カテゴリー: 経営・業界動向

【徹底分析/ミルボン 2020年決算】上場初の減収も、21年は最高売り上げ回復へ

部門別の動き

ミルボンの事業は、以下の5つの事業に分かれています。

・ヘアケア用剤
・染毛剤
・パーマネントウェーブ剤
・化粧品
・その他

このうち、ヘアケア用剤が最も売り上げ規模が大きく、主軸の部門となっています。

化粧品部門は2019年からスタートした、新しい部門です。

2020年の部門別の売上高は、パーマネントウェーブ剤の前年比9.4%減を筆頭に、ヘアケア用剤も前年比0.9%減など、5部門中4部門で前年を下回りました。

新しい化粧品部門は、まだ規模は一番小さいものの、前年比約2.2倍と健闘しました。

ヘアケア用剤

主軸のヘアケア用剤の部門を牽引しているのが、「Aujua(オージュア)」です。

「日本の風土・文化・毛髪特性から生まれた日本女性の髪の美しさを共に育むヘアケアブランド」というブランドコンセプトを持ち、髪や地肌の特性に合わせた商品構成を持っています。

人気の高い商品で、コロナ状況下にもかかわらず、売り上げは前年比で5.9%伸びています。

ヘアケア用剤のもう1つの有力ブランドが「milbon(グローバルミルボン)」です。

「360°輝く髪で、一人ひとりの『私らしい美しさ』を切り拓くシステムヘアケアブランド」というコンセプトで、文字通り日本国内だけではなく、グローバル展開を行っています。

2020年は、取り扱いの店舗数増を強化方針としてきたこともあり、窓口軒数は前年度末と比べ29.2%増加しました。それに伴い、売り上げも7.4%増加しました。

染毛剤

染毛剤部門では、ファッションカラーは伸びましたが、グレーカラーは競争が厳しくなったことと提案活動が十分できなかったことが響き、苦戦したようです。

ファッションカラーのメイン商品「オルディーブ アディクシー」は前年比14.9%増となったのに対し、2019年6月に発売したグレーカラーの「オルディーブ シーディル」は、年間ベースで単純比較はできないものの、想定していた成果を上げることができなかったようです。

化粧品

ミルボンは、2017年にコーセーと提携し、美容室におけるスキンケア・メイク製品の共同開発・国内販売のための「コーセー ミルボン コスメティクス」という新会社を設立しています。

そして、2019年9月に初の美容室専売化粧品「インプレア」を発売しました。

この部門は、今後期待できるカテゴリーと位置づけています。

美容室からのニーズは高く、導入件数は増えていますが、2020年はイベントなどが実施できず活動が制限されたため、売上高は伸びているものの、想定には届いていないとしています。

2021年の見通し

2021年の売上高は、6.9%増の382億円を見込んでいます。これは2019年度の362億円を上回り、過去最高売り上げとなる数字です。

部門別では、主軸のヘアケア用剤が7.7%増、期待の化粧品が77.4%増を目標としています。

一方で、利益に関しては営業利益が0.4%増とほぼ横ばい、当期純利益に関しては3.7%の減益予定となっています。これは、設備投資を大幅に増やす計画に伴うものです。

ミルボンは、2019年から2023年までの中期事業構想を進めてきました。

しかし、このコロナ禍で表面化・加速した環境の変化に対応するためには、一段のスピード感が必要だとの判断から、この中期事業構想は途中終了し、昨年7月に、今年12月までを期間とする新たな「18か月ミッション」を策定しました。

この取り組みにしたがい、21年はデジタル化の費用として3億円、中国工場と米国での研究開発に各1億円など、新たな成長ステージのための先行投資を行う予定です。

21年は、「18か月ミッション」を全力で進め基盤を確立するとともに、22年から26年までの新しい事業構想を作成すると表明しています。

加藤千明(かとう ちあき)
筑波大学を卒業後、山一証券に勤務。1993年7月、東洋経済新報社に入社。電機・化学業界担当記者としてITバブルの全盛期と終焉を経験。2005年より『東洋経済 統計月報』編集長、2010年より『都市データパック』編集長を歴任。『CSR企業総覧』『米国会社四季報』編集部を経て、2021年2月に27年勤めた東洋経済新報社を退社。現在はデータに基づいた分析を強みに『アメリカ企業リサーチラボ』を運営しながら、ファイナンシャルプランナーとしても活動。

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