに国民から徴収する「子育て支援金」。
一方で政府はこの支援金について「実質負担はない」と説明しています。一体どういうことなのか?
今回の「週刊タイパニュース」では、前回に続いてさらに子育て支援金について深掘りしていきます。
子育て支援金を集めるのに負担ゼロ?
こんにちは!ジャーナリストでVTuberとしても活動している宮原健太です。
前回、「異次元の少子化対策」のために「子育て支援金」を国民から集めるという法案が国会で議論されていることを紹介しました。
年収600万円だと2028年度の徴収額は月々1000円ほどになると試算されています。
一方で、政府はこの子育て支援金について「実質負担はない」と説明しています。 どういうことなのでしょうか。
歳出改革で保険料負担を抑える
政府が「実質負担はない」と説明する理由の1つは歳出改革です。
歳出改革というのは、私たちの家計でいうところの「節約」の国バージョンですね。
政府は医療や介護などにかかるお金を節約することによって、これまで国民から徴収してきた社会保険料の負担増をなるべく抑えていくとしています。
つまり、少子高齢化によって増えていく負担をがんばって抑える分、少子化対策のために使うお金を徴収するので、全体では負担は増えないというのです。
かわりに高齢者の窓口負担引き上げも
しかし、少子高齢化が現在進行形で進んでいる中で医療や介護のお金を抑えることは容易ではありません。
実際に、この歳出改革の中には高齢者の医療費の窓口負担を引き上げることなども含まれているため、全体で見れば結局国民の負担は増えているということになります。
また、子育て支援金による負担増は、社会保険料の負担抑制だけでまかなえるものではありません。
そのため、政府は「負担ゼロ」と言うために、もう1つの理屈をひねり出しています。
賃上げするから負担は増えない?
それが、賃上げが行われるため社会保障の負担率は変わらないという説明です。
現在、世界的な物価高が起きている中、日本でも大手企業を中心に賃金が上昇しています。
実際に労働組合の連合が4月18日に発表した春闘の4次集計では賃上げ率が平均で5.20%になったと発表されました。
国民の賃金が増えているため、子育て支援金で負担が増えても負担率は変わらない、そういう意味で「実質負担はない」と政府は説明しているわけです。
しかし、賃金が増えている一方で物価高も起きているため、昨年の実質賃金はマイナスとなるなど、国民の苦しい経済状況はまだまだ続いています。
その中で「賃上げで国民の所得が増えているから、新しく子育て支援金を徴収しても負担ゼロ」と説明されても納得できる人は少ないのではないでしょうか。
確かに人口減少が続く日本では、少子化対策は真っ先に取り組むべき重要な課題です。
だからこそ、「負担ゼロ」と言ってごまかすのではなく、新たな支援金を国民に負担してもらうことを、政府はもっと真摯に説明すべきなのではないかと思います。
次回は、また別のテーマについて解説します。
ぜひ、お楽しみに!
宮原 健太
ジャーナリスト、YouTuber
1992年生まれ。2015年に東京大学文学部を卒業し、毎日新聞社に入社。宮崎、福岡でさまざまな事件、事故、災害現場の報道に携わった後、東京政治部で官邸や国会、政党や省庁などを取材。自民党の安倍晋三首相や立憲民主党の枝野幸男代表の番記者などを務めた。2023年に独立してフリーで活動を開始。文春や集英社、PRESIDENT Onlineや現代ビジネスなど様々な媒体に記事を寄稿している。YouTubeチャンネル「記者VTuberブンヤ新太」ではバーチャルYouTuberとしても活動しており、日々のニュースを分かりやすく解説している。
▽YouTube=https://www.youtube.com/@bunyaarata
▽X=https://twitter.com/bunyaarata
▽note=https://note.com/bunyaarata
■ あわせて読みたい
編集/大徳明子 文・図表/宮原健太(ジャーナリスト)