【サロン六法】33.従業員が逮捕されたら…(後編)

特集・インタビュー
【サロン六法】33.従業員が逮捕されたら…(後編)

従業員が逮捕された場合どうしたらよいでしょう?

弁護士の松本隆さんによる連載『ヘアサロン六法』。第33回は、前回に引き続き従業員の刑事事件ついて取り上げます。

美容専門学校で美容師法の講義を担当している松本さんが、軽妙なトークとイラストでとことんわかりやすく解説します!

「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく!」

松本隆弁護士( 横浜二幸法律事務所)

こんにちは!弁護士の松本隆です。

第33回は「従業員が逮捕されたら…(後編)」です。

事例から見てみましょう。

私(Y)が経営するサロンの従業員のBさんが窃盗罪で逮捕されたのですが、Bさんは仕事も手を抜くし、同僚にもパワハラ行為をするような人だったので、私は何も協力しませんでした。

しばらくしたら釈放されるかと思っていたのですが、刑務所に入ってしまったそうです。

こんなことはあるのでしょうか?

さて、今回も刑事事件のお話です。

「意外と知られていないけど刑事事件で知っておきたいお話」をお伝えします!

裁判所は前科・前歴がない人には優しい

前科・前歴という言葉をご存知でしょうか?

「前科」とは、過去に罰金、懲役、禁錮の判決を受けたことがあることをいいます。執行猶予がついた場合でも前科はつきます。

「前歴」というのは、警察や検察によって捜査されたことがあることをいいます。

例えば、不起訴処分(逮捕・勾留されて22日間警察に捕まっていたけれど、裁判にならずに出ることができた)、微罪処分(犯罪をして警察に連行されたけれど逮捕されずに帰してもらえた)などです。

刑事裁判では「前科・前歴がない」人には裁判所は優しいです。

刑事裁判で、裁判官・検察官・弁護人が一堂に会して厳かな手続を受けるという経験は、犯罪をしてしまった本人にとっては人生の中では忘れられない出来事になります。

ですので、刑事裁判を受けるのが初めての人は、これまでは何もしてこなかったのだから、「チャンスをあげよう」となります。

重くない犯罪なら、前科・前歴がない方であれば刑務所に行くことはほとんどありません。

美容室の従業員が逮捕。弁護士が解説する連載「サロン六法」、美容室の法律。

2回目からは厳しいです…!

裁判所は刑事裁判が2回目以降の人には厳しいです。

「あなた、前回の裁判ではもう2度とやらないって言ってましたよね?」と言う裁判官はよく見かけます。

そう言われると被告人の方も苦しそうに「そのときはそう思っていたのですが…」と言いながら、必死に弁解をします。

「執行猶予」という言葉は聞いたことがありますよね。

例えば、「懲役2年、執行猶予3年」というのは、「本当は刑務所に2年行かないといけないんだけど、もし犯罪を3年しないでいたら懲役2年はなしにしていいよ」というものです。

(そのまま犯罪をしないで3年が経過すると懲役2年はなくなります!)

しかし、もし執行猶予期間の3年の間に別の犯罪を犯して刑事裁判になってしまうと大変です。

今回が「懲役1年6か月」だとすると、前の懲役2年がプラスされて、「懲役3年6か月」になってしまいます…。

なお、執行猶予の3年が経過した後であっても、その後に犯罪をしてしまうと、2回目の執行猶予をもらえる確率はかなり低いので、刑務所に行くことになる可能性は非常に高くなります。

このように、裁判所は2回目以降の人にはとっても厳しいのです。

美容室の従業員が逮捕。弁護士が解説する連載「サロン六法」、美容室の法律。

従業員のBさんは何で刑務所に入ってしまったのか?

窃盗で初めて刑事裁判になった人が刑務所に行くことはほとんどありません(被害額にもよりますが)。

では、なぜBさんは刑務所に入ったのでしょう?

もうわかりますね。

「Bさんは過去に前科があった」のだと思われます。

ちなみに、有罪判決を受けてから10年経過すると初犯扱いになるため(これを「準初犯」といいます)、「Bさんは『10年以内』に犯罪をして有罪判決を受けていた」と推測できるのです。

もしかしたら「執行猶予期間中だった」のかもしれませんね。

美容室の従業員が逮捕。弁護士が解説する連載「サロン六法」、美容室の法律。

解雇はしてもいいの?

第4回で「解雇」を扱いましたが、解雇の条件は非常に厳しいです。

>> 【ヘアサロン六法】4.解雇

しかし、犯罪行為をした場合を懲戒解雇事由として就業規則に「重大な秩序違反があったら解雇するよ!」と定めておけば、解雇しやすくなります。

例えば、従業員がレジのお金を持って行った場合は、「サロン内での犯罪」(業務上横領罪)ですので、解雇は当然認められるでしょう。

今回のBさんはサロンと関係ないところで窃盗をしていたケース、つまり「サロン外での犯罪」ですが、Yさんとしてはこういうときには解雇したいとうことであれば、あらかじめ就業規則に「不名誉な行為をして会社の評価を毀損した場合」等と定めておけば、Bさんを解雇しやすくなるのです。

美容室の従業員が逮捕。弁護士が解説する連載「サロン六法」、美容室の法律。

就業規則、作っていますか?

第13回で就業規則の解説をしています。

>> 【ヘアサロン六法】13.就業規則

従業員が少ないサロンでは定めないことも多いのですが、今後サロンを成長させたいという経営者の方は早めに就業規則を作ってもいいと思います。

さいごに

次回も刑事事件に関連するお話。みなさんが参加する可能性がある「裁判員裁判」がテーマです!お楽しみに!

松本隆弁護士( 横浜二幸法律事務所)

松本 隆

弁護士/横浜二幸法律事務所・パートナー

早稲田大学法学部、慶応義塾大学法科大学院卒業。2012年弁護士登録(神奈川県弁護士会)。企業に寄り添う弁護士として労働問題を多く扱っており、交通事故や相続にも精通している。また、美容師養成専門学校において「美容師法」の講義を担当しており、美容業界にも身を置いている。社交ダンスの経験も豊富であり、メイクやヘアスタイルにも詳しい。2021年にはメンズ美容のモニターとして100日間チャレンジを行うなど、メンズ美容の重要性も説いている。「髪も肌もボディもケアさえちゃんとすればアンチエイジングは必ずできる」というのがモットー。

横浜二幸法律事務所
▽公式サイト=http://y-niko.jp/
▽TEL=045-651-5115

監修・執筆・イラスト/松本隆(弁護士) 編集/大徳明子

アイドット名古屋のスタッフ(STORES導入事例)
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