ヘア業界に革命を起こしたシュワルツコフ プロフェッショナルの「ファイバープレックス」。ブリーチonカラー人気とともに爆発的にヒットしたことも話題の商材だ。
「ファイバープレックス」はどのように浸透し人気を博したのか。マーケティングディレクターの疋田智彦さんにうかがい、ヒットの裏側に迫った。
ファイバープレックス
ブリーチ施術時におけるダメージから髪の毛を守るという発想から生まれた毛髪強化システム。No.1、No.2を併用することで枝毛、切れ毛を98%削減し、思わず触れたくなる羨望のハイトーンを実現。
疋田智彦
ヘンケルジャパン株式会社 ビューティーケア プロフェッショナル事業部マーケティング部 マーケティングディレクター
外資系化粧品企業の美容室流通の営業として経験を積んだ後、外資系洋酒企業でブランド戦略、チャネル戦略の構築に携わる。2018年にヘンケルジャパン株式会社に入社。「INNOVATION IS IN OUR DNA」をモットーに、他メーカーとは違うブランド戦略を目指している。
トレンドを掴み「ブリーチonカラー」にフォーカスしたPRが功を奏した
シュワルツコフ プロフェッショナルが展開するファイバープレックスの日本市場は、2017年の6月にまずはファイバープレックス No.1とNo.2からスタートした。発売当時は展開するヘアサロンを絞り、商品のパフォーマンスを明確に伝えるということを中心に行い、大きくPRをしていなかった。
「今までのトリートメントは、髪を補修するという考え方ですが、ファイバープレックスは髪の毛を強化するというポジショニング。なので、通常のトリートメントのように柔らかくしなやかに仕上がるというよりは、補強され芯がしっかりとした質感になるのが特徴です。
そのため、きちんと説明し理解した上で使用していただかないと、トリートメントとして誤解を生む可能性があったんです。」
当初はカラーにも、パーマにも、ストレートにも、そしてもちろんブリーチにも使える商材として、幅広くアプローチをしていたが、徐々に広まっていくうちに、実はブリーチに一番マッチしているということがわかってきた。
そこから、ブリーチの顧客が多いヘアサロンに使ってもらえるように“ブリーチonカラー”にフォーカスして、PRを拡大していくことになったのだ。
「2017年の8月がひとつのターニングポイントですね。ブリーチのトレンドが戻ってきたんです。そして、2017年の後半から2018年に入るころは、InstagramやFacebookなどで「自己表現」する文化が益々広まってきた時期でした。」
SNS上で誰もが自分自身を表現したい、しなきゃ乗り遅れると思い始めたことで、髪の色を変えたくなる人も増えた。“ブリーチonカラー”が浸透してきたのだ。
「ファイバープレックス No.1はブリーチ剤やカラー剤などのケミカルな薬剤と一緒に使う前処理剤なので、実際に使っていただくとブリーチ時のダメージが明らかに軽減されることがわかります。“ブリーチonカラー”のブームに合わせて販売できたのもラッキーでしたね。」
このように、トレンドに瞬時に反応する敏感さを持ち、商機を逃さなかったことが、ファイバープレックスが大きく広がった理由のひとつと言えるだろう。
美容師たちにクリエイティブに楽しんでもらえるポジションでいたい
その後、ブリーチだけでなくパーマ剤に使うとパーマのリッジが出やすくなる、カラー剤とも相性がよい、などファイバープレックスの特性が明確になり、徐々に複数のメニュー提案をサロンに展開し始めた。
「サロンから実際のお客様の意見を収集したり、インフルエンサーの声をデジタルで配信するなど、SNSを使った地道なPR活動もスタートさせました。リアルな生の声を聞けたということは、ファイバープレックスを広げていく上でとても参考になりました。そうしていくうちに、SNSを介して業界内だけでなく一般層にも広がっていったんです。
弊社は外資で社員数も少なくないのですが、決断が早いので良いと思ったことは、スピーディーに進めることができます。そのためファイバープレックスも、今だ!というタイミングで進められたことで、ヒットに繋がったのだと思います。」
