
弁護士の松本隆さんによる連載『ヘアサロン六法』。
第57回はテナント契約を取り上げます。
美容専門学校で美容師法の講義を担当している松本さんが、軽妙なトークとイラストでとことんわかりやすく解説します!
目次
「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく!」

こんにちは!弁護士の松本隆です。
この連載では「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく」をモットーに、あえて内容をシンプルにしてお送りしています。
事例から見てみましょう。
私はXサロンの経営者でAといいます。
Xサロンの場所を移転しようと思い、これから賃貸借契約を結ぶところなのですが、オーナーさんから「①保証金を6カ月分入れてくれるなら、保証会社との契約はしなくてもいいです。でも、②保証金を3カ月分しか入れないなら、保証会社との契約はしてください」と言われました。
私としては、どちらの方法もとれるのですが、正直どちらが良い選択なのかがさっぱりわからないです。
みなさんはこういうとき、どうやって決めているのでしょうか?
保証金と保証会社で何が違うのでしょうか?

美容室の経営にあたって、店舗の賃貸借契約は避けて通れません。
そのとき、よく出てくる言葉が「保証金」と「保証会社」です。
仕組みもメリット・デメリットも違ってくるので、この記事では、納得して物件選びができるように「保証金」と「保証会社」について解説します。
保証金とは?
「保証金」とは、テナントが賃貸借契約時に貸主(オーナー)へ差し入れるお金です。
例えば、賃料の未払いや原状回復費用の支払いに備えるための「担保」です。
新型コロナウイルスが流行したとき、賃料が払えない会社は、保証金の一部を賃料に充てるということがありました。
契約終了時には、契約で定めた控除分を差し引いた上で返還されることが多いです。
メリット
・契約終了後に一定額が返還される可能性がある
・長く契約する場合は、保証会社に比べて出費が安く済むことがある
・経済力があるため、オーナーから信頼されやすい
デメリット
・数カ月分(サロンなどの内装が多い物件だと6~12カ月分になることも)の賃料相当のお金が必要になるため初期費用が高くなる
・資金が長期間戻ってこない
・一部が償却されてしまうことがある
・精算の際に金額のトラブルが起きる可能性がある(例:原状回復の範囲がどこまでか)

保証会社とは?
「保証会社」とは、借主の連帯保証人の役割をする会社です。
例えば、賃借人が家賃を滞納した場合などに、オーナーに対して保証会社が賃料の立替払いをします(その後、保証会社は借主に「求償」という形で請求します)。
最近は多くの店舗物件でも保証会社を利用することが一般的になっています。
メリット
・初期費用が安い
・長期間大金を預けなくて済むので他に資金を回すことができる
・連帯保証人が不要な場合が多く、手続きがスムーズに進む
・更新料を支払えば契約期間を延長できる
デメリット
・保証金と違って保証会社に払う保証料は返還されない
・更新料が発生することがある(年額制など)
・賃料を滞納すると代わりに払った保証会社から厳しい督促を受けることになる

