月収、年収ともに増加
厚生労働省は2020年3月31日、「令和元年賃金構造基本統計調査」を発表した。
2019年6月度の賃金(賞与や期末手当等特別給与額については1年間分)について調べたもの。
業界の課題となっている慢性的な人手不足を背景に、理容師・美容師は、月給、年収ともに増加した。
月収にあたる「きまって支給する現金給与額」が25万5100円(前年比3.7%増)。
調査結果からの試算による年収は311万4000円(前年比3.0%増)となった。
基本給が増加、年間賞与は減少
調査対象となった「理容・美容師」は、企業規模10人以上のサロン勤務者。雇用労働者が対象で、事業主は対象外。
〇きまって支給する現金給与額
所得税、社会保険料などを控除する前の月収。基本給のほか、職務手当、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などが含まれる
〇所定内給与額
「きまって支給する現金給与額」から、残業代や休日出勤手当などの「超過労働給与額」を差し引いた額
「所定内給与額」が前年比1万2000円増
税込月収である「きまって支給する現金給与額」は前年比3.7%増(9200円増)の25万5100円だった。
ここから、残業代や休日出勤手当などを差し引いた「所定内給与額」は、前年比5.1%増(1万2000円増)の24万5300円。
つまり、月収の増加は、所定内給与額の増加分といえる。
年間賞与やその他の特別給与額は、前年よりも26.8%(1万9300円)減少し、5万2800円となった。
残業時間、残業代ともに減少
労働時間については、早出や残業にあたる「超過実労働時間」が2時間減る一方、始業から終業までの「所定内実労働時間」が2時間増えた。
「所定内給与額」が1万2000円増えたにもかかわらず、「きまって支給する現金給与額」が9200円増にとどまっているため、残業代や休日出勤手当などの「超過労働給与額」が減少していることがわかる。
美容業界も働き方が変わり、残業時間、残業代ともに減っている様子がうかがえる。
10人以上規模のサロンは若手の採用順調か
平均年齢は、0.8歳減の31.2歳。勤続年数は、9カ月18日減(0.8年減)の6.5年。
平均年齢が減少する理由としては「高齢の理美容師の退職増加」あるいは「若年の理美容師の採用増加」が考えられる。
少子高齢化を踏まえると、理美容学校卒業生や若年層の理美容師が減っている中でも、企業規模10人以上のサロンは若手を採用できていることが推察される。
理容師・美容師の年収はゆるやかな増加続く
「きまって支給する現金給与額」の12カ月分に年間賞与・その他特別給与額を加えたものを年収として試算すると、2019年の「理容・美容師」の年収は、前年比3.0%増(9万1100円増)の311万4000円となった。
直近5カ年を同様に試算すると、2015年に前年比8.7%と大きく増えたが、翌年はほぼ前年並みで着地。2017年~2019年は、2~3%増で推移している。
なお、賃金構造基本統計調査は「理容・美容師」で分類されるため、理容師、美容師をわけた賃金は不明。