「SDGs」や「サステナビリティ」。美容業界でもこれらのキーワードを目にすることが増えました。
2022年3月、b-exはサロン発のCO2排出量削減を目指す「グリーンプロジェクト」を発足。プロジェクトに賛同する「グリーンパートナーサロン」とともに、ゼロカーボンを目指しています。
中でも美容室「FILMS」は社内にCSR部を設けるほど、環境問題をはじめとする社会貢献活動に熱心に取り組んでいます。
プロジェクト発足発表会では、b-exのプロジェクトリーダー酒井麻里子氏が、FILMS代表取締役の若林紀元氏とCSR部リーダーの白井咲恵氏にサロンでの取り組みや活動の背景を聞きました。
人生の価値観が大きく変わった東日本大震災
酒井 FILMSがSDGsに取り組むきっかけはなんでしたか。
若林 そもそものきっかけになったのは、FILMSの前の会社にいた時に起きた東日本大震災です。僕たちも美容の力を通じて何かできることがあるのではないかという思いで、震災から1か月後、宮城県にある女川原発の避難所で、ボランティアカットをしました。
その時に、自分の中で人生の価値観がすごく変わりました。自分たちのためだけじゃなく、自分たちの力を使って、社会貢献できるのであれば、そういうことに積極的に取り組んでいきたいと思ったことが大きなきっかけになりました。
それから2017年にFILMSを立ち上げて、自分たちのできることは何なのか、まだまだ模索段階ですが、一歩ずつ少しずつ取り組んできました。
月に一度ヴィーガン弁当支給も
酒井 東京・千葉に4店舗を展開し、65名の社員がいるFILMSですが、若いスタッフを中心に、SDGsプロジェクトチームをつくって、企画実行しているそうですね。
白井 CSR部は10人のチームで活動しています。
とても若いチームで、発想が凄く豊富。実現可能か不可能か問わず、アイデアがすごくたくさん出てくるので、幅広い活動が出来ていると感じています。
酒井 現在どのような活動を行っているのですか。
白井 ボランティアカットや、ヘアドネーションを行っています。
また、月に一度ヴィーガン弁当を会社からスタッフに配給していて、皆でヴィーガン弁当を食べようという活動もしています。スタッフ全員が、マイバッグ、マイ箸を所持しています。
あとは、カラーチューブを車いすにリサイクルしてくれる会社に送ったり、古着を集めてワクチンに替える取り組みをしたり、店舗地域での清掃などを行っています。
環境問題は若い世代にとって大切な価値観に
酒井 活動を続ける中でサロンワークに変化はありますか。
若林 お客さまに変化がありました。一つ一つの席に「FILMSブック」という自分たちの活動を紹介するちょっとした冊子を置いています。
それを見たお客さまから、すごく応援というか、お褒めのお声をいただきました。口コミでそういうCSRの活動や、環境問題に対しての取り組みに評価をいただいてます。
酒井 サロンスタッフの変化はどうですか。
若林 自分たちも講習を受けたりして知識が増えることによって、接客での幅が広がっているのではないかと感じています。
あと、最近すごく変化を感じるのが、求人の場面ですね。
FILMSを受ける新卒生の子たちは必ず、環境問題、CSR活動をしていることへの共感を面接の時に言ってくれます。
若い世代にとって、すごく大切な価値観になっているのだと感じます。
サロン経営と環境の調和重視したロールモデルへ
酒井 SDGsの活動をする中での課題はありますか。
若林 美容室は技術を売る仕事なので、やっぱり商材というのがネックになっていて、今の段階だとケミカルな部分で(環境に配慮した)商材の選択肢が少ないです。
一方、お客様はデザインを求められているので、そのデザインに沿うような商材の選択は少し難しいかなというのが現状の課題かなと思っています。
酒井 グリーンプロジェクトに賛同することになった経緯を教えてください。
若林 先ほどもお伝えしたとおり、お客様の求めているものと、我々の提供するものの誤差があると、どうしても長く続けていくことが難しいと思っていました。
なので、まずは自分たちが使ってみて、本当にいいものを導入したいなという気持ちがありました。
グリーンプロジェクトで使用するオーライトさんの企業活動というのはこれまでも参考にしていましたが、実際の使用感や、使ってみてどういう反応なのかを少し検証してみたい、使った上でやらせてくださいという形になりました。
オーライトとは
O’right(オーライト)は、台湾発のコスメブランド。
オーガニック、ヴィーガン、グルテンフリー、非遺伝子組み換えの原材料使用、パラベン、合成着色料など7つのフリーを掲げ、製品開発に取り組んでいる。2021年12月には、全165製品でゼロカーボンを達成した。
グリーンプロジェクトは、b-exとオーライトの資本業務提携をきっかけにスタートした。
酒井 トップダウンではなく、若いスタッフの、チームとしての判断をちゃんと大事にしているというのが分かりました。
最後に、今後の美容室の目指す姿というのをお聞かせください。
白井 CSRチームの活動としては、私自身も就任したばかりで、まだまだこれからなのですが、お店の全員で、誰一人とり残さないような活動にしていきたいです。そして、それが子どもたちや周りのお客さんに広がっていくような活動になればと思っています。
若林 サロンの運営経営もすごく難しい時代になっていると思います。
業界全体として最初は少ないかもしれませんが、FILMSは、しっかり経済と環境の調和を重視したサロンのロールモデルになれるような活動を続けていきたいです。
グリーンパートナーサロンとして、このような機会をとおして少しでも興味を持っていただき、一歩を踏み出すきっかけをつくれるよう、少しでもご協力できたらなと思っています。
文/杉野碧