MINXグループの教育・マネジメントを統括する菅野久幸取締役による「デキる店長」への店長術。
前回に続き、ビューティーワールドジャパンでの講演内容をもとに、繁盛している一流サロンのマネジメントを紹介します。
今回は、美容室における実践的なマーケティング、クレーム対応、そしてサロンブロンドを高める新要素でもあるSDGsについてです。
→前回の記事(MINX菅野久幸取締役 「デキる店長革命」① デキる店長になれない7つの理由)を読む
※以下、女性モード社からの寄稿をもとに編集しています
文・写真 女性モード社
①店長はマーケターであれ!
(前回は)店長としての心構えや考え方を中心にお話しましたが、実務的な面にも触れていきたいと思います。
特に大事なのがマーケティング。ただ、あまり専門的になりすぎると、負担が大きくなってしまうので、MINXでは、要点を抑えた形で実践するよう、店長やスタッフに促しています。
ブランディングはマーケティングの一環
ブランディングというのはマーケティングに含まれる一要素です。マーケティングをしっかりやっていこうと突き詰めていくと、必ずブランディングに行き着くという関係性です。
美容室・美容師は、「サロンブランディング」「セルフブランディング」に注力していますよね。
「サロンブランディング」は、すでに欠かすことのできない当たり前のことになっています。「セルフブランディング」は、ここ10年くらいでその必要性が問われるようになってきました。
リアル、デジタル双方のマーケティングが必要
皆さんが日頃、サロンで行っているブランディング、例えば、どういうメニューをつくるのか、お客さまに何を提供するのか、スタッフ1人ひとりがどうやって技術を磨いて、何を武器にしてがんばるか、というのが「リアルマーケティング」というわけです。
今の時代、もう一つ考えなくてはいけないのが「デジタルマーケティング」。いわゆるウェブやSNSを活用した発信やコミュニケーションによってブランド価値を高める手段で、「セルフブランディング」においてかなりの有効性を発揮します。
このリアルとデジタルで大きく分けたマーケティングをしっかりやっていかないと、売上がなかなかついてきません。
マーケティングは恋愛に当てはめてみる
ではマーケティングとは何か、ということを考えると、私は「恋愛」に例えて考えると分かりやすいと思っています。
美容師は目の前のお客さま、女性を喜ばせるために、会うたびに何かを与え続けていかないと、また来てくれないとか、そういった心理的な戦略です。
これについては、本(MINX流「デキる店長」革命)の中で簡単なステップ方式で紹介させていただいています。
マーケター的思考がなければ、情報社会を勝ち残っていけない
その前の基本として、マーケティングを行う人、ビジネス用語では「マーケター」と呼ばれていますが、私は店長に、そのマーケターの資質を持ってほしいと考えています。
なぜかというと、競合店がたくさんいるという中で、マーケター的な思考を持たないと、この情報社会を勝ち残っていけないからです。
「SNSを毎日あげています」と言っても、「お客さまが1人も来ません」「その理由はよく分かりません」では無駄なのです。
②「サロンブランディング」は要素を組み合わせる
マーケティングミックスで成功率アップ
美容室におけるマーケティングでは、「マーケティングミックス」という考え方がフィットすると思います。
言葉通り、いろいろなマーケティング要素を組み合わせてサロンをブランディングするというもので、売りとなるメニューや商品、適性単価を決定する際の指針となります。
美容室における「マーケティングミックス」
Product/メニュー、店販商品
Price/適正単価
Place/どこで、ポジショニング
Promotion/打ち出し、SNS、ウェブ
People/スタイリスト、アシスタント、レセプション
Process/具体策
Physical environment/店の雰囲気、仕組みづくり
Product(メニュー、店販商品)、Price(価格)、Place(ポジショニング)、Promotion(打ち出し)、People(スタッフ)、Process(具体策)、Physical environment(店の雰囲気、仕組みづくり)、これらをトータルでコントロールしてサロンのブランド価値を構築していくわけです。
例えば、髪質改善のメニューを打ち出していこうという時、サロンの立地エリアにおいて、または通常メニューとの比較で、提示したい価格は高いのか安いのか。SNSでは何をどのように発信していくのか。どのようなプロセスでメニューの説明を行っていくのか。そして、メニューを提案するに当たってどのような環境にあるのか。
そういうことを1つずつ考えていくのが「マーケティングミックス」です。それをさらに各スタッフに落とし込んでいったものが「セルフブランディング」という位置づけになります。
このスタイリストを売り出したい、このメニューを打ち出したいというときに実践すると、いろいろな要素の相乗効果で成功率が高まります。
最もいけないのは一貫性がないこと
失敗することもありますが、最もいけないのは一貫性がないことです。
考えがスタッフ全員に伝わっていなくて、髪質改善をイチ押ししているのにもかかかわらず、アシスタントがそのことについて説明ができなかったり、一部のスタッフが忙しさを理由にメニューの提案を面倒に感じた態度を見せたりすると、せっかく引き寄せたお客さまの心が、サロンから離れていってしまいます。
シンプルに言うと、サロンの強みや特色を明確にして、あらゆる視点から可能性を見出して、ブランド価値につなげていくのが「マーケティングミックス」を行う大きな意味と言えます。
ただ、必ず成功するという保証はありませんので、PDCA(計画→実行→評価→改善)のサイクルをしっかり回して形にしていくことが大切です。
マーケティングの基本的なお話をしましたが、今の時代はビジネスモデルの賞味期限は10年、もっと早いと5年とも言われていて、同じメニュー、アプローチを続けていては、そのうちお客さまに飽きられてしまうということを肝に命じてください。
それくらい時代の変化スピードが上がっていて、コロナ禍においてもかなり状況が変わったと言えるでしょう。