他にも、海外でデザインしているという商品パッケージが醸し出す清潔感と高揚感も強みのひとつだが、やはりファイバープレックスがヒットしている最大の理由は、“枝毛、切れ毛を98%削減”という強みが大きい。
「美容師がヘアカラーのデザイン自体を楽しみたいときに、髪の毛をブリーチすることによって傷むというネガティブな印象と、実際のダメージがそのクリエイティブを侵害・阻害していたことに気づきました。そのネガティブな印象を一気に取り除いてくれる製品にすれば、クリエイターである美容師たちにとって絶対に必要なアイテムにしていける。そう思ったんです。」
そんな想いから、2018年にはファイバープレックスを使うことによって、もっとブリーチやカラーをエモーショナルに楽しんでいこうと提案する「UNLOCK Your Creativity」というプロモーションをサロン内でスタートさせた。
これがSNSで当たり始めたのをきっかけに、商品のパフォーマンスだけではなく、美容師がInstagramに投稿した記事を社内でまとめて情報配信することに切り替えていったのだ。
サロンとともに“ブリーチを日本のあたりまえ”にしていきたい
その後、ファイバープレックスNo.1、No.2が定着していくと同時に、使い方が面倒という声も聞こえるようになった。これをきっかけに、ボンディングというテクノロジー自体が入った製品をいち早く日本で販売するべく、一気に商品開発がスタートする。そこから最初に生まれたのがファイバープレックス パウダーブリーチだ。
「日本では未知のカテゴリーだったボンディングのテクノロジーが入った製品を海外から持ってくるのには時間がかかるんですが、どこよりも早く開発・販売ができました。そして、カラー剤、パーマ剤へと新しい製品が続々と生まれていったんです。」
ファイバープレックスは“枝毛、切れ毛を94%削減”から始まり、現在は“98%削減”と謳っているが、実は「残りの2%は美容師さんの右手と左手で100%になりますよ」というストーリーなのだそう。
とはいえ、美容師の手を借りずともよりダメージを軽減できるように、今ある製品をよりよくする開発も進めている。
「いずれは、“ブリーチを日本のあたりまえ”にしたいと思っていますし、製品開発はもちろん、美容師さんのクリエイター気質な部分をどうくすぐるか?ということを日々考えています。
クリエイティブな場は私たちが用意する、クリエイティブに特化したブランドでいよう。そして、この文化を美容師さんとともに創り上げ、美容業界を盛り上げていきたい、というのが今のファイバープレックス、そしてシュワルツコフ プロフェッショナルの想いですね。」
withコロナによって情報の伝え方はSNSはもちろん、オンラインサロンなどのコンテンツを中心に、今後もますます変化していき、サロンや美容師とメーカーの関係のあり方も今までとは変わるだろう。
だが、インスピレーションソースを提供するメーカー・シュワルツコフ プロフェッショナルは絶やさずクリエイティブを提案し、サロンと力を合わせてこれからも新たなブームを生み続けるに違いない。
― StayHome中はInstagram Liveがクリエイティブを発信する場に ―
セミナーやコンテストができない状況下において、クリエイティブを磨き、インスピレーションを与える場を作る目的で、InstagramLiveでの発信を開始。
「普段美容師さんは朝から晩まで働きづめで、ゆっくりと勉強する時間がない。StayHomeしている今こそ、学ぶ時間があるんじゃないか、ブリーチを文化にするクリエイティブな部分にもっと興味を持ってもらえるんじゃないか、という想いからスタートしました。賛同してくれる美容師さんも多く、とても充実した発信ができたと思っています。」
※文・画像はビューティガレージのカタログ巻頭企画から流用しています
Text:橋本いずみ/Photo:伊藤彰浩
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