弁護士の松本隆さんによる連載『ヘアサロン六法』。
第58回は労働審判を取り上げます。
美容専門学校で美容師法の講義を担当している松本さんが、軽妙なトークとイラストでとことんわかりやすく解説します!
こんにちは!弁護士の松本隆です。
この連載では「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく」をモットーに、あえて内容をシンプルにしてお送りしています。
事例から見てみましょう。
私はXサロンの経営者でAといいます。
先日退職したはずの従業員が不当解雇で労働審判を起こしたようで、私に書類が届きました。
裁判と労働審判は何が違うのでしょう。
どうしたらいいのでしょうか?
労働審判は、労働者と事業主の間に起きた労働関係のトラブルを「早く」(迅速)、「柔軟に」解決するための裁判所による手続です。
労働審判の最大の特徴は、何といっても「スピード」。
通常の裁判が1~2年かかるのに対し、労働審判は原則3回以内で3カ月程度で終わる仕組みです。
裁判官1名と「労働審判員」(使用者側と労働者側1名ずつ)という労働の専門家が、事実認定と解決案の提示を行います。
美容室業界では、以下のようなトラブルが労働審判の対象として多く見られます。
・残業代の未払い
営業後の練習時間が労働時間と認定されるケースもあり、未払いが問題化しやすいです。
・不当解雇
特に勤務態度や能力を理由にした解雇が、適正な手続を経ていない場合に問題となります。
・雇用形態の誤解(業務委託契約なのに実態が雇用契約)
形式が「業務委託契約」であっても実態が「雇用」であれば労働者性(=労働者であること)が認定され、労働法が適用されることになります。
1.申立書の送達
管轄の地方裁判所から労働者が作成した「労働審判申立書」が届きます。
第1回期日の通知も添付されています。
2.答弁書(主張)の準備・提出
受け取った日から「約2週間以内」に、裁判所に対し反論や自らの主張をまとめた答弁書を提出する必要があります。
これは裁判と比べると非常に早いスケジュールです…!
3.証拠の準備・提出
②と並行して、就業規則、タイムカード、雇用契約書、給与明細、メール、LINEのやり取りなど、こちらの主張を裏付ける資料を用意します。
4.第1回期日
第1回期日には、オーナー本人か代理人の弁護士が出頭し、話し合いが行われます。
(話し合いがまとまって「和解」が成立することになると第1回で終了することもあります)
このやりとりを第3回期日を限度に行います。
5.審判の終結
話し合いがまとまらない場合、裁判所が解決案(審判)を提示します。
異議申立てがなければ確定判決と同様の効力を持ちます。
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