2021年に大阪からスタートし、わずか3年で全国に美容室15店舗を展開しているi.(アイドット)グループ。SNSやセルフブランディングに強い正社員サロンとして若手美容師からの人気が高く、オリジナル製品の販売にも力を入れている。
その強いサロンはどのように運営を効率化し、収益性を高めているのか。予約システム、POSレジ、キャッシュレス決済をひとつにまとめたデジタル支援サービスである「 STORES (ストアーズ)」を活用しているというi.NAGOYAの経営企画・総合プロデューサーである奈良氏に物販の強化やレジ締めの省力化などをうかがった。
目次
物販を個人任せにしない。本部主導で労働集約型から脱却
労働集約型と言われる美容業界。施術による売上が大半のため、スタイリストが退職すると売上が激減するという構造的な弱さがある。
「安定した雇用やサービス拡充のためには、物販(店販)を伸ばすことが必要です」と奈良氏は指摘する。
「でも、商品を営業するようで苦手だ、負担に感じるというスタッフも少なくない。だからアイドットでは、美容師個人に任せるのではなく、本部主導で強化していきます」
お客さまの予約履歴や購買履歴などの顧客データを活用し、本部からお客さまにメールなどで店販商品を案内する。そうして仕組み化すれば、美容師からお客さまへは「メールでご案内するので見てみてください」と伝えるだけで済み、施術に集中できる。
「サロンの予約情報とネットショップのデータを結びつければ、一人ひとりのお客さまに合った満足度の高い提案ができて物販が伸びる。現場の美容師に負担をかけることなく、労働集約型から脱却できる。この構想を実現できるサービスやシステムを探していて STORES にたどりつきました」
レジ締めを5分に短縮。日々の業務を効率化
物販強化のために導入した STORES だが、ネットショップとの連携は準備を進めているところ。いま利用しているのは「 STORES レジ」と「 STORES 予約」で、これによって日々の業務が楽になったという。
以前は手計算のスタッフもおり、レジ締めに20分以上かかることもあった。それが「 STORES レジ」の精算機能を使うことで、5分以内で完了するようになった。
iPad上で料金を計算し、お客さまへ合計金額を提示し、会計するという一連の流れを「 STORES レジ」ならシームレスに行える。
「一度電卓で計算し、再度レジに合計金額を打ち込んでお会計するといった二度打ちがなくなりました。会計作業が正確になり、効率化できています」
主体的に動くことがセルフブランディングにつながる
また、「 STORES 予約」は誰でも簡単に操作できるため、美容師自身が施術料金の変更を行うという。
「例えば、ジュニアスタイリストからスタイリストに昇格したら、本人が主体性をもって予約システム上の料金の設定を変更できます。メニューや料金をどうするかは美容師が自身をブランディングする上で重要なポイントです。だからこそ本人が『今すぐ手を打ちたい』という時に、スピーディーに変更できるシステムの操作性は大切だと考えています」
本部の作業を受け身で待つのではなく、現場の美容師自身が施術の内容や料金を考え、即座に動く。「管理側の私たちからしてもうれしい」と奈良氏は言う。
「アイドットの強みは、美容師の育成です。『SNSで情報発信を行い、予約ポータルサイトに頼らず、自分で集客できる美容師』『セルフブランディングと発信力を活かし、お客さまと関係を構築できる美容師』、一人ひとりがそうなれるようサポートしています」
SNSやセルフブランディングに長けた美容師を育てる正社員サロンとして支持を集めるアイドット。その考え方に合致したシステムというわけだ。
累計15万社導入の STORES 予約、決め手は一元管理と伴走サポート
予約・顧客・売上データを自動で統合できる STORES。ヨガやフィットネスなどのウェルネス業界を中心に、「 STORES 予約」の導入事業者数は累計15万社を超える。
今年からは美容サロン向けのサービス拡充を一層強化している。展示会やセミナーを通じて美容業界でも急速に知名度を上げているが、それでもアイドットの動きは速い。
「もともと物販強化のために、ネットショップ開設サービスを調べていたので『 STORES ネットショップ』は知っていました」と奈良さん。
その後、予約システムの「 STORES 予約」やPOSレジ「 STORES レジ」など複数のサービスを提供していると知り、 物販強化のために必要だった「サロンの予約情報とネットショップのデータ連携」はもちろんのこと「顧客情報の一元管理」ができるならと導入を決めた。
もうひとつ、伴走型の手厚いサポートも理由だった。
「名古屋は初出店のエリアだったので、スタッフは新卒か中途のオープニングスタッフというゼロからのスタート。STORES を使うのも全員初めて。それまでどのくらいシステムを触ったことがあるのか、一人ひとりのITリテラシーにも差がありました」と振り返る。
「それでも STORES 担当者の寄り添うような手厚いサポートもあり、今ではしっかり利用できています。スタッフからの相談に個別に回答してもらえるのがありがたいです。実際に運用するスタッフが理解していないと前に進んでいかないですし、その場で理解することが教育としても大事だと思っているので助かります」
また、「時間外の予約」などの新たな機能が続々追加され、MEO(マップエンジン最適化)などの提案があるのもうれしいポイントだという。
美容師を職業ではなく生業に
「私たちが一番大切にしているのが、美容師としての前に、いち個人としての人間力を高めていくことです」と奈良さんは言う。
正社員の教育サロンであるアイドットグループには、毎年40〜50名の新卒者が入社する。
「彼ら、彼女たちに美容師という仕事を、いわゆる職業としてだけやるのではなくて、生業(なりわい)としてそれぞれの人生に取りこんで欲しい」
そのためにSNSでの発信力の強化、お客さまと長期的に関わっていくためのコミュニケーションやブランディングの教育に力を入れている。
「これからも自己集客できる美容師を増やして、いっしょにアイドットの店舗を日本全国に広げていくことができたらうれしいです」
新進気鋭のサロンが力を入れる店販の強化、自分で考え即座に料金やメニューを変えていくためのスタッフ個人が触れる予約機能、日々の業務を効率化するレジ機能。多様な機能と一元管理で、STORES は大きな目標に向けて前進するサロンをサポートする。
他の業界で15万社もの導入実績があるサービスが、美容業界でどのように広がっていくのか注目だ。
編集・文/大徳明子