日本の美容を世界へ! 「外国人美容師育成事業」都内でスタート

経営・業界動向
日本の美容を世界へ! 「外国人美容師育成事業」都内でスタート

外国人美容師育成事業が、いよいよ2022年10月1日から東京都でスタートする。

国家戦略特区を活用し、外国人美容師の在留資格を最大5年間認める、全国で初めての制度。

日本式の美容を世界に広げるための取り組みに注目が集まる。

外国人美容師の日本での就労が可能に

これまで、外国人留学生は美容師免許を取得しても、日本で美容師として働くことができないという課題があった。就労に関する在留資格は、技術・人文知識・国際業務、医療、介護興行、企業内転勤、経営管理、教育などで、美容師を特定した在留資格はなかった。

しかし、外国人美容師育成事業により、「特定美容活動」として美容師の業務に従事するための在留資格が認められるようになる。

日本式の美容を世界へ発信する担い手

内閣府および法務省、厚生労働省は2021年7月30日付で「国家戦略特別区域外国人美容師育成事業実施要領」を発表しており、その概要が明らかになった。

外国人美容師育成事業は、「日本式の美容に関する技術や文化を世界へ発信する担い手を育成する」ことを目的とする事業。恒久的な労働力の確保ではなく、日本で身につけた技能を母国へ持ち帰り広めてもらうことを目指しているため、外国人美容師の就労期間(特定美容活動の従事期間)は「通算5年以内」とされている。

2021年11月の特区諮問会議で、全国で初めて東京都の特例活用が認定された。2022年8月10日には、一般社団法人外国人美容師監理実施機関が本事業の監理実施機関に決定された。

理事長は、東京美容生活衛生同業組合(BA東京)の理事長で、全日本美容業生活衛生同業組合連合会(全美連)副理事長の金内光信氏が務める。

外国人美容師監理実施機関の金内光信理事長
外国人美容師監理実施機関の理事長は、BA東京理事長の金内光信氏が務める

「人手不足解消のためではない」

外国人美容師監理実施機関は、今年3月と5月に「育成機関」として外国人美容師の雇用を希望するサロン向けに、説明会を実施した。

5月19日の説明会で金内理事長は、「ようやく今年度、事業がスタートすることになった。ただ、一つ間違ってほしくないのは、これは人手不足を解消するための事業ではないということ。日本の美容の文化を国に帰って広めてもらいたいということが目的だ」と念を押した。

その後、村橋哲矢事務局長が育成事業の内容や手続きを説明。特定社会保険労務士・行政書士の水島博巳氏から外国人雇用の基礎知識の解説もされた。

外国人美容師育成事業の説明会
育成事業について説明する村橋哲矢事務局長㊧。中央は金内理事長、右は水島博巳氏

「育成機関」サロンの条件

育成機関のおもな条件は以下のとおり。育成機関として認められると、1美容所あたり3人まで育成できる(ただし、育成計画は1人ずつ申請が必要)。

育成機関の条件

・外国人美容師が実践的な美容に関する知識や技能を習得するために育成計画を適切に実施できる、都内の美容所

・管理美容師を配置していること

・健全かつ安定的な経営状況であること

・労働や社会保険に関する法律の規定を遵守していること

など

外国人美容師の条件

また、外国人美容師本人のおもな条件は以下のとおり。

外国人美容師の条件

・美容師免許を取得または取得見込みであること

・日本語でコミュニケーションがとれること(日本語能力試験N2相当以上)

・満18歳以上であること

・日本式美容の技術・文化を世界へ発信する意思があること

など

シャンプーだけなどはNG

外国人美容師は育成計画に基づき、以下の業務を実施する。(1)~(8)は必須の技術知識、(9)~(18)は選択的な技術知識となっている。シャンプーだけなど、実践的な知識や技術を必要としない業務のみに従事させることは認められない。

(1) シャンプー

(2) カット

(3) トリートメント

(4) ブロー

(5) セット・アイロン

(6) カラー

(7) パーマ・縮毛矯正

(8) ヘッドスパ

(9) まつげエクステンション

(10) ネイル

(11) エステティック

(12) 着物着付け

(13) メイク

(14) 洋装ブライダル

(15) 出張美容

(16) 美容所の経営管理に関すること

(17) その他関係自治体が必要と認める業務

(18) その他付随業務

監理実施機関と連携し採用や育成進める

サロンは、外国人美容師監理実施機関と連携しながら、育成計画の申請や採用、実際の育成事業に取り組んでいくことになる。

外国人美容師の育成事業の制度概要
外国人美容師育成事業の制度概要(内閣府国家戦略特区ホームページより引用)※クリックで拡大

条件も多く気軽に申請できるものではないが、世界に「クールジャパン」を広げる一助となる本事業。金内理事長は、「日本の美容の文化を技術・接客も含めて指導していただいて、外国人の方が帰国した時に日本の美容を世界に広げていただきたい」とサロンの事業参加に期待を寄せた。

育成機関の申し込みや、詳細な条件は外国人美容師監理実施機関」公式サイトから確認できる。

「一般社団法人外国人美容師監理実施機関」公式サイト

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文/大徳明子、杉野碧

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