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ヘアサロン六法47.知っておきたい!離婚の基礎知識~中編(財産分与)~

弁護士の松本隆さんによる連載『ヘアサロン六法』。

第47回は前回に引き続き、離婚にまつわる法律知識を取り上げます。

美容専門学校で美容師法の講義を担当している松本さんが、軽妙なトークとイラストでとことんわかりやすく解説します!

「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく!」

こんにちは!弁護士の松本隆です。

この連載では「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく」をモットーに、あえて内容をシンプルにしてお送りしています。

事例から見てみましょう。

※前回と同様です!

私はXサロンの経営者でAといいます。今回の相談は、個人的な離婚についてです。

配偶者Bとの離婚を考えていますが、何が問題になるかわからないので教えてほしいです。

結婚生活20年、年齢は私Aも配偶者Bも45歳、子どもは18歳のCと10歳のDがいます。

収入は、私Aは、サロン(株式会社)の役員報酬が額面で600万円で、配偶者は、会社員で額面で300万円です。

貯金は、私Aは1000万円で、配偶者Bは500万円くらいと聞いています。

不動産は、結婚当初に購入した私名義のマンション(現在の価値は3000万円)があり、現在もローンを支払っています。ローン金額は月10万円残ローンは1500万円ほどです。

生命保険は、解約返戻金が100万円ほどです。

子どもの親権は欲しいですが、別居する場合は子どもの養育はあちらになると思います。

前回のあらすじ

前回は

①離婚するかどうか

②婚姻費用・養育費

③財産分与

④面会交流

⑤年金分割

⑥親権

のうち、①②を取り扱いましたが、今回は「③財産分与」です!

(後編で④⑤⑥を扱います)

財産分与っていうけど…財産をどうやって分けるの?

財産分与とは、結婚生活で夫婦で作った「共有財産」を2分の1ずつ分けよう、というものです。

これに対して、結婚前から持っている財産や相続で手に入れた財産は「特有財産」であり、分ける必要がないのです。

ですので、「共有財産」か「特有財産」かが争いになるポイントになります。

夫側からの主張をもとに検証してみよう!

【預貯金】

「私(夫)が働いて稼いだお金で500万円貯金したんだから、これは私(夫)のものだ!」

→残念ながら違います。妻の支えがあって働けていたのですから、財産分与の対象になり、250万円ずつ分けることになります。

【不動産】

「結婚後に買った不動産は私(夫)名義だ!ローンも毎月私が働いて払っているんだから、不動産はすべて私(夫)のものだ!」

→結婚後に購入した不動産は、妻の支えがあって働いたお金でローンを支払えていたのですから、不動産の名義がすべて夫名義でも財産分与の対象になり、半分ずつ分けることになります。

「結婚前に不動産は買ったからすべて私(夫)の特有財産ですよね?」

結婚前に一括で買っていたらそのとおりですが、ローンで払っている場合、妻の支えがあって働いたお金でローンを支払えていたのですから、婚姻期間中のローン支払分は財産分与の対象になります。

【投資、株】

「私(夫)が働いて稼いだ100万円を元手に投資をして1000万円に増やしたんだから、これは私(夫)のものだ!」

→投資をするもととなったお金が結婚生活中に稼いだお金なら、結局は妻の支えがあって手に入った元手ですから財産分与の対象になり、500万円ずつ分けることになります。

【保険】

「私(夫)が働いて稼いだお金で保険料を払ったんだから、これは私(夫)のものだ!って言いたいけど、この流れだとダメですかね?」

→保険料は働いたお金で払っていたのであれば、妻の支えがあって働けていたのですから財産分与の対象になり、解約返戻金を半分ずつ分けることになります。

【相続】

「私(夫)の親から相続で5000万円もらったが、これは私(夫)のものだ!」

→そのとおりです。相続でもらった財産はすべて特有財産ですので分けなくてよいです。

【交通事故の賠償金】

「私(夫)は交通事故で後遺症になって、最終的に1000万円もらったが、これは私(夫)のものだ!」

→後遺症になった場合、「逸失利益」は働けなくなった収入を補填するものなので、共有財産として財産分与の対象になります。他にも「休業損害」は働けなかった分の収入を補填するものですから、共有財産として財産分与の対象になります「慰謝料」は本人の精神的苦痛に対して払われるものなので特有財産として財産分与の対象になりません

>> 今回の事例ではどうなる?

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