【サロン六法】34.裁判員裁判って?従業員は行かせるべき?(前編)

特集・インタビュー
【サロン六法】34.裁判員裁判って?従業員は行かせるべき?(前編)

従業員が裁判員裁判に選ばれたらどうしたらよいでしょう?

弁護士の松本隆さんによる連載『ヘアサロン六法』。第34回は、裁判員裁判について取り上げます。

美容専門学校で美容師法の講義を担当している松本さんが、軽妙なトークとイラストでとことんわかりやすく解説します!

「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく!」

松本隆弁護士( 横浜二幸法律事務所)

こんにちは!弁護士の松本隆です。

第34回は「裁判員裁判って?従業員は行かせるべき?(前編)」です。

事例から見てみましょう。

私(Y)が経営するサロンの従業員のAさんが裁判員裁判に呼ばれたのですが、Aさんはフルタイムの従業員で働いてもらいたいので、裁判員裁判に行かせたくありません。

そもそも裁判員裁判自体が何かもよくわからないのですが、行かせるべきでしょうか?

さて、裁判傍聴ツアーがあったこともあり、刑事事件のお話が続いております。

今回は「いつか選ばれるかもしれない裁判員裁判のお話」をお伝えします!

裁判員裁判を担当する確率は・・・!?

裁判員裁判は、市民が裁判員として「重い犯罪」を犯した人を裁くというシステムです。

裁判官が3人、裁判員(市民)が6人で合計9人が刑事裁判に臨みます。

令和5年の統計によれば、1年間で地方裁判所の裁判は「約65000件」あります。

そして、裁判員裁判は「約1000件」(1.5%程度)しかありません。

約1000件のうち、上位5つは

1位「強盗致傷罪」(約260件)

2位「殺人罪」(約200件)

3位「覚醒剤取締法違反」(約120件)

4位「現住建造物等放火罪」(約100件)

5位「不同意わいせつ致傷罪」(約90件)

です。

強盗致傷罪よりも重い犯罪が対象ですので、単なる「強盗罪」や「不同意性交罪」は裁判員裁判対象事件ではありません。

そして、この1000件に当たって裁判員になれる可能性は、なんと「1万6600人に1人」です(令和5年データ)。

確率にすると「0.006%」です!

そう、ものすごい確率なのです。

裁判員は日当がもらえます!さて、いくらでしょう?

意外と知られていないのが「日当」です。

裁判員裁判に参加する裁判員には日当として約1万円が支払われます。

(大学や専門学校の講義でこの話をすると「行く!行く!」という学生が多いです(笑))

1日あたり5~6時間は裁判を見ることになるので妥当な金額ですね。

(※昼休みもあります。17時には帰れます)

裁判員裁判の多くは「5日」「6日」になることが多いので、多くの場合、日当は5~6万円になります。

ちなみに、交通費も別途支給されます。

あと、裁判員候補者の選任期日に来る場合も日当は約8000円が支払われます。

美容室の従業員が逮捕。弁護士が解説する連載「サロン六法」、美容室の法律。

裁判員裁判に参加したい従業員は尊重してね!

裁判員裁判に参加するために仕事を休むことは労働基準法7条で認められています。

経営者のYさんは従業員Aさんに行かせたくないと思ってもダメです。

Aさんが裁判員裁判に行きたいのに行かせなかった場合は罰則として、会社に6か月以下の懲役または30万円以下の罰金を科せられることがあります(労働基準法119条1号)。

さらに、従業員Aさんが仕事を休んで裁判員に参加した場合に、経営者のYさんが、Aさんを解雇したり配置転換したりして不利益な扱いをしてはいけないのです(裁判員法100条)。

ですので、サロンとしては、従業員が裁判員で休む場合に備えて、年次有給休暇特別休暇(裁判員休暇)を与える規定を就業規則で定めておく必要があります。

(ただし、休暇を与えればよく、給料が出る有給休暇にする義務まではありません

みなさんのサロンの就業規則は対応していますか?

>> 【ヘアサロン六法】13.就業規則 -美容室経営者の法律相談

美容室の従業員が逮捕。弁護士が解説する連載「サロン六法」、美容室の法律。

さいごに…性犯罪で重い判決を出したがるのは何歳の男性・女性?

さて、問題です。

どの「性別・年齢」の方が「性犯罪」で重い刑の意見を出すでしょうか?

検察官と弁護人は「理由なし不選任」といって、「裁判員にしたくない人を外す」という権限があります。

(選任されたくない人は、おそらく金のジャージで裁判所に行けば「理由なし不選任」になると思われます(※冗談です。裁判所にはきちんとした格好で行って下さいね。))

当初、検察官は「性犯罪に厳しいのは同年代の若い女性だろう」と考え、「若い女性を裁判員にたくさん入れて、50代60代のおじさんたちは『理由なし不選任』にして、厳しい判決をもらえるようにしよう」と考えていました。

しかし、フタを開けるとびっくりです。

若い女性の裁判員たちは被害者の女性に比較的厳しい意見を述べたのでした。

そして、重い意見を出したのは50・60代男性だったのです。

「うちの娘にこんなことがあったら…!!!」と感情移入して重い刑の意見を述べたのです。

たしかに、言われてみればなるほど、という感じですね。

今回はみなさんが参加する可能性がある「裁判員裁判」についてお話させていただきました。

次回も続きます!

松本隆弁護士( 横浜二幸法律事務所)

松本 隆

弁護士/横浜二幸法律事務所・パートナー

早稲田大学法学部、慶応義塾大学法科大学院卒業。2012年弁護士登録(神奈川県弁護士会)。企業に寄り添う弁護士として労働問題を多く扱っており、交通事故や相続にも精通している。また、美容師養成専門学校において「美容師法」の講義を担当しており、美容業界にも身を置いている。社交ダンスの経験も豊富であり、メイクやヘアスタイルにも詳しい。2021年にはメンズ美容のモニターとして100日間チャレンジを行うなど、メンズ美容の重要性も説いている。「髪も肌もボディもケアさえちゃんとすればアンチエイジングは必ずできる」というのがモットー。

横浜二幸法律事務所
▽公式サイト=http://y-niko.jp/
▽TEL=045-651-5115

監修・執筆・イラスト/松本隆(弁護士) 編集/大徳明子

アイドット名古屋のスタッフ(STORES導入事例)
【注目記事】強いサロンの強い物販 アイドット、顧客データ× STORES で“売れる”を仕組み化(PR)

関連キーワード

注目キーワード

新着記事一覧   トップページ  
Top