日本ヘアデザイン協会(NHDK)は2023年1月31日、渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールでニューヘアモード発表会と東京ショーを開催した。
2023年のニューヘアモード「ViVO(ヴィーヴォ)」や、協会員による多彩なパフォーマンスが披露された。
フルキャパシティで600人動員
昨年はコロナ禍のため、半年延期した末、人数を半分に制限しての開催となったが、今年はほぼフルキャパシティとなる約600人を動員。コロナ禍前に近い形で、盛大にショーが行われた。
冒頭、横田敏一理事長は「日本ヘアデザイン協会は、3年後に70年目を迎える歴史ある団体。この3年間は動画配信で情報を提供したり、いろいろとやってきたが、やはり実際に見て、感じて、自分のものにすることが大切。今日は短い時間ですが、大いに楽しんでほしい」とあいさつした。
キーワードは「Y2K」や「サステナブル」「ノンバイナリー」
この日は「ニューヘアモード発表会」と「東京ショー」の2部構成。前半の「ニューヘアモード発表会」では、毎年NHDKが創作するトレンド「ニューヘアモード」が発表された。
今年のニューヘアモードは、「ViVO(ヴィーヴォ)」。
ヴィーヴォとは、ラテン語で「生きる」という意味。イタリアでは手紙文の中で「心から(感謝を込めて)」という意味合いでも使われる。
はじめに、ニューヘアモード創作設定プロジェクト委員長の計良宏文氏がテーマを解説。
ウクライナ情勢や長引く新型コロナの影響などによって、先行きの見えない不安な日々を過ごす中、「自分自身の居場所を見つけて、たくましく力強く生きていってほしいという思いを込めて創作した」と背景を語った。
また、古き良きものをアップサイクルしていくクレバーな生き方をヘアスタイルやファッションで表現。「デニムやシースルーといった2000年頃に流行した“Y2K”ファッションに着目しながら、今の時代ならではのサステナブルやノンバイナリーといったメッセージも込めた」と話した。
ワイドなラウンドバングのウルフスタイル
その後は、創作設定プロジェクト副委員長の石渡智花氏と松木宏紀氏によって、2つのバリエーションの技術解説が行われた。
ともにバングのあるウルフスタイルをベースに、ネープにはライン感や重さを残しつつレザーカットとパーマで束感を出した無造作で遊びのあるスタイルとなっている。
松木宏紀氏は、マッシュウルフベースに、カーキベージュのカラーとネープのイエローが印象的なスタイルを解説。「ワイドなラウンドダブルバングがポイント」と語った。
カットポイント
マッシュウルフベースでワイドなラウンドダブルバングがポイント。サイドセクションは耳後ろにパネルを引き出しもみあげを少し長めに。ネープはブラントで重みを残し、レザーで無造作感を加える。トップはラウンドでカットし、丸みを感じさせ遊びのある仕上がりに。
カラーポイント
ベースは8トーンのカーキベージュ。トップにはハイライト、ハチ下からエアタッチを施しトーンアップ、襟足のみ塩基性のネオンイエローを重ねる。
パーマポイント
トップ、襟足は根元2回転のツイストスパイラル。フロントはピンパーマ。サイドは根元1回転のツイストピンパーマを施す。
スタイリングポイント
ハーフウェットの状態でトリートメントムースを馴染ませ、スタイラーで乾かしてから、毛先にはバームとオイルを混ぜ、ややツヤのある束感を与えて仕上げる。
石渡智花氏は、ジェンダーレスな印象のウルフスタイルを説明。「男性も女性も楽しめるスタイルが非常に大事になってくる。デザインポイントはラウンドバングを耳前まで深く設定した」と特徴を述べた。
カラーポイント
ネープともみあげの部分はダークトーンで重さを出し、ミドルセクションのみ得たい束感でトーンアップ。全体的に9-10トーンのスモーキーアッシュで馴染ませる。
パーマスタイル
ネープ、もみあげはハーフカールの逆巻きで外跳ねに。バングは大きなループのピンカール。トップは立ち上がりをつけるために前後に向けて平巻きし、その他の部分は毛先を逃がした中間巻きでルーズな質感のパーマを施す。
スタイリングポイント
アウトバストリートメントを十分に塗布し、手の中に毛束を包み込みドライヤーの熱を溜めるようなイメージでウェーブを再現。オイル系のヘアエマルジョンで全体の毛束感を整えて仕上げる。
メイクアップ
ファンデーションは極力薄めに肌の赤みのみカバーし、ルースパウダーをブラシで重ね、素肌っぽい透明感を残しつつ、ややハーフマットな肌に仕上げる。
ローズピンクのアイカラーを上まぶた全体と、下まぶたの涙袋の範囲まで広めにぼかす。パープルのアイラインペンシルで、まつ毛の生え際を埋めるように描き、ブラシでソフトになじませる。マスカラを上下に塗布し目元を強調。
チークは骨格を意識して、やや陰影を感じる程度にぼかす。リップはクリアのリップトリートメントでナチュラルに。
サロンで使えるバリエーションも
さらにその後は、創作設定プロジェクト委員の篠谷信寛氏、調秀明氏、中川泰貴氏、原口裕匡氏、土居一生氏、モード委員の黒木大介氏、寺井誠氏、別所宣彦氏によって、サロンで使いやすいバリエーションが披露された。
最後は、創作設定プロジェクトのメンバー全員がステージに立ち、拍手喝さいでニューヘアモード発表会は幕を閉じた。
東京ショーも華々しく
後半の東京ショーは、「Regain+(リゲインプラス)」がテーマ。
多彩な4ステージがくり広げられた。
取材・撮影・編集/杉野碧 文/比嘉廣樹