2021年度の理美容向け業務用化粧品の市場規模は、前年度比106.4%の1478億円だった。
矢野経済研究所が2022年4月5日、推測値として発表したもの。あわせて、2022年度は1.6%増となり1500億円を超えるとの予測を示した。
コロナ禍前とほぼ同水準へ回復
2021年度の市場規模1478億円は、メーカー出荷金額ベースでの数字。微増傾向にあった理美容向け業務用化粧品の市場だが、2020年度はコロナ禍の休業や来店客数減少の影響を受けて、前年度比6.2%減と落ちこんだ。
2021年度はサロンへの客足も戻り、2020年度比で6.4%増へと回復。2019年度比では0.2%減と、ほぼコロナ禍前の水準となった。
年度 | 出荷金額 (百万円) | 前年度比 (%) |
2017 | 141,600 | ― |
2018 | 144,200 | 101.8 |
2019 | 148,050 | 102.7 |
2020 | 138,900 | 93.8 |
2021 | 147,800 | 106.4 |
2022 | 150,200 | 101.6 |
ECのチャネル網構築で、店販品が活性化
矢野経済研究所では「コロナ禍で旅行やレジャー、ファッションなどへの支出がはばかられる中で、根源的な美容ニーズが毛髪への関心を促したことで、身近な非日常体験としての理美容サロンへの支出金額の上昇にもつながった」と分析している。
また、「コロナ禍を契機に店販ECのチャネル網構築が一層進んだことで、例年以上に店販品の販売が活性化した」と見ている。
物販ビジネス強化の取り組み加速
コロナ禍では、さまざまな小売業においてECが伸びたが、「理美容業界も同様に、オンライン販売を有力な物販ビジネスモデルとして取組みを進めてきた」(矢野経済研究所)
店頭以外の顧客接点や販売の機会創出として、非対面・非接触型の販売チャネルであるECシステムの開設や導入を、メーカーやディーラーが積極的に進めている。
「理美容化粧品メーカーは自社製品を導入するサロンの利用客を対象に、また、大手美容ディーラーは個々の取引先サロンが使用する化粧品メーカーごとにホームケア用品のオンラインシステムを構築。これらシステムを利用するサロンも増加している」(矢野経済研究所)
客足戻るも市場はダウントレンド
ECシステムによる店販品購入環境の整備が奏功し、これによる物販拡大で2021年度は市場規模が拡大したというのが矢野経済研究所の見立てだ。
しかし、今後の市場は減少傾向が続くという。その理由として「生活様式の形成も想定すると、コロナ禍前と同等レベルで来店客数が回復することは難しい」「少子化による美容人口の減少という構造的問題も重なる」の2つを大きな理由として挙げている。
美容業界が健全な成長を続けるには、ITを活用したDXによる効率化、物販のさらなる強化による売上増がますます重みをもつことになりそうだ。
なお、矢野経済研究所は「2022年版 理美容化粧品マーケティング総鑑」を刊行した。これらの調査結果やメーカーシェア、トレンド分析を収載している。
→ 「2022年版 理美容化粧品マーケティング総鑑」(A4 282ページ・税込13万2000円)
文/大徳明子