ホットペッパービューティーアカデミーでは年に2回、15~69歳の男女1万3,200人を対象に美容サロンの利用実態調査を実施しています。
コロナ禍における調査は、今回が初! 新しい美容サロン利用の兆しがうかがえました。
「美容センサス2021年上期≪美容室・理容室編≫」をもとに、美容室データの注目ポイントをご紹介します。
文・作表 田中 公子(ホットペッパービューティーアカデミー研究員)
目次
①女性の年間利用回数はコロナ禍で減少。年3回以下の利用者が52%
まず、コロナ禍で大きく影響を受けた「年間利用回数」(来店頻度)について。
年間利用回数は、ここ数年はそれほど大きな変化はなかったのですが、2020年から2021年は、年4.48回から4.12回(前年比8%減)へと大きく減少しています。
例年に比べての増減では、「年1回」しか利用しない女性が最も増えました。次いで「年2~3回」。合わせると、「年3回以下」の利用者が52.3%。2017年以降、初めて過半数を超えました。
反対に、「年6~11回」「年12回以上」の利用者シェアは下がっています。
2020年4月以降、緊急事態宣言を受けて「サロンに行きたくても行けない」という状況もあったことでしょう。
来店頻度の低下は体感としてはあったかと思いますが、データで改めて裏づけられる形となりました。
②年間利用回数が最も減少したのは10代後半、最も影響が少なかったのは40代
年代別に見ると、前年からもっとも減少したのは15~19歳。年間利用回数が「年3回以下」が前年の69.6%に対して、76.3%にまで上昇しています。
つまり、7割超が「来店は4カ月に1回以下」ということです。「バイトがなくなって、美容室にお金が使えなくなった」という声も聞きます。
逆に、最も年間利用回数の落ち込みが少なかったのは、40代。
実は40代以下の中では、年間利用回数が最も多く、コロナによる来店影響が他の年代に比べると小さかったことが分かります。
③女性の1回あたり利用金額は過去最高6,930円
次に1回あたりの利用金額を見てみましょう。前年から1.2%増、84円多い6,930円です。実は、調査をはじめた2012年以来の最高値です!
コロナ禍で来店頻度が減少した分、1回の来店で「しっかりと施術したい」という気持ちがあるのかもしれません。
年代別には、最も金額の増加割合が大きかったのは15~19歳(前年比4.2%増)、続いて40代(同3.3%増)、20代(同2.5%増)でした。
15~19歳は、前述したとおり年間利用回数が大きく下がった分、より「1回の来店」でまとめて施術をしているとも考えられます。
また、15~19歳、40代、20代ではメニュー利用にも関係がありそうです。こちらは後述します。
④コロナ禍に利用が増加したメニュー 1「カラー」
今度は「メニュー利用率」のデータを見てみましょう。女性全体では、2020年から2021年に利用が増加したメニューは「カラー」(53.2%、前年比0.7pt増)、「トリートメント」(36.8%、前年比0.5pt増)です。
「カラー」は2016年以降、利用率が上昇し続けているメニューです。年代別に見ると、増加幅の大きかったのは30代(57.5%、3.2pt増)、15~19歳(32.8%、2.8pt増)、40代(52.7%、1.2pt増)でした。
15~19歳では「ハイトーンカラー」がコロナ禍でも人気です。30代、40代は「おしゃれ染め(デザインカラー)」利用が増加しています。カラーに対するニーズはコロナ禍の影響を受けなかったことがうかがえます。
⑤コロナ禍に利用が増加したメニュー 2「トリートメント」
一方、「トリートメント」の利用率が今年上昇した背景には「コロナ禍での髪に対する改善意欲」があると考えます。以前の記事でもご紹介しましたが、「髪質」への改善意欲はコロナ前から大きく上昇しています。
年代別では、20代女性と30代女性が前年から大きく伸びているのも特徴的です(20代女性54.9%、前年比3.1pt増、30代女性44.0%、前年比2.1pt増)。
20代、30代というと「カラー」の利用率が高い年代です。特に20代はハイトーンカラーが人気ですので、そのケアをしたいという思いが、コロナ禍での「髪質」改善ニーズに相まって強くなったと考えます。
⑥<サロン事例>競合ひしめく「表参道」で「艶髪」に特化する美容室(Rr SALON AOYAMA)
最後に、表参道の「Rr SALON AOYAMA」をご紹介します。
「ホットペッパービューティーアワード2021」(年間のネット予約売上上位のサロンを選出)の関東エリア、3~5席部門で1位となった表参道のサロンです。
メニューは、ほぼ「トリートメント」! 「パーマ」や「ハイライトカラー」などのメニューはほぼ実施しておらず「艶髪」に特化したサロンです。
実は、施術1回あたりの平均利用金額はなんと約2万円。美容室の1回あたりの平均利用金額は6,930円なので「Rr SALON AOYAMA」は3倍弱にもなるのです。
あえて「艶髪」に特化した背景にあるのは、表参道という競合がひしめく激戦区でカット、ハイライトカラー、パーマなどの施術を全て提供しようと思っても、戦いが厳しくなるということ。
「艶髪」に特化しているからこそ、その技術の向上だけに集中でき、技術力を上げることができるといいます。
若年層の「ハイトーンカラー」ブームによるケアニーズを見事にとらえ、コロナ禍も集客に成功した事例です。
今回は、最新の美容センサスから、お客さまのコロナ禍での新しい動きについてご紹介しました。
コロナ禍による来店頻度減少は事実です。しかし、コロナ禍だからこそ生まれたカスタマーニーズも明らかになりました。
私たちホットペッパービューティーアカデミーでは引き続き、コロナ禍でのカスタマーの兆しをデータで可視化し、皆さまにお届けしていければと思います。
田中 公子
ホットペッパービューティーアカデミー研究員
TANAKA KIMIKO/ホットペッパービューティーアカデミーの調査研究員として、2012年から活動。「美容センサス」をはじめとするカスタマーの美容サロンに対する利用行動・意識調査や美容消費の兆しを発信。セミナー講演、業界誌・一般誌・TVなど取材多数。共著に『美容師が知っておきたい50の数字』『美容師が知っておきたい54の真実』(女性モード社)ほか。
データ出典
「美容センサス2021年上期≪美容室・理容室編≫」
〇ホットペッパービューティーアカデミー(2021年6月発表)
〇調査期間:2021年2月12日~2月22日
〇https://bit.ly/3h6RBsf