ヨーロッパ最大級『サロンインターナショナル』

特集・インタビュー
ヨーロッパ最大級『サロンインターナショナル』

福岡の美容室グループSafari(サファリ)で、教育機関「Safari Academy」を統括する、クリエイティブディレクターのNobu Etoさん。
ヴィダルサスーンアカデミーを卒業後、ヴィダルサスーンクリエイティブディレクターのセッションアシスタントを2年務め、その後、ディレクターが独立して開いたサロンでスタイリストとして3年間勤務した、英国仕込みの美容師。
毎年、ロンドンを訪れるというNobuさんが、今年10月のロンドン研修についてレポートします。

僕が毎年ロンドンに行く2つの理由

『また長期間、日本にいないんですか?』とお客様に聞かれ『どうもすみません』と言いながらも、約7年間を過ごしたロンドンに、毎年行くようにしています。

理由は2つ。ひとつは作品撮り。もうひとつは、海外の感覚を忘れないようにするため。

『作品撮り』については、ロンドンは自分が作品撮りを始めた場所であり、撮影メンバーもいることから、JHA(ジャパンヘアドレッシングアワード)用の作品を3日間撮影するのが恒例です。

海外の感覚と日本の文化を融合したい

もうひとつの『海外の感覚を忘れないようにすること』は、僕の中ではすごく重要なことです。

ロンドンで美容師の基礎を学び、現在は日本に戻ってきて、日本の美容文化に合わせて仕事をしています。

ヒースロー空港に到着すると、『ホームに戻ってきた!』という感覚になるのですが、帰国して6年も経つと『お邪魔します』という感覚が出てきました。良くも悪くも、日本がホームになってきたのだと思います。

ただ、どっぷりと日本の美容文化に染まり、みんなと同じことをするのも違うかなと思うところがあり、自分にしか持っていない経験を生かして海外の感覚と日本の文化を融合しながらやって行きたいと思っています。

そのため、海外の感覚を忘れないように心がけています。

ヨーロッパ最大の美容イベント『サロンインターナショナル』

到着の翌日、10月13日は、ヨーロッパ最大の美容イベントである『サロンインターナショナル』に行きました。日本だとアジアビューティエキスポというところでしょうか。

サウスイーストにあるエクセルロンドンという大きな会場で、有名サロンがセミナーやショーを開催し、メーカーが新しい商品の紹介や販売をします。

ロンドンで暮らし始めた1〜2年目は行っていたのですが、3年目あたりから足が遠のき、今回は10年ぶりくらいに訪れました。

参加サロンやメーカーが減少

サロンインターナショナル2018のヴィダルサスーンのステージ

サロンインターナショナル2018。「ダントツに人気だった」というヴィダルサスーンのステージ

印象としては規模が縮小し、参加するサロンやメーカーが少なくなっていました。

今ではサロンインターナショナルに行ったからといって新しい情報が入るわけではないですし、むしろインスタグラムの方が早く情報を得られます。サロンインターナショナル自体、インスタライブを配信しています。

SNSの発達で情報の伝達方法が変わり、足を運ぶ人が減っているという流れだと感じます。

アジアビューティエキスポは4年に1回ということもあり、まだまだ盛り上がっていると思いますが、サロンインターナショナルは年に1回しかも3日間連続で行うので、みんな飽きてきた感は否めないですね。

オリンピックもワールドカップも4年に1度だからあの盛り上がりですが、1年に1回だと今ほど盛り上がらないのではないでしょうか。

昔はサロンインターナショナルの会場で、著名な日本人美容師さんをよく見かけましたが、今回は、日本人はチラホラ程度で、それもおそらくはロンドン留学中の美容師さんのようでした。

この事実から見ても、良くも悪くも日本の美容業界は10年くらい前まで、海外に対しての情報収集や憧れがあったと思うのですが、SNSで日本にいながらにして海外の美容情報が手に入る今は、わざわざ現地に足を運んで海外の情報や技術を学びたいという人が減ったのだと思います。

それでも生で味わえる感覚を求めて僕は久々に足を運んだところ、色々と楽しめました。

ひいき目でなく、サロンでは、ダントツにヴィダルサスーンのブースが人気で、1日に3回あるサスーンセミナーは人だかりができるほどの盛況。サスーンは今年、アカデミーが新校舎に移転したこともあり気合いが入っていました。

参加メーカーの偏り、目新しさの無さが問題

今のサロンインターナショナルは、資金力のある大きなメーカーやトップサロンばかりが目立ち、規模の小さいマニアックなメーカーやベンチャー的なサロンが新規参入しづらいのも問題だと思います。

メーカーでは相変わらず、シュワルツコフ、ロレアル、ウエラなどの大きなメーカーが目立っていましたが、これは資金力のあるメガメーカーが会場内の一番目立つ位置に大きなブースを出しているということもあります。

各メーカーとも目新しい商品や企画はなく、従来製品の宣伝に奔走している感があり、こういう“新しい感の無さ”がサロンインターナショナルの縮小に拍車をかけているのだろうなと思ったりもしました。

今、日本でも美容のイベントに人が集まりづらいと聞きます。ロンドンとおなじように情報をSNSで取得できる時代だからでしょう。

主催者側はもっと生でしか味わえないエンターメント感や新しい価値観をイベントに入れないとなかなか厳しい時代ではないでしょうか。

※次回は、サロンインターナショナルとは対照的に、年々勢いを増すアンダーグラウンドなヘアショー『NOISE』をご紹介します。

Nobu Eto
Safariクリエイティブディレクター。日本でのサロン勤務を経て2004年に渡英。ヴィダルサスーンアカデミーを卒業後、ヴィダルサスーンクリエイティブディレクターのセッションアシスタントを務める。2010年、ディレクターが独立して開いたサロンにスタイリストとして参加、カットの教育を担当する。
2013年、2014年資生堂ビューティーイノベーションアワード優秀賞。2014年、2015年NAKANOテクニカルコンペティション優秀賞。2014年、2017年JHA(ジャパンヘアドレッシングアワード)ライジングスター、エリアスタイリスト部門ファイナリスト。2016年JHAニューカマーオブザイヤーファイナリスト、エリアスタイリストオブザイヤー受賞。
Instagram : safariacademy

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