
弁護士の松本隆さんによる連載『ヘアサロン六法』。
第53回は少額訴訟を取り上げます。
美容専門学校で美容師法の講義を担当している松本さんが、軽妙なトークとイラストでとことんわかりやすく解説します!
目次
「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく!」

こんにちは!弁護士の松本隆です。
この連載では「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく」をモットーに、あえて内容をシンプルにしてお送りしています。
事例から見てみましょう。
私はXサロンの経営者でAといいます。
最近、知人のBさんに貸した30万円とバイク(価値は20万円)を返してほしいのですが、弁護士さんからは「弁護士に裁判を依頼するには金額が小さい。少額訴訟でも起こしてみたらどうか」というアドバイスをもらいました。
裁判なんてやったことがないのですが、少額訴訟だったらできるのでしょうか。

少額訴訟の裁判は1日で終わる?
みなさんは「裁判の期間がどのくらいかかるか」のイメージは湧きますか?
私の経験談にすぎませんが、
・裁判を起こすための書類(訴状)を出した後、裁判期日が決まるまでに2~3カ月
・裁判期日(1回目)はほとんど進行しないので、進み始めるのは2回目からなのですが、2回目は2カ月後(ここで相手からの反論が出てくる)
・相手の反論に対してこちらが主張を出す3回目がさらに2カ月後
・お互いに2回ずつ主張をするまでには4回目、5回目まではかかるのでさらに4カ月(2カ月×2)
という感じなので、1年くらいはすぐに経ってしまうのです。
半年で終わることなんてほとんどないです。
ちなみに、私が経験した裁判で一番長いものは「7年」です。長い…
今回ご紹介する少額訴訟は、うまくいけば「1回の裁判期日だけ」で裁判が終わる手続きです。
少額訴訟でできることは?
少額訴訟は、「少額」とついているだけあって、60万円以下の金銭の請求の裁判で使えます。
今回のAさんによる「30万円の貸金」の請求は、60万円以下の金銭の請求という条件を満たすので少額訴訟が使えるのです。
ただ、「バイク(価値は20万円)の返還」の請求は「金銭の請求」ではないので、少額訴訟は使えないのです。
上でも書きましたが、少額訴訟は1回の裁判期日で終わるので、うまくいけば3~4カ月で裁判が終わることになります。
ただ、珍しい決まりがあり、「1人年間10回まで」というルールがあります。
貸金業者などが何百回も少額訴訟を起こせてしまうと、乱発されて裁判所の人が困ってしまうからですね。
そんなわけで訴状には「今年で何回目」か利用回数を書く必要があります。

