資生堂2021年中間 プロフェッショナル事業が復調、コロナ前水準の74億円

経営・業界動向
資生堂2021年中間 プロフェッショナル事業が復調、コロナ前水準の74億円

資生堂の2021年1~6月期連結決算は、国内事業のマイナスを海外事業の成長がカバーし、前年同期比21.5%増の5076億8700万円だった。

プロフェッショナル事業については、売上高74億1800万円(前年同期比32.0%)、営業利益6億8700万円(―)と復調した。

ブランド売却など変動の5カ年

ここ数年のプロフェッショナル事業は、ブランドの売却やセグメントの見直しなどの変動が激しかったため、一概に前年比で比較することはできない。

資生堂プロフェッショナル中間決算の5カ年推移
プロフェッショナル事業の5カ年推移(中間決算)

2017年、ゾートス社を売却

2017年1~6月期の売上高は、231億9900万円(前年同期比4.4%増)、営業利益11億6900万円(同697.0%増)の規模があった。

しかし、この年の12月にゾートス社をヘンケルに売却したため、2018年1~6月期は売上高102億6100万円(同55.8%減)、営業利益4億8400万円(同58.5%減)と半減している。

ゾートス社の売却

ゾートス社は、1988年に資生堂グループとなって以降、北米を中心に世界70カ国でサロン向けヘアケア製品を展開。

拠点および売り上げの大半が北米であり、かつ日本では展開していないブランドだったため、アジアに集中して投資を強化する「選択と集中」を進めるという全体方針に基づき売却を決定。

2017年10月、ヘンケルへの売却を発表。12月に譲渡が完了した。

ゾートス社の2016年12月期売上高は約2億3000万ドル(約265億円)、譲渡額は4億8500万ドル(約552億円)。※レートは当時

参考:ヘンケル発表資料資生堂発表資料

2019年、資生堂美容室を「その他」に変更

2019年1~6月期は、資生堂美容室株式会社を「その他」に計上するようセグメントを見直したため、この分の売上が無くなった。

プロフェッショナル商材・店販用のヘアカラー剤、パーマ剤、ヘアケア、スタイリング剤などによる売上高は72億1600万円、営業利益が2億2900万円。

資生堂美容室の該当分を除いた前年同期比では、売上高は0.5%減と微減、営業利益はマーケティング投資を増やしたため28.3%減だった。

2020年、コロナ禍で減収減益

そして前期(2020年1~6月期)は、初の緊急事態宣言が4月7日に発出された。

5月25日に解除されるまでの期間は、該当エリアにおける美容室の休業や時短営業があり、それ以降も外出自粛による客数減などの影響があったため、売上高56億1900万円(同22.1%減)、営業利益1500万円(同93.1%減)と大幅な減収減益となった。

2021年中間はコロナ前から2.8%増収

このように紆余曲折を経て迎えた2021年1~6月期は、売上高74億1800万円(前年同期比32.0%)、営業利益6億8700万円(―)へと回復。

資生堂がプロフェッショナル事業を展開している日本、中国、アジアパシフィックの各地域で美容室の来店客数が回復し、E コマースにおけるプロモーション強化も奏功した。

コロナ前の2019年1~6月期と比べても、売上高2.8%増、営業利益300%増と復調している。

ヘアカラー、ヘアケアに新ブランド投入

2021年度上期は、髪の芯へとアプローチする新ヘアカラーブランド「アルティスト」(全41品目)を2月に発売し、活発なプロモーションを行っている。

また下期は、クリーンビューティーなヘアケアブランド「ヘアキッチン」(サロン用、ホームケア用)を7月に発売した。

従来は廃棄されてしまう規格外野菜や果物を有効活用し、環境負荷の少ないバイオマスプラスチックの容器を採用しており、美容師とともに社会貢献活動を推進していくという。

中国事業が大躍進、日本事業に並ぶ

資生堂グループ全体の2021年1~6月期は、売上高が21.5%増の5076億円。前年同期は34億円の赤字だった営業利益も230億円へと回復した。

ただし純損益は、「ドルチェ&ガッバーナ ビューティ」のライセンス契約解消に伴う特別損失があったため、前年同期(213億円の赤字)に続き、172億円の赤字となった。

資生堂2021年中間決算(資生堂プロフェッショナル)

このうち日本事業の売上高は1.1%減の1488億円で、百貨店など小売店の時短営業や来店客数減、外出自粛に伴う消費マインドの低下の影響がいまだ続いている。

その一方、中国や欧米を中心とした海外事業が成長。特に中国事業はオフライン、オンラインとも好調で44.1%増。コロナ前の2019年中間(1076億8400万円)との比較でも30%ほど伸び、日本事業とほぼ同等の1441億円となった。

こうして見ると、プロフェッショナル事業(74億円)は、1兆円企業である資生堂グループ全体の1.5%にすぎないが、プロフェッショナル事業の売上に対する利益率は8.9%と高い。高価格品に経営資源を集中すべく、売上は大きくとも日用品事業を売却した資生堂にとっては重要な事業だ。

新ブランド「アルティスト」「ヘアキッチン」の投下、既存ブランドも含めたプロモーション展開、ヘアカラーシミュレーションツール「カラーミラー」のような最新技術を取り入れたコミュニケーションなど、2021年度も多角的に注力していく姿勢をとっている。

資生堂グループ2021年中間決算

資生堂2021年第2四半期(2021年1月1日~6月30日)※連結

■売上高
5076億8700万円(前年同期比21.5%増)

■営業利益
230億1200万円(―)

■経常利益
280億5200万円(―)

■親会社株主に帰属する四半期純利益
△172億7800万円(―)

資生堂2021年12月期業績予想(2021年1月1日~12月31日)※連結

※2021年5月に公表した見通しから修正なし。ただし、新型コロナの変異株も含めた今後の見通しが不透明なため、しかるべきタイミングで改めて公表する予定

■売上高
1兆670億円(前年同期比15.9%増)

■営業利益
270億円(同80.4%増)

■経常利益
270億円(同180.1%増)

■親会社株主に帰属する四半期純利益
355億円(―)

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