令和6年に創立26周年を迎え、千葉県を中心に美容室30店舗(うちフランチャイズ14店舗)を展開しているTRUTH(トゥルース)グループ。
順調に店舗数と業績を伸ばしている秘訣は人間関係だという天野雅晴(あまのまさはる)社長に、その「情熱経営」について語っていただいた。
ヤンチャな若者が信頼の大切さに気づく
天野社長の人生はハードモードでスタートした。幼少期に父親の会社が倒産、借金取りが家に押し寄せた。中学時代は不良として喧嘩に明け暮れ、高校に進学したが、なじめずにすぐ退学してしまった。
町の小さな美容室で見習いとして働き始めたが、なかなか真面目になれなかった。朝は遅刻ばかり、通勤中にバイクでスピード違反をして警察に追われたこともあったという。
そんな若者の人生に、ある日大きな試練が訪れた。父親の病気と母親の交通事故だ。
「親父が癌になって、母親も事故で障害を負って、それで、五体満足で働けることが、どれだけありがたいかを実感した」
若き日の天野社長の中に「本気で生きる」ことへの決意が芽生えた。仕事にもしっかり向き合うようになる。そして、20歳でスタイリストになり、28歳のとき地元の千葉で独立した。
「独立したときは大変でしたよ。店を辞めると半年前に言ったのに、全然辞めさせてくれない。独立してからも、材料の仕入れを邪魔されたり、従業員を引き抜いたと事実と違う陰口を叩かれてしまった」
元の店とは、裁判沙汰になりかけるほど揉めた。その原因を天野社長は「信頼関係がなかったせい」という。
「信頼関係がないから疑心暗鬼にさせて揉めてしまった。結局、独立って人間関係がすべてなんですよ。相手にどう信頼されるか、自分がどう信頼を築けるか」
独立当初は、「1日店を開けていてもほとんど誰も来ない日もあった」と苦労した。それが今のフランチャイズの考え方につながっている。
「だからこそ、今、フランチャイズのオーナーとは、独立時に揉めない。黒字の店舗を最初から引き継がせる、の2つを徹底してるんです」
表向きは豪快、実は慎重派?
そんな天野社長に対して「型破り」「豪快」といったイメージを抱いている人も多いだろう。確かに本人もそんな自己演出をすることもある。就職フェアに自前のフェラーリを持ち込んだりしたこともあった。
「成功するためには、失敗を恐れちゃいけない」
と天野社長は言う。しかし、同時にこう分析する。
「9割方失敗することを想定してから動く。失敗したときにどうリカバリーするかを常に考えてリスクをしっかり見極めてるからこそ、結果的に成功しているんだと思う」
さらに天野社長は「学ばないことが怖い」とも言う。
「経営者としてビジネスのことが『わかんない』じゃ済まされない。中卒だから、ビジネススクールにいっても、最初は分からないことが多くて本当に恥ずかしかったし、屈辱的な思いもした」
財務からビジネス戦略まで、経営者が知らなければならないことは多い。今も忙しい実務の合間を縫って本も月に数冊は読むという。
「社員が成長するためには、まず経営者が学ばないといけない。だからこそ、会社全体としても成長していける」と考えている。
一番大事な仕事は人材育成
天野社長が特に力を入れているのが人材育成だ。研修のため自社ビルには200人を収容できる広いセミナールームを作った。シャンプー台も複数あり、勉強会や研修が盛んに行われている。
「うちでは、勉強会に来ないスタッフは店長(フランチャイズオーナー)にはなれない。成長意欲のある人材しか求めていない」
技術はもちろん、接客、経営など美容室に必要なありとあらゆる研修を行っている。天野社長はビジネスの成功だけでなく、仲間と共に学び、成長し続けることを大切にしているからだ。
「能力とかそういうことももちろん大事だけど、一緒に頑張りたいという思いがないと続かない。だから実は最終的に『俺のこと好きかどうか』にかかってくる。それくらい信頼関係って重要だと思う。信頼できる仲間と一緒にやることで、長く続けられるし、それが会社の成長にもつながります」
情熱経営で成長を続ける
トゥルースは「情熱経営」をかかげている。
「経営者として、情熱があることが一番大事だと思う。情熱があるからこそ、学び続けることができる。情熱を持って学ばないと、成長はないと思っている。情熱があれば人もついてくるし、応援してくれる人も増える。それがトゥルースの経営の根本にあるんですよ」
天野社長の「情熱経営」は、単なるビジネスモデルではなく、生き方そのものかもしれない。
「自分がやっているのは、美容室というビジネスだけれど、根底にあるのは人との絆なんです。だから、経営も『人』が中心。正社員として社員の環境をちゃんと作ってあげたい。もちろん儲けないといけないけど、ただの金儲け集団にはしたくない。一緒に成長していくことで一生の仲間になれる」
天野社長の情熱経営の核には、常に「人」がいる。
「目指しているのは、ただの利益じゃなくて、未来を一緒に作っていくことなんです。これからも『一生の仲間』と一緒に未来を描いていきたいと思ってます」
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取材・編集/大徳明子 文/曽田照子 撮影/横山翔平