花王とアイスタイルが、化粧品選びを効率化する仕組みを共同開発する。
花王の持つ皮脂RNAモニタリング技術を応用し、それぞれの「RNA肌型」と、アイスタイルが運営する「@cosme(アットコスメ)」に投稿されたクチコミ評価とをかけ合わせることで、自分の肌に合う化粧品との出会いを創出する。
最大1万人規模での検証を行ない、2023年末までを目標にデータベースの構築を目指す。
花王独自の解析技術「皮脂RNAモニタリング」
共同事業では、両社の持つデータと研究知見を融合する。
花王は、2019年に皮脂の中にRNA(リボ核酸)が存在することを発見。あぶら取りフィルムで顔の皮脂を採取し、そこから皮脂RNAを抽出して網羅的に解析する独自の解析技術「皮脂RNAモニタリング」を開発した。
ここから得られる約数千種の皮脂RNAの情報から、似たRNA特徴を持つ肌をグルーピングしたのが「RNA肌型」だ。
RNAは、顔の形や体質など、人が生まれながらに持つ特徴を生み出すDNAの情報に基づき、酵素やホルモンなど体内でいろいろなはたらきをするタンパク質を生み出すもととなる分子。
DNAは、その人固有のものとして一生変化しないのに対し、RNAは、肝臓や皮膚などの組織ごとにプロファイルも合成される量も違い、またその時の体調や環境によって日々変化するという性質がある。
この皮脂RNAモニタリング技術を用いることで、一人ひとりの肌状態に合わせた美容の提案や、ヘルスケアへの応用などが期待できる。
1700万件以上のクチコミ情報活用
一方、アットコスメのクチコミ投稿を分析すると、同じ商品でも評価が極端に分かれることがある。その理由のひとつが、個人で異なる体や肌の特徴であると考えられる。
今回の取り組みでは、アットコスメに蓄積された1700万件以上のクチコミを活用し、RNA肌型と好まれる化粧品との関連性を探っていく。
まずは2022年春から、アットコスメ会員のうち承諾が得られた人の皮脂RNAの収集を開始する。得られた皮脂RNAからRNA肌型によってグルーピングし、実際に投稿された化粧品クチコミ評価とかけ合わせることで、選ばれる化粧品の傾向を解析していく。
最大1万人規模での検証を行ない、2023年末までを目標にデータベースの構築を目指す考えだ。
消費者と化粧品をロジカルにマッチング
自分の肌に合う化粧品を効率的に選択できるようになることで、顧客満足度の向上を図る。また、化粧品業界の課題でもある、需給バランスのアンマッチなどによる商品廃棄の削減も目指していく。
将来的には得られたデータベースを、利用者がより客観的な視点で化粧品を探すことができるようなサービス・商品開発に生かしていく予定。
花王の村上由泰常務執行役員は「お客さまの肌と化粧品をよりロジカルにマッチングする仕組みを創出したいという想いを持つ同志として、アイスタイルさまと共同で取り組みをスタートさせる運びとなりました。今後も花王は、お客さまに寄り添う美の提案と、社会への貢献をあわせて推進していきます」とコメント。
アイスタイルの吉松徹郎代表取締役社長兼CEOは「花王さまと共に取り組むことで、生活者と美容プロダクトとのより良い出会い方を提供し、業界の活性に貢献することを目指してまいります」としている。
文/大徳明子、杉野碧