【サロン六法】48.知っておきたい!離婚の基礎知識~後編(面会交流、親権等)~

特集・インタビュー
【サロン六法】48.知っておきたい!離婚の基礎知識~後編(面会交流、親権等)~

弁護士の松本隆さんによる連載『ヘアサロン六法』。

第47回は前回前々回に引き続き、離婚にまつわる法律知識を取り上げます。

美容専門学校で美容師法の講義を担当している松本さんが、軽妙なトークとイラストでとことんわかりやすく解説します!

「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく!」

松本隆弁護士( 横浜二幸法律事務所)

こんにちは!弁護士の松本隆です。

この連載では「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく」をモットーに、あえて内容をシンプルにしてお送りしています。

事例から見てみましょう。

※前回、前々回と同様です!

私はXサロンの経営者でAといいます。今回の相談は、個人的な離婚についてです。

配偶者Bとの離婚を考えていますが、何が問題になるかわからないので教えてほしいです。

結婚生活20年、年齢は私Aも配偶者Bも45歳、子どもは18歳のCと10歳のDがいます。

収入は、私Aは、サロン(株式会社)の役員報酬が額面で600万円で、配偶者は、会社員で額面で300万円です。

貯金は、私Aは1000万円で、配偶者Bは500万円くらいと聞いています。

不動産は、結婚当初に購入した私名義のマンション(現在の価値は3000万円)があり、現在もローンを支払っています。ローン金額は月10万円で残ローンは1500万円ほどです。

生命保険は、解約返戻金が100万円ほどです。

子どもの親権は欲しいですが、別居する場合は子どもの養育はあちらになると思います。

離婚にまつわる基礎の法律知識(前編)。弁護士が解説する連載「サロン六法」、美容室の法律。

前回のあらすじ

前回は

①離婚するかどうか

②婚姻費用・養育費

③財産分与

④面会交流

⑤年金分割

⑥親権

のうち、前編で①②、中編で③、今回は「④面会交流」、「⑤年金分割」、「⑥親権」です!

面会交流ってどうするの?

子どもの世話(監護)をするのは親権を持つ親(親権者)です。

親権を持たない親は、定期的に子どもと面会交流をすることができるのです。

相手が面会に応じてくれない場合に備えて、離婚の際は、面会交流の取り決めはしっかりしておきましょう。

月に何回、何曜日に何時から何時、どこで会うか等をできるだけ細かく決めた方がよいです。

面会交流は「子どもの福祉のため」(=子どもの幸せのため)に認められるものですから、調停や裁判では「全く会う権利がない」と言われることはまれです(DVの場合などは除きます)。

ケースによっては第三者機関を利用することが条件に挙がることがあります。付き添いや子どもの受け渡しの援助をしてくれますが、利用する場合は費用がかかるので注意しましょう。

全国の第三者機関は以下の一覧表から調べてみて下さい。

>> 「親子交流支援団体等(面会交流支援団体等)の一覧表」(法務省民事局の公式サイト、令和7年1月更新)

なお、離婚後に急に会わせてもらえなくなった場合は、面会交流調停を申し立てれば認められる可能性が比較的高いです。

調停では、調停委員が双方から別々に話を聞く形で進行しますが、会う頻度や時間について話し合いをします。また、子どもの意向を「調査官」(家庭裁判所調査官)が調査をすることもあります。「調停」で話がまとまらなくても、次のステージの「審判」で面会交流を認められることが十分にあります。

離婚にまつわる基礎の法律知識(後編・面会交流、親権等)。弁護士が解説する連載「サロン六法」、美容室の法律。

年金分割

婚姻期間中の「厚生年金」と「共済年金」を分割することです。

これをしておかないと、特に妻側は老後の年金が少なくなってしまうことがあります。

最初のステップは「年金分割のための情報通知書」をゲットすることなのですが、日本年金機構の窓口に行く必要があります。

どこでもいいわけではなく、ご自身の管轄の窓口に行く必要があります。

管轄は以下のリンク先から調べましょう。

>> 「全国の相談・手続き窓口」(日本年金機構の公式サイト)

「年金分割のための情報通知書」をゲットするためには①マイナンバーか基礎年金番号がわかるもの、②戸籍謄本、③情報提供請求書が必要です。

②戸籍謄本は役所で取得します。

③情報提供請求書は以下からダウンロードして印刷してみて下さい。

>> 情報提供請求書(日本年金機構の公式サイト)

離婚調停の際には年金分割を忘れることはほとんどないのですが、協議離婚の際は見落としがちなので、注意しましょう。

離婚にまつわる基礎の法律知識(後編・面会交流、親権等)。弁護士が解説する連載「サロン六法」、美容室の法律。

親権はウワサ通り男性が不利?

裁判所が親権を決める場合、「母性優先の原則」があるので、8:2くらいの割合で母親が有利だと言われています。

仮に妻側が不貞行為をした場合でも、親権が妻側に決まるということもあります。

親権を決める際の考慮要素はたくさんあります。

子どもへの影響(なるべく現状を変えない方がよいという観点から判断します)

・子どもの年齢、性別、発育状況(「母性優先」なので子どもが幼いと母親が有利です)

収入や財産状況(お金持ちだったら絶対に勝つわけではありませんが、子どもの生活を支えられるかは重要な要素です)

・補助者の有無(祖父母も子供の面倒が見られる場合はプラスに働きます)

・健康状態(健康な方が当然有利です)

・住環境(子どもの生活のしやすさ、通学のしやすさも考慮されます)

・きょうだいが別れることがないか(きょうだい不分離の原則といいます)

・子どもの意思(15歳以上だとほぼ尊重されます

「子どもの意思」について、裁判所は、最近は小学校低学年の子の意見も参考にするようになってきています。近年の裁判例で「9歳」の子の意思を尊重したものがあります(もちろんすべてのケースではありませんが)。

なお、「共同親権」の制度が「令和8年5月24日」から始まるのですが、また別の機会にお伝えしたいと思います。

離婚にまつわる基礎の法律知識(後編・面会交流、親権等)。弁護士が解説する連載「サロン六法」、美容室の法律。

さいごに

今回は3回にわたり、離婚シリーズをお届けしました。

離婚をしようか日々悩んでいる方は、「離婚しよう!」と思ったときに弁護士さんに相談するのでは少し遅いです。

「将来離婚するかもしれない」と感じた時点で法的な知識をつけておけば日々の過ごし方が変わるので、すぐに弁護士に相談しましょう。

みなさまの悩みが少しでも軽くなりますように。

それでは次回もよろしくお願いいたします!

松本隆弁護士( 横浜二幸法律事務所)

松本 隆

弁護士/横浜二幸法律事務所・パートナー

早稲田大学法学部、慶応義塾大学法科大学院卒業。2012年弁護士登録(神奈川県弁護士会)。企業に寄り添う弁護士として労働問題を多く扱っており、交通事故や相続にも精通している。また、美容師養成専門学校において「美容師法」の講義を担当しており、美容業界にも身を置いている。社交ダンスの経験も豊富であり、メイクやヘアスタイルにも詳しい。2021年にはメンズ美容のモニターとして100日間チャレンジを行うなど、メンズ美容の重要性も説いている。「髪も肌もボディもケアさえちゃんとすればアンチエイジングは必ずできる」というのがモットー。

横浜二幸法律事務所
▽公式サイト=http://y-niko.jp/
▽TEL=045-651-5115

監修・執筆・イラスト/松本隆(弁護士)

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