美容室300店舗を展開するクリーニング店

経営・業界動向
美容室300店舗を展開するクリーニング店

注目集めるIT業界からの異業種参入

美容室への異業種参入というと、IT業界からの参入を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

よく話題に上るのは「ALBUM」。カカクコム創業者の槙野光昭氏が立ち上げ、創業5年で年商10億円を突破。

SNSフォロワー数40万という業界随一の情報発信・拡散力を持ち、3月28日には5店舗目となる銀座店を30席の大箱で出店と、破竹の快進撃を見せています。

近年勢いを増しているシェアサロンでは、美美美コム(現•楽天ビューティに吸収)創業者の大庭邦彦氏が代表を務める「GO TODAY SHAiRE SALON」が、2022年に全国96店舗を目指し、出店スピードを上げています。

また、IT業界そのものではありませんが、リクルートでインターネットサイトの企画などを行っていた高橋賢氏が手がける「ヘアカラー専門店fufu」も、2014年の設立から早くも70店舗を超えています。

FCショーで美容室が加盟店募集

IT業界からの異業種参入を警戒している美容師さんは多いと思いますが、フランチャイズ・ショー(FCショー)についてはどうでしょうか。

FCショーは日本経済新聞が主催する展示会で、加盟店を募集するFC本部や周辺ビジネス事業者ら約200社が出展し3万人が来場するFC関連では日本最大規模の商談見本市です。

35回目となる「フランチャイズ・ショー2019」は3月6日~8日の3日間、東京ビッグサイトで開催され、同時開催の日経メッセとの合計では20万人が来場しました。

このFC展に、美容室が出展しています。

美容室イレブンカット

まずは「イレブンカット」(株式会社エム・ワイ・ケー/吉楽裕社長)。

吉楽裕社長が家業の鮮魚店を経ての美容業界参入であることはご存知の方も多いかと思います。

2000年の設立から19年連続増収増益。直営109店、FC78店の計187店舗(2019年1月現在)で、2019年2月期の年商は97億円の見込みです。

また、美容室ではありませんが、美容師しか施術できないアイラッシュの分野では、アイゾーン専門サロン「ダイヤモンドラッシュ」(株式会社MaxAbility/會田孝弥かいだ・たかや社長)も出展。

異業種からの参入で、2010年の設立から渋谷、新宿、表参道、恵比寿 に4店舗を出店、これからFC展開を本格化するために初出展したとのことです。

創業40年、全国7000店舗のクリーニングチェーン

サンキューカットを中心に3ブランド展開

“10分1200円カット”の「サンキューカット」、低価格帯の「メリィ・メリィ」、ヘアカラー専門の「ヘアカラーマイパレット」

そして注目は、サン・クエスト株式会社(熊本市/中園博也社長)。

国内275店舗、海外1店舗を展開する“10分1200円カット”の「サンキューカット」を主力に、低価格帯サロンの「メリィ・メリィ」、ヘアカラー専門店「ヘアカラーマイパレット」と合わせて約300店舗を展開する美容室チェーンです。

ホワイト急便

ハートのマークでおなじみ。全国に7000店舗を展開するクリーニング店「ホワイト急便」

サン・クエスト株式会社は2001年、クリーニング店「ホワイト急便」で知られる中園化学株式会社のサンキューカット事業部として発足。カット特化、ヘアカラー特化で低価格という成長カテゴリーに絞った進出で業績を伸ばしています。

「ホワイト急便」は創業40年を超え、全国7000店舗を展開するクリーニング業界のメガチェーン。FC方式のため、中園ホールディングスのグループ企業である日本さわやかグループが社員11名で本部機能を担っているという構図のようです。

サン・クエスト株式会社の沿革は、次の通り(同社公表資料から引用)

2001年9月 中園化学株式会社のサンキューカット事業部として発足
2002年9月 「株式会社サンキューカット」設立、FC展開スタート
2006年6月 全国100店舗達成を期に、現「サン・クエスト株式会社」に社名変更
2007年7月 メリィ・メリィFC展開スタート
2010年1月 全国200店舗達成
2012年3月 イメージキャラクターにタレントの杉浦太陽氏を起用
2013年10月 海外店舗1号店を台北市(台湾)にオープン
2016年12月 ヘアカラーマイパレットFC展開スタート

中園ホールディングスは、資本金4億780万円、従業員数2000名超の大企業で、ホームクリーニングを核に、業務用クリーニングやコインランドリー、家事代行サービスなど周辺産業へ事業を拡大してきました。美容業界への参入は、FCのノウハウが活用できると踏んでのことでしょうか。

FCショーで探すのは、技術者ではなく経営者

美容業界はオーバーストアや施術料金の低下などの問題を抱えていますが、クリーニング業界も厳しい状況下にあります。ファストファッションや節約志向からクリーニングの利用が減り、クリーニング店の数は20年前の約16万店から約10万店へと大幅に減少しているといいます。

今後も、より厳しい状況下にある異業種が、保有資産やノウハウを活用しようと美容業界へ参入するケースは増えていくのではないでしょうか。

イレブンカットもサンキューカットも、2000年代初頭に異業種から参入し、美容業界にとって厳しい時代と言われるこの20年に順調な成長を続けている美容室です。

美容室のFC展開というと“スタッフへののれん分け”が思い浮かびますが、FCショーに出展する企業は「オーナーになりたい美容師」ではなく「FCビジネスをしたい経営志向の人」を探しています。

美容室は小規模・少人数のお店が多く、オーナー自身も店頭に立つプレイングマネージャーが多いのが業界の特徴ですが、自身は経営に専念するビジネス志向のオーナーが異業種から今後もどんどん参入してくるということを意識する時代に来ているのではないでしょうか。

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