【サロン六法】59.お店の名前やロゴをパクられたくない! 美容室オーナーが知っておくべき商標の基本

特集・インタビュー

商標登録していない場合のリスク~実際の裁判例を見てみよう~

商標登録していない場合、

①他人に先に商標登録されてしまったらその商標は使えなくなる

「使用しないでほしい」と主張しても法的根拠がないので聞いてもらえない

③逆に「あなたが商標権を侵害している」と訴えられ、損害賠償請求や店名の変更を求められることもある

というリスクがあります。

実際に、商標登録していなかった美容室が店名を変えることになった裁判例があります。

平成元年、東大阪市で「Cashe」という名称の美容室をオープンしたAは、商標登録をしていませんでした。

平成13年、大阪市で「Caché」という美容室をオープンしたBは、平成23年9月に「Cache」(標準文字)の商標登録をしました。

平成23年1月、Bは、Aの店名がBの商標権を侵害しているので、店名を変えるように伝えたところ、Aは店名を「aisé」に変更しました。

その後、BはAに対して損害賠償請求等をするために裁判を起こしました。

(大阪地判・平成25年1月24日Westlaw Japan 2013WLJPCA01249009)

裁判所は、平成23年9月にBの「Caché」が商標登録されてから、平成24年1月までの4カ月間、Aが「Cashe」を使っていた点について、1カ月5000×4カ月=2万円を損害として認めました。

(Aが店名を「aisé」に変更した後は、商標権の侵害はないとしました)

Aに経済的なダメージは少ないですが、あとからオープンしたBに先に商標登録をされてしまったことによってお店の名前が使えなくなったことが何より痛いですね。

このケースは、商標登録の重要性を示すものとして知られています。

商標登録にまつわる基礎の法律知識。弁護士が解説する連載「サロン六法」、美容室の法律。

実際に登録してよかった!あるオーナーの声

あるオーナーは、都内で人気のサロン名を商標登録していたおかげで、同じ名前で出店しようとした他サロンに対し商標権に基づいて同じ店名を使用をしないように求めることができました

また、M&Aを検討する際、「商標登録済」という点がブランド価値として高く評価されたとのことです。

商標登録は、単なる「名前の保護」にとどまらず、経営上の大きな武器になります。

さいごに

今回は「美容室の商標」について解説しました。

お店の名前やロゴは、お客さまからの信頼の証であり、大切な経営資源です。

「うちは個人店だから関係ない」と思わずに、ぜひ「守る」視点を持ってみてください。

ご自身のブランドをしっかり守って、より安心して経営していきましょう。

それではまた来週!

松本隆弁護士( 横浜二幸法律事務所)

松本 隆

弁護士/横浜二幸法律事務所・パートナー

早稲田大学法学部、慶応義塾大学法科大学院卒業。2012年弁護士登録(神奈川県弁護士会)。企業に寄り添う弁護士として労働問題を多く扱っており、交通事故や相続にも精通している。また、美容師養成専門学校において「美容師法」の講義を担当しており、美容業界にも身を置いている。社交ダンスの経験も豊富であり、メイクやヘアスタイルにも詳しい。2021年にはメンズ美容のモニターとして100日間チャレンジを行うなど、メンズ美容の重要性も説いている。「髪も肌もボディもケアさえちゃんとすればアンチエイジングは必ずできる」というのがモットー。

横浜二幸法律事務所
▽公式サイト=http://y-niko.jp/
▽TEL=045-651-5115

監修・執筆・イラスト/松本隆(弁護士)

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