メニューをカットとカラーに絞り、通いやすい価格で提供するメンテナンスサロン「チョキペタ」が好調だ。
運営元のアルテ サロン ホールディングスは、2021年度の年間売上が17億6000万円を超え、売上、来客数、客単価すべて過去最高となったことを明らかにした。
ヘアメンテナンス需要追い風に
チョキペタの提唱するヘアメンテナンスとは、髪が伸びた分だけカットやカラーをして、いつものキレイな状態をキープするというもの。1回の施術料金が安い、滞在時間が短い、来店サイクルが短いのが特徴だ。
2011年7月に1号店をオープン。首都圏と一部関西に出店を進め、オープンから順調に店舗数を増やし、2022年2月末日現在65店舗を展開している。
最初の緊急事態宣言が発令された2020年4月には、多くの店舗で約1カ月間休業するなど新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けた。この結果、2020年度は年間売上、客数ともに初の前年割れとなった。
しかし、 コロナ禍以前から高まりを見せていた「ヘアメンテナンス」への需要を追い風に、2021年度は過去最高の79万2000人が来客。年間売上は17億6100万円と、こちらも過去最高を達成した。10年前のオープン当初と比較すると売上は117倍にまで伸びている。
なお、チョキペタを含めAsh、NYNYなど美容室を関東・関西で300店舗以上展開するアルテサロンホールディングスは上場廃止を予定しているが、2021年12月期決算の経常利益において過去最高益を達成。チェーン売上高は前年同期比110.2%の186億1100万円となり、コロナ禍前である2019年の水準までおおむね回復している。
手頃な価格で利用頻度高く
チョキペタが提供する「ヘアメンテナンス」は、伸びた分だけカットやカラーをしていつものキレイな状態をキープすること。メニューをカットとカラーに絞り、カラーは白髪染め専門、カットは大きくヘアスタイルを変えず伸びた分の毛先を1~2cm整えるメンテナンスカットを提供している。
カットは1300円、カラーは根元の白髪染めが1900円からと手頃な価格で利用でき、すぐ伸びてしまう根元の白髪やまとまりづらくなる髪をこまめにメンテナンスできる。
そのため来店周期は約1カ月に1回と、同じアルテサロンHDのデザイン系サロンAshの来店周期が3~4か月に1回であることと比較しても短く、頻繫に利用されていることが分かる。
サービスへの満足度も高く、チョキペタが約7000人に対して実施したアンケート調査では、 96%が「仕上がりに満足」と回答し、高い評価を獲得している。
1000円代カットなのに女性客がメイン
1000円代でカットができる低料金の美容室・理容室は男性客中心というイメージがあるが、チョキペタの利用者は、40代以上の女性が8割を占めている。
低料金、短時間施術で満足度の高いサービスを提供するため、様々な工夫をしている。たとえば、おもにスーパーの店内に出店し、買い物ついでに立ち寄ることができるようにするなど普段の生活導線上に美容を取り入れやすくしている。
また、予約は不要。少し時間ができた時などに気軽に利用することができる。
そのほか、お会計は券売機で事前精算、オートシャンプー機によるシャンプー、セルフブローブースを設置し自分でドライやスタイリングができるようにするなど、効率的な仕組みを取り入れることで安さと早さを実現している。
スタッフの半数が「休眠美容師」
また、チョキペタでは、結婚や育児などさまざまな事情で美容師を辞めた「休眠美容師」が活躍している。約10年間で採用した休眠美容師の数は300人以上にのぼり、現在はチョキペタで働く美容師の約半数を占める。
厚生労働省のデータなどからアルテサロンHDは、国内の休眠美容師は50万~75万人程度いると推測している。
サロンの現場から離れてしまった美容師が再び働くことができるよう教育制度や雇用制度を整備し、働きやすい環境を提供することは美容業界の課題である人材不足の解消にもつながる。
休眠美容師再雇用や働き方の多様性という視点においても、チョキペタの躍進は注目を集めそうだ。