── 高橋さんは新卒でリクルートに8年勤務した後、2014年7月に株式会社 Fast Beauty を設立しました。リクルート時代はホットペッパービューティーを担当されていたのでしょうか?
リクルートを経て美容室を開業したのでよくそう思われるんですけど、違います。美容系サービスとは、ほとんど関わりがありませんでした。
当時は「リクナビ」や「リクナビネクスト」のようなHR系(人材採用などのヒューマンリソース)や「じゃらん」など旅行系のサービスを担当していました。「ホットペッパービューティー」については、各種サービスを一斉にアプリ化した際に少し関わったくらいですね。
── 美容分野とは関わりがなかったのに、なぜ美容室経営に乗り出したのですか? 2014年当時でも全国に23万7500軒がある飽和市場です。
ちょっとリクルート出身者っぽく言うなら、マーケット的に“不”があったから、不便や不満があったからです。美容室の店舗数が多くても、“不”を解決するヘアカラーに特化した専門店はマーケットニーズがあると思いました。
Fast Beauty はリクルート時代の先輩と2人で起業したのですが、市場調査として1000人弱のネット調査と30人以上の対面ヒアリングを行いました。
それで改めてわかったのは「美容室は高いけど、家で染めるのは面倒くさいし、毎度のことなので大変」という人、“不”を抱えている人が本当にたくさんいるということ。つまり、リーズナブルな価格でプロが染めてくれるヘアカラー専門店は需要があるということです。
ビジネスはリピートされることが重要ですが、白髪は定期的に染めるものなので、その点でもヘアカラー専門店はいいビジネスモデルなんです。
── 働き手となる美容師の間にも“不”があったとのことですが。
美容師として働く友人達に話を聞くと、長時間の労働、その割に少ない給与、子供を育てながらでは働きにくい体制、社会保険未加入など、労働環境としてよくないのに「それが業界では常識だから」で済まされているという現実がありました。
でも、適切な労働環境や待遇というのは当たり前のことです。“世の中的におかしいじゃん”ってことをよく出来たらいいなと。他の業界なら当たり前のことを美容業界でも当たり前にしたいと思ったんです。
髪を染めたいけど美容室は高すぎるという課題、美容師の労働環境、 fufu はこの両方の社会的課題を解決できるサロンとしてつくりました。
── 美容業界は慢性的な人手不足です。 fufu はどんどん出店していますが、なぜ採用に困らないのですか?
子育てのために一度離職した人、数年でサロンを辞めた人も働きやすい環境を用意しているからだと思います。
fufu は「予約なしOK」つまり「指名なし」です。子供が急に熱を出しても指名が入っていると休みにくいので、子育てしながらでは働きにくいと辞めてしまう人がたくさんいますが、指名なしなら休みやすい。時短勤務もできます。“ママさん美容師”が全体の約4割を占めるほど多く、店長を務めている人もいますよ。
スタイリストになる前に辞めてしまうというのもよく聞く話ですが、こうした職歴2~3年のいわゆるローキャリアの人を fufu では多く採用しているんです。習得に時間のかかるカットがなくてヘアカラー、シャンプー、トリートメントだけなのですぐに戦力として活躍できます。
── 休眠美容師の復職、再チャレンジの受け皿になっているのですね。ベテランの採用はあまりないのですか?
出店数が多いので、キャリアのある人が「店長になりたいから」と来るケースもあります。最短だと4カ月で店長になった人もいます。
fufu は週休2日で社会保険完備。目標達成に伴うインセンティブ、提携ECサイトで使えるポイントなどユニークな特典もあります。ポイントは半年で6、7万円ほど溜まるかな。テレビを買った人もいましたね。
── 前職のリクナビやリクナビネクストの採用ノウハウも役立っているのでは?
採用ノウハウも当然ありますけど、基本的に普通のことをやっているだけです。一つの大手媒体に月額50万円など大きい金額を投じて「応募がない」「採用難だ」となげくのではなく、いろいろ試してそれぞれの費用対効果を見て取捨選択しています。
どれも普通のことですが、すべてやる、試すのが大事です。コロナの前、2019年は年間20店舗ほど出店しましたが、問題なく採用できました。
美容室利用の実態調査では、ヘアカラーは77日、約2カ月半に1回で費用は約5000円となっています。これが半額なら毎月通い続けられるわけです。fufu では根元染め(リタッチ)なら 2400円。来店周期は約1カ月となっています。