2023年10月より施行された、インボイス制度(適格請求書等保存方式)。
業務委託サロンを展開するヘッドライトでは、所属する美容師の不利益にならないよう、免税事業者には従来通り税込金額を払い、課税事業者には通常報酬に5%上乗せしている。こうした対応が功を奏し、採用難の業界において所属美容師が順調に増えているという。
免税事業者にこれまで通り「税込金額」の報酬、課税事業者には「5%上乗せ」
「Ursus hair Design(アーサスヘアデザイン)」や「soen(ソーエン)」を展開するヘッドライトは、年商50億円の大手業務委託サロンだ。全国に約160店舗を展開し、所属美容師は850名に上る。
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2023年11月14日、ヘッドライトは所属美容師を1つ星、2つ星、3つ星の3段階の星印で表彰する社内コンテスト「スタイリスタ」を開催し、この場で改めてインボイス制度への対応についても説明を行った。
免税事業者の所属美容師に対しては、インボイス制度開始後も従来通り「税込金額」で支払い、報酬率も変わらない。課税事業者の所属美容師には、簡易課税方式をとった場合の消費税納税率5%相当にあわせ、「通常報酬に5%上乗せ」して支払っている。
インボイス制度の開始により、個人事業主の美容師は、免税事業者になるか課税事業者になるか選択を迫られている。同社では特別な事情がない限り、免税事業者を選んでもらっているという。
業務委託サロン各社のインボイス対応
同社の説明によると、業務委託サロンは、課税事業者への切り替えが必須なパターンと、免税事業者のままでOKというパターンに分かれた。
課税事業者への切り替えが必須なパターンでは、美容師の報酬に変更なし、または報酬アップで対応する場合がある。
一方で免税事業者のままでOKな場合は、会社側が負担増を許容するパターンと免税事業者に対する仕入税額控除の経過措置の観点から、報酬を2%下げる方針をとるパターンも生じている。
採用活動が好調、10エリアに新規出店
免税事業者の美容師と契約すると、仕入税額控除ができないため美容室側の負担が大きくなってしまう。一方で、美容師が課税事業者になることを選択すると納税の義務が生まれ、そのぶん収入が減るというジレンマがある。
ヘッドライトの掲げるミッションは「美容師の力で社会を明るくする」こと。その実現には、美容師の待遇を守ることが欠かせない。
「報酬を減額したり、すべての美容師に必ず課税事業者に切り替えてくださいとアナウンスしたりするライバル業者もある中、大盤振る舞いな対応だと自負している」(舟橋秀臣営業本部長)
また、髙橋健介社長は「この方針を示したこともあり、ヘッドライトで働きたいという美容師さんが増えています。売り上げ面では損なのですが、取り組みとしてはうまくいっています」と語り、「美容師ファースト」を貫く姿勢を示した。
ヒトが資産であり、美容師を採用できなければ店舗を増やせないのが美容室。採用難が慢性化している業界だが、ヘッドライトは順調に所属美容師が増えているという。9月にスタートした16期は、全国10エリアへの新規出店が決定している。
\ セミナー情報 /
ヘッドライト高橋健介社長の経営セミナーが来年1月、東京ビッグサイトで開催されます!インボイス制度下でも躍進する「美容師ファースト経営」について語ります。
■ 日時
2024年1月18日(木)10~11時
■ 場所
東京ビッグサイト「ヘアケアEXPO」特設ステージ
■ 料金
無料
※「ヘアケアEXPO」の入場料は「来場登録(無料)」および「セミナー申し込み(無料)」が必要です
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編集・取材・文・撮影/大徳明子、青木麻実 文/岡本茉衣