【ヘアサロン六法】3.パワハラ防止法(後編) -美容室経営者の法律相談

特集・インタビュー

②会社(美容室)の対応

さて、パワハラ防止法が施行された今、美容室の経営者は何を知っておかなければならないのか、一緒に勉強をしていきましょう。

1)パワハラの相談をしたことを理由に不利益に扱ったらダメ!

まず大事なのはこれです。

経営者の方によく覚えておいてほしいところです。

では、条文を見てみましょう。 ※「法」はパワハラ防止法のことをいいます

法第30条の2(雇用管理上の措置等)

2 事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

これは、わかりやすくいうと・・・

労働者が

・被害者としてパワハラの相談をしたり

・目撃者としてパワハラ調査に協力したりしても

会社は、労働者に

不利益な取扱い(解雇、減給、配置転換など)をしちゃダメ!!

という意味です。

パワハラ防止法(後編)の解説・注意点(「ヘアサロン六法」美容室経営者の法律相談)

2)パワハラ防止のための研修を実施しないとダメ!

令和4年4月から、中小企業もパワハラの研修をしなければならなくなりました。

これは法律上の義務ですが、準備はできていらっしゃいますか?

現状、パワハラ防止法を知っている経営者の方は非常に少ないので、「準備できてないよ!」という方は結構いらっしゃると思います。

では、研修についての条文を見てみましょう。

法第30条の3(国、事業主及び労働者の責務)

2 事業主は、優越的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。

これも、わかりやすくいうと・・・

会社は

・労働者にパワハラのことを理解させてね!

・労働者がパワハラしないように気をつけるために「研修」をやってね!

ということです。

なお、弁護士にハラスメント研修を依頼する会社もあります。

(え? さりげなく弁護士を活用するように宣伝してるでしょって? ちっ違います!!)

パワハラ防止法(後編)の解説・注意点(「ヘアサロン六法」美容室経営者の法律相談)

3)その他に会社がやらなければならないこと

■ 方針の明確化と周知

ハラスメント防止のための会社内の「方針」を決めて労働者に周知しましょう。

他のハラスメントも含めて「職場におけるハラスメント防止に関する規定」を作るのがよいでしょう。

厚生労働省が規定の例を作ってくれていますので、こちらを参考にするといいです。

厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部作成「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」
(34ページ「-職場におけるハラスメント防止に関する規定-」を参照)

■ 相談体制の整備

パワハラ等のハラスメント相談に対応できる「相談窓口」を作りましょう。

パワハラ以外のセクハラ、マタハラ等のすべてのハラスメントを1つの相談窓口で相談できるようにするのが望ましいです。

その際、窓口担当者が適切に対応できるように研修をしましょう。

例えば、「実際にハラスメントが起きた場合じゃないと対応しません」という対応はダメで、「これからハラスメントが起きそう」という場合でもきちんと相談に乗る必要があります。

相談マニュアルの作成も重要です。

理想としては、「社内の相談窓口」だけでなく、「外部の相談窓口」とどちらもあることが望ましいです。

なお、法律事務所にハラスメント相談窓口を依頼する会社もあります。

(え? やっぱり弁護士を活用するように宣伝してるでしょって? …当たってます!)

パワハラ防止法(後編)の解説・注意点(「ヘアサロン六法」美容室経営者の法律相談)

■ 事後の対応

ハラスメントがあったことを把握したら、事実関係を迅速かつ正確に調査しましょう。

相談があったのに半年間放置していた、なんてことがあったらいけません。

そして、ハラスメントを受けた被害者の方のケア体制を整備しましょう。

具体的には、

・加害者と被害者の関係改善の援助

・引き離しのための配置転換

・加害者の謝罪

・労働条件上の不利益の回復

・メンタルヘルス不調への相談対応

等の措置を講ずる必要があります。

必要に応じて、加害者に対する措置を適正に行いましょう。

ハラスメントがあったと認められる場合には、加害者には懲戒その他の措置を講ずることになります。

また、再発防止策を構築して労働者に周知することも重要です。

具体的には

・HP等でハラスメントについて改めて掲載し、社内にもハラスメントの資料を配付する

・労働者に対してハラスメントに関する研修を改めて実施する

のがよいでしょう。

■ プライバシー保護

被害者の方はもちろんですが、加害者とされている方についても、プライバシーを保護することが重要です。

冤罪(やっていない)かもしれませんし、言い分があるかもしれませんので、調査は慎重に行いましょう。

また、当事者のプライバシーが保護されるということを、従業員に周知して理解できるようにしておくことも重要です。

パワハラ防止法(後編)の解説・注意点(「ヘアサロン六法」美容室経営者の法律相談)

おわりに

今回はパワハラ防止法という法律が施行されたことを受け、パワーハラスメントを取り上げました。

すべてに触れることは難しいですが、全体としてどんな感じが伝わったらいいなぁと思っています。

他にもセクハラ(セクシャルハラスメント)やマタハラ(マタニティハラスメント)などがありますが、またの機会に取り上げたいと思います。

読んでくださり、ありがとうございました!

松本隆弁護士( 横浜二幸法律事務所)

松本 隆

弁護士/横浜二幸法律事務所・パートナー

MATSUMOTO TAKASHI/早稲田大学法学部、慶応義塾大学法科大学院卒業。2012年弁護士登録(神奈川県弁護士会)。企業に寄り添う弁護士として労働問題を多く扱っており、交通事故や相続にも精通している。美容専門学校では「美容師法」の講義を担当。2021年よりデジタルハリウッド大学でも教鞭をとっており、青山学院大学法学部の講義(現代弁護士論)にも毎年ゲストにて登壇している。大学から社交ダンスを続けており、メイクやヘアスタイルにも詳しい。2021年はメンズ美容のモニターとして100日間チャレンジを行うなど、メンズ美容の重要性も説いている。「髪も肌もボディもエイジングケアは必ずできる」というのがモットー。

横浜二幸法律事務所
→ 公式サイト:http://y-niko.jp/
→ TEL:045-651-5115

監修・執筆・イラスト/松本隆(弁護士) 編集/大徳明子 撮影/幡司誠

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