成長に大切なのはマネジメント
―― 鎌形さんが独立したときは「AI TOKYO」をどんなサロンにしたいと思っていましたか? 目標とする規模も考えていたのでしょうか?
鎌形 とにかく大きくするつもりでした。年商でも店舗数でも知名度でも、何かひとつでもよいので「OCEAN TOKYO」を抜くことが目標だったんです。あとは、昔ながらのいいものは残しつつ、今っぽいサロンにするのが目標でした。
―― 鎌形さんはマネジメントを大事にされていますよね。
鎌形 マネジメントは大事です。美容室って人じゃないですか。サロンの成長速度は、従業員の人数に依存します。自分からやる気になって、仕事を楽しんでくれるようになるのが一番強いと思っているので、そういうサロンにしようと心がけました。そのためには、本部機能が必要だと気づいたんです。
―― 「AI TOKYO」の本部機能はいつからあったのでしょう?
鎌形 実は初期からありました。1期目が終わった頃に、財務の人を入れたり、総務の社員を一般募集したりして、本部機能を強化しました。
最初から独立を考えていた
―― 経営について深く考えていらっしゃいますが、いつ頃から独立を考えていたのですか?
鎌形 最初からです。新卒でOCEAN TOKYOに入るときから独立することを考えて選びました。
樺島 OCEAN TOKYOを知ったのはいつ頃でした?
鎌形 1店舗目がオープンした時からです。僕は高校3年生でした。初めてサロンに行った時、その後、僕の師匠になる中村トメ吉さん(元・共同代表、現・GOALD代表)に出会いました。僕が入社したのは開店から2年目か3年目の頃ですね。
樺島 OCEAN TOKYOで働いていた時はどんなことを意識していたんですか?
鎌形 社長の話すことを聞いて自分が同じ立場になったらどう話そうかと考えたりしていました。トメ吉さんに営業、マネジメント、人事など、運営に必要な部署を全部経験させてもらって。これが大きかったですね。
―― 鎌形さんは大人気サロンで最速のスタイリストデビューを飾ったと評判でしたよね。
鎌形 だいたい5、6年かかる人が多かったのですが、僕は2年でデビューしました。当時はほぼ寝ていません。朝早くから夜遅くまで、あらゆる練習をみんなの5倍やっていました。
樺島 美容師になりたいと思ったきっかけを聞いてもいいですか?
鎌形 中学2年生で初めて美容室に行って、シンプルにカッコいいと思いました。イケてるな、モテそうだなって。美容師という職業をよく知らなかったのですが、生まれて初めて見たときに直感で「これを仕事にしたい」と思ったんです。
その時、お客さんのおばあちゃんが美容室を出るときに「いつもありがとうね」と言っていたのが心に残りました。お金をもらっている立場なのに、目の前で感謝される仕事ってあまりないですよね。自分たちの技術でお客さんを素敵に仕上げてそれを喜ばれる。それがいいな、と思いました。
サロン出店の新しいスタンダードに
―― 鎌形さんの素敵なきっかけを聞かせていただきましたが、樺島さんはなぜ今の事業を始めたのですか?ビューティガレージの取締役を務めながら、2017年にグループ企業としてBGパートナーズを設立したのですよね?
樺島 サロンを経営するお客さまを総合的にサポートするというのがビューティガレージのビジョンです。物販を中心に、物件や内装や集客などをお手伝いしてきましたが、ファイナンスサポートはありませんでした。資金面で出店を断念している方がけっこういらっしゃるので、不動産に加え、資金面もサポートすることでお客さまのお役に立てるのではないかと考え、BGパートナーズを立ち上げたのが始まりです。
―― 美容業界でリース業を始めたきっかけは?
樺島 出店の初期費用は高額です。居抜き物件にして出費を抑えても、高額の保証金や機器の入れ替え費用が足りずに出店できないという方もいます。そこは僕たちが解決すべきなんじゃないか。そう考えて、「サロンまるごとサポート」という事業の中で「店舗まるごとリース」や「内装・設備リース」「保証金フリープラン」を始めました。
鎌形 自分がやっていることを自分で言うのもあれですが、自己資金による出店とリースを利用した出店を組み合わせて最速スピードでお客さまに価値を提供していくことはすごく優秀な経営判断だと思うんです。でも、美容業界はかっこつけたい感が強い業界でもあるので、こういうお金の話はなかなか表に出ません。
今、僕たちが注目されているからこそ、僕たちはこういう方法で出店している、ということを伝えるべきだと思っています。「店舗まるごとリース」を知らないから活用していないサロンの経営者も多いと思うのですが、どう考えても便利ですからね。これがお店を出したい若い人にとってのスタンダードになればいいと思うし、そのことが業界の活性化にもなると思います。
樺島 ありがとうございます。元々は出店をスピーディーに展開したい方を意識して作ったのですが、最近はコロナも挟んで金融機関の融資の審査が厳しくなったようで、新規開業の方にも多くご利用いただいています。
鎌形 特に物件は生モノなので、タイミングが大事になりますからね。
樺島 鎌形さんは若くしてチャレンジされて、独立時も苦労されていました。でも、粘り強く諦めないで独立を果たしたから、今があるんですよね。考え方がすごいんです。
―― 挑戦を続ける次世代の経営者のお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に「AI TOKYO」というサロン名の由来を教えてください。
鎌形 アイ トーキョーのアイは、そのまま「愛」です。創業メンバーみんなで集まって「店の名前はどうする?」と考えている時、「美容師にとって一番大切なものって何だっけ?」という話が出て。「売れている人って人間性がいい人だよね」「人間性がいいって、お客さまのために何ができるか考えて行動する人だよね」という話になり、人間にとって一番大事な感情は「愛じゃね?」という結論にたどりつきました。愛が大事だから「AI TOKYO」。仲間を増やし、最速で80店舗を目指します!
鎌形 諒
AI TOKYO代表
千葉県出身。新卒で「OCEAN TOKYO」に就職し、当時で最速の2年でスタイリストデビューを果たす。2020年に退職。同年、若干24歳で株式会社P.Bを設立して「AI TOKYO」をオープンする。モットーは「良い美容師である前に良い人間であれ」。
樺島義明
BGパートナーズ代表取締役社長、ビューティガレージ取締役(執行役員兼務)
1997年3月に中央大学商学部を卒業。広告代理店で営業職を務めた後、2003年4月、ビューティガレージ取締役に就任。マーチャンダイジンググループ管掌役員等を経て、2017年1月、ビューティガレージグループの株式会社BGパートナーズの代表取締役に就任し、店舗まるごとリースや不動産仲介、M&A仲介等を手がけている。
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撮影/横山翔平