個人の破産申立てでは不動産の売却も?
代表者が会社の債務を保証している場合は、代表者も破産をすることになります。
そのとき、代表者が不動産を所有していれば、その不動産も売却することになります。
具体的には2つ、①破産手続前に売却する方法と、②破産手続後に裁判所が選んだ弁護士(破産管財人)が売却する方法があります。
どちらが適切かはケースによって異なるので、弁護士に相談して決めるといいでしょう。
ちなみに、不動産の売却代金がローン金額を上回る場合は、余剰分を「自由財産」としてある程度手元に残すことができるのですが、金額としては100万円弱です。
「え?手元にお金を残すことができるの?」と驚かれる方も多いのですが、比較的認められやすいので、生活の立て直しに有用です。
破産申立てをした後はどうなるの?
裁判所は「破産管財人」という破産のための財産の管理・処分を行う人を選びます。
これは弁護士が行います。
郵便物はすべて弁護士にいったん送られることになり、財産隠しや不正がないかもチェックされることになります。
不正の手がかりが見つかると手続きは長引くことになります。
(破産管財人は調査を十分に行い、場合によっては「否認権行使」の裁判を起こすこともします。そうなれば手続きが終わるのに1年、2年…とかかることになります)
手続きの流れとしては、一般的には「債権者集会」という破産管財人が裁判官に報告する裁判期日が2~3カ月に1度のペースで開かれ、財産の処分状況等の報告がされます。
この期日には経営者の方と弁護士が一緒に出頭します。
債権者の方も来ることがあります。
早ければ1~2回で終わりますが、不動産の売却やテナントの物品の処分がある場合には3回、4回とかかることも多くあります。

破産手続が終われば債務はゼロに!
財産の処分がすべて終われば、破産管財人の業務が完了となります。
会社の法人格は消滅するので会社はなくなります。
個人の債務はゼロになります。
昔のように、会社の代表者になれなくなるということはありませんので、文字通りゼロからやり直すという意味で債務をゼロにするのは有用な方法です。
過去に破産をした社長が成功するというのもよく聞く話ですので、今や破産はネガティブなものではなく、再出発のための前向きなシステムだと考えています。
ただ、今回の事例のXサロンのAさんがBさんに貸していたお金はほとんど戻ってこないと思います。
(破産手続の最後に「配当」が債権者に出されることがありますが、ほとんどのケースが雀の涙くらいの金額です)

さいごに
今回は破産の話でした。
詳細をご紹介することはできませんでしたが、弁護士への依頼が必須の分野です。
倒産で悩んでいるご友人がいたら、「まだ倒産するか決まっていない」という段階でも早めにご相談に行くのがいいと思います。
ではでは、また次回!

松本 隆
弁護士/横浜二幸法律事務所・パートナー
早稲田大学法学部、慶応義塾大学法科大学院卒業。2012年弁護士登録(神奈川県弁護士会)。企業に寄り添う弁護士として労働問題を多く扱っており、交通事故や相続にも精通している。また、美容師養成専門学校において「美容師法」の講義を担当しており、美容業界にも身を置いている。社交ダンスの経験も豊富であり、メイクやヘアスタイルにも詳しい。2021年にはメンズ美容のモニターとして100日間チャレンジを行うなど、メンズ美容の重要性も説いている。「髪も肌もボディもケアさえちゃんとすればアンチエイジングは必ずできる」というのがモットー。
横浜二幸法律事務所
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▽TEL=045-651-5115
監修・執筆・イラスト/松本隆(弁護士)
