「大きな変化は10年に一度は起きると想定してリスク管理をしている」と語るTRUTH(トゥルース)グループの天野雅晴(あまのまさはる)社長。同社もコロナ禍で大きな影響を受けたが、それでも前向きは姿勢は変わらない。天野社長の経営戦略とリスク管理について語っていただいた。
キャッシュで出店してリスクを減らす
── どのサロンもコロナ禍の頃は大変だったと聞いていますが、トゥルースではどのようなダメージがありましたか?
コロナが始まったとき、私たちもかなり打撃を受けました。店を閉めたわけじゃないんですが、お客さんが半分以上来なくなってしまったんです。それで、固定費を考えたら利益なんてほとんどなくなっちゃって、最初の3カ月で、1億5000万円ぐらいが消えちゃいましたからね。本当に厳しい状況でした。
そのときはダブルパンチで、私自身も脳梗塞になっちゃったんですよ。普段は強気なんですが、そのときばかりはさすがにキャッシュがなくなってしまって、「これは本当にやばいかもな」と思いました。全部を銀行に借りるわけにもいかないし、大変でした。
そこで「これからの出店はキャッシュでやろう」って。借り入れをしないで現金でやると大きな決断をしました。以降は、ほぼキャッシュで出店してます。
── 出店のスタイルをキャッシュに変えたことで、どんな効果がありましたか?
リスク管理がしやすくなりましたね。それまでは出店するたびに借り入れをしていたんですが、キャッシュでやることで借金がない分、経営が安定するんです。特にコロナ禍では、先が見えない不安があったので、少しでもリスクを減らしていこうという考えでした。
より効率的な経営を考える
── 他にどんな経営戦略の変更がありましたか?
考え方もだいぶ変わりました。コロナ前は、どんどん出店してどんどん拡大していこうという戦略でしたが、コロナ以降は、無理に出店を増やさないようにしました。それよりも、既存の店舗をリニューアルしたり、内部の仕組みを整えたりすることに重点を置きました。
例えば、店舗の広さ。以前は100坪くらいの大きな店舗を出していたんですが、今は20坪くらいのコンパクトな店舗にして、より効率的に経営できるようにしています。
── これからの時代、美容業界で生き残るために大事なことは何だと思いますか?
これからも美容業界も変わると思いますが、お客さまの「キレイになりたい」「可愛くなりたい」という気持ちは根本的に変わらない。だから、その期待にどれだけ応えられるか、いや、期待以上のことができるかが大事です。
経営者としては、何よりもリスクに備えること。コロナみたいな大きな危機は、10年に一度は必ず起きると私は考えています。東日本大震災もそうでしたし、次の危機がいつ来てもおかしくない。
── 天野社長は具体的に、どうやってリスク管理をしていますか
毎日の現預金をチェックすることを徹底しています。コロナ以前は、月末の大きな支払いだけを見ていたんですが、今は毎日のキャッシュフローを確認して、どんな事態が起きても対応できるようにしています。
毎日キャッシュフローを把握しておけば、何か異変があったときにすぐに気づけますし、コロナみたいに突然お客さんが来なくなることがあったとしても、すぐに対策を講じることができます。10年に一度は大きな危機に備えるために、日々の経営をより細かく見ていくことが重要だと思っています。
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取材/大徳明子 文/曽田照子 撮影/横山翔平