教育ではなく「共育」で共に成長
──みなさん、生き生きと働いていらっしゃるのですね。ところで、シェアサロンのデメリットとして教育の問題がよくあげられますが、どうお考えですか?
「教育サロン」という言葉があるように、美容業界では、教育が重視されているのは確かです。でも、サロンに勤めていたころから、この「教育」というものに違和感がありました。
朝から夜まで12時間もサロンワークをして、クタクタに疲れている状態で教育を受けるんですよ。教える方だって、本当は早く帰って子供と遊びたいんじゃないかと。教育する側にとっても、受ける側にとっても、いい形だとは思えませんでした。
GO TODAY SHAiRE SALONでは、教える側、受ける側の負担になる「教育」はしません。代わりに、共に育つ「共育」を理念としています。
──共に育つ「共育」とは、どのようなものですか?
ここには幅広い世代のクルーがいます。たとえば20代の女性と40代の男性で、それぞれの得意分野を教え合うことができます。
美容師の控え室兼コミュニティスペースとしてラウンジを設けているのですが、そこで自主的にセミナーを開いているようです。運営側がカリキュラムを組むのではなく、場所は提供するので、自発的に、自然発生的にどうぞというスタンスですね。
カリキュラム的なものを求めている人に対しては、今後、セミナーを設けることも考えています。ただ、その場合も、義務や負担として負わせるのではなく、教える人に受講料が入る形にしたいと思っています。
集客、自身の強み。フリーランスとして続けるには
──フリーランスになる際、集客も不安に思う点ではないでしょうか。
集客はできますよ。
月額クルーに20代で月に150万円稼ぐ人がいます。単価1万円として150人。3カ月に1回の来店とすると、その3倍、450人のファンがいれば可能です。まあ、これはかなりの成功例ですが。
欲しい給料から逆算すればいいんです。売上40万円を目指すなら120人。SNSで名の売れているような美容師でなくても、街で声をかけていけば120人のお客様はつくれます。
──フリーランスとして長く続けていくには、自身のブランディングが得意な人や、これといった強みがある人でなければ難しいのではないでしょうか?
そもそも、すべてのスタッフが全部をできるようにという従来の教育は、効率が悪いと思っています。
1人の美容師が全部できる必要なんてありません。得意分野を伸ばしていく方がずっといい。
たとえば、1カ月ずっとヘッドスパに集中すれば、かなりの腕前になります。実際に、GO TODAY SHAiRE SALONにはヘッドスパに特化して有名になった人もいます。
特化した方が1人の生産性としては高くなります。僕が考えるフリーランスの本質は、効率がいいということです。
──お客様からリクエストがあったら、どうすればいいでしょう?
それができる美容師さんを紹介すればいいんです。僕自身、結婚式のヘアセットをお願いしたいと言われることがあるのですが、その際は人を紹介しています。
シェアサロンには横のつながり、コミュニティがあるので、紹介もできるし、共育もできるし、いろいろなことができます。
──コミュニティの力というのは大きいですね。
公式ホームページには、ブログやTikTok(ティックトック)のリンク付きで契約美容師の自己紹介を載せています。
GO TODAY SHAiRE SALONが一般のお客様に広く知られるようになれば、情報発信力もつきますし、シェアサロンを入り口とした集客も増えていくでしょう。
お客様を集め、シェアサロンというものをコンテンツ化し、メディアとしての機能を持たせ、GO TODAY SHAiRE SALONという箱の中で経済を回したいと思っています。
いっしょに成長し、いっしょに夢を見たい
──GO TODAY SHAiRE SALONの成長は目覚ましいですね。運営にあたり、月額利用料プラス技術売上の25~30%という変動制にしているそうですが。
固定費や定額制にしないのは、GO TODAY SHAiRE SALONは不動産屋ではないからです。美容師さんの技術売上が10万円でも50万円でも、運営側は家賃の20万円だけもらえればいいから気にしないというビジネスにはしたくない。
僕らは美容師さんといっしょに成長し、いっしょに夢をみたいんです。
「GO TODAY」という名前は「今日行く」と「共育」をかけています。共に育つというのが、立ち上げの準備をしている時からの変わらない思いです。
──ミッションに掲げている「美容師にエンパワーメントを 美容室にエンターテイメントを」とは、どんな意味でしょうか?
「美容師にエンパワーメントを」というのは、美容師がやりたいことをやれる環境をつくるということです。
時間もお金もない状態では動きが取れませんが、どちらかあれば、挑戦や自分への投資ができます。美容師以外の仕事、やりたいこととの両立もできます。
「美容室にエンターテイメントを」、これを目指すのは、美容師自身が楽しめていなければ、お客様も楽しくないからです。
やりたいことをやれる環境で、美容師がもっと自由に、もっと楽しくサロンワークをできれば、お客様にとっても楽しい空間になると思っています。
オオイケ モトキ
パーソナル美容師。都内有名サロンに9年間勤めた後、2016年1月にフリーランスとして独立。2017年11月に個室型シェアサロン「GO TODAY SHAiRE SALON」をオープン。副社長として経営に携わりながら、店頭でサロンワークを行う。ライター、セミナー講師としても活躍の場を広げている。
▽http://oikemotoki.com/
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