アルテ サロン ホールディングスが今後取り組んでいく施策は、大きく次の5つ。
「美容室向けコンサルティング会社」の構想、DXの推進、M&Aなどを進めていく。
「美容室向けコンサルティング会社」としての美容業界で唯一のポジションを確立することを目指す。
現行のカンパニー制から事業部制への移行により、各社の異なる管理体制や制度を統一し、効率的な業務運営を追求する。
労働生産性を高める環境を構築。美容師が顧客サービスの質の向上に注力するように促し、顧客満足度を高めることを目指す。
顧客情報をデータベースで管理し、接客や商品開発に活用し、コンサルティングの強化を図る。デジタル・マーケティングなどを導入することで、販促サービスの改善や集客、求人の効率性と有効性を促進させる。
M&Aを通じて、企業価値向上を推進していく。
なお、上場廃止の方針発表と同日に、2021年12月期決算を公表した。前年同期比9.8%の増収で、営業利益、経常利益についても前年を大きく上回った。
■売上高
86億3900万円(前年同期比9.8%増)
■営業利益
5億7000万円(同362.2%増)
■経常利益
6億3600万円(同109.6%増)
■親会社株主に帰属する当期純利益
2億7400万円(―)
※包括利益 2億7300万円(2020年12月期:△1億9500万円)
売上高 | 営業利益 | 経常利益 | |
2021 | 86億3900万円 | 5億7000万円 | 6億3600万円 |
2020 | 78億6700万円 | 1億2300万円 | 3億300万円 |
2019 | 85億円 | 5億1300万円 | 5億2500万円 |
前年からの大幅増は2020年12月期が新型コロナウイルスの影響で減収減益だったことの反動だが、2019年12月期と比べても持ち直しており、行き詰まった末の上場廃止ではないことが見て取れる。
「従来どおりのビジネスモデルでは、企業価値の向上が困難であると認識している」「安定的かつ継続的に企業価値を向上させるためには、中長期的な視野にたった抜本的な経営戦略の実行とそれを可能にする機動的かつ柔軟な意思決定体制を構築することが急務である」
株式公開買付の発表資料には、強い危機感のにじむ厳しい言葉が並びました。
上場企業は情報を開示したパブリックカンパニーであり、認知と信頼を得ることができるため、上場廃止によるデメリットは当然あります。
また、アルテ サロン ホールディングスの時価総額は約50億円ですが、現状の株価を上回るTOB価格のため、買付にかかる費用はかなりのものです。
それでも今回、同社は上場廃止の道を選びました。
目先の利益に振り回されず、成果が出るまで時間のかかる中長期的な課題に取り組める。これはオーナー企業のメリットとしてよく挙げられますが、非上場企業にも言えることです。
しかしながら、株主の声に左右されず先行投資に踏み切ったからといって必ず結果がでるわけでも、投資を回収できるわけでもありません。不退転の決意でのぞむ改革の行く末に注目が集まります。
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