2024年11月1日より施行される「フリーランス新法」。弁護士の松本隆さんによる連載『ヘアサロン六法』の第23回は「フリーランス新法ってなあに?」(後編)です。
美容専門学校で美容師法の講義を担当している松本さんが、軽妙なトークとイラストでとことんわかりやすく解説します!
目次
「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく!」
こんにちは!弁護士の松本隆です。
第23回は「フリーランス新法ってなあに?」(後編)です。
「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく」をモットーに、あえて内容をシンプルにしてお送りします。
「従業員がいるサロン」の経営者向けのお話の続きです!
後編は、前回に続き、②の「サロン側に従業員がいるパターン」の残りのポイントを見ていきます!
募集情報に的確な表⽰を!
ウェブ広告などでフリーランスを募集するときは、募集情報について
・ウソや誤解を与える情報を載せてはいけない
・正確かつ最新の内容に保つ
という規制ができました。
例えば、「報酬は施術料金の80%」という内容で募集しておきながら実は全然違う、なんていうのはダメです。
他にも、募集終了後に載せたままにしておくのもダメです。
妊娠、出産、育児・介護に配慮して!
6カ月以上継続して業務委託をした場合には、妊娠、出産、育児・介護と両立しながら仕事ができるような配慮を行うことが「義務」になりました。
例えば、「妊婦検診に行くための時間を確保する、就業時間を短縮する」などです。
なお、6カ月以上継続していない業務委託には、育児・介護等の配慮をする「努力義務」があるということになりました。
ちなみに、法律上は「義務」か「努力義務」かの違いはとっても重要です!
「義務」は絶対やらないとダメなものです。フリーランス新法では違反するとペナルティーもあります。
「努力義務」はできればやってほしいものです。フリーランス新法では違反してもペナルティーまではありません。
ハラスメント対策も整備してね!
セクハラ、パワハラ、マタハラ(マタニティ・ハラスメント)等について相談や適切な対応のための体制の整備をする必要があります。
①ハラスメントを⾏ってはならないよという「⽅針」を明確にして、周知・啓発をすること
(サロン内で方針を広める、研修を実施するなど)
②相談や苦情に適切に対応するために必要な体制の整備をすること
(相談担当者を決める、外部相談機関を決めるなど)
③ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応をすること
(事情の聞き取りをすみやかに行う、被害者の職場の配慮をするなど)
労働者の場合は、「パワハラ防止法」をはじめ、ハラスメント対策の法整備がされていますが、内容は似ています。
「パワハラ防止法」については以下の記事をご覧ください。
中途解除するなら事前予告してね!理由も教えてね!
6カ⽉以上の業務委託を中途解除する場合や更新しない場合は
・原則として30⽇前までに「予告」する義務
・予告の⽇から解除⽇までにフリーランスから請求があったら「理由」の開⽰をする義務
があります。
ペナルティーは・・・?
フリーランス新法に違反した場合は、以下の通りです。
①公正取引委員会or中小企業庁長官に対して違反内容を伝え、適当な措置を求める
↓ 違反したと認めるとき
②必要な措置をとるようにサロンに「勧告」
↓ サロンが勧告に従わない
③サロンが勧告に係る措置をとるよう命令&「公表」できる
↓ 従わなかった場合
④「罰金」(50万円以下)
なお、①の違反を伝えたことを理由にフリーランス美容師に対し不利益な取扱いをしてはいけません。不利益な取扱いも「勧告」の対象となります。
整備しましょう!
フリーランス美容師さんに業務委託をしているサロンの経営者の方は、今回のフリーランス新法に対応できるように体制を整備する必要があります。
いきなりペナルティーを受けることはありませんが、しっかり対応しないとフリーランス美容師さんの信頼を失うことになりかねませんので、施行される令和6年(2024年)11月1日までにしっかり適応できるようにしましょう。
もちろん、弁護士に相談するのもいいと思いますよ!
松本 隆
弁護士/横浜二幸法律事務所・パートナー
早稲田大学法学部、慶応義塾大学法科大学院卒業。2012年弁護士登録(神奈川県弁護士会)。企業に寄り添う弁護士として労働問題を多く扱っており、交通事故や相続にも精通している。また、美容師養成専門学校において「美容師法」の講義を担当しており、美容業界にも身を置いている。社交ダンスの経験も豊富であり、メイクやヘアスタイルにも詳しい。2021年にはメンズ美容のモニターとして100日間チャレンジを行うなど、メンズ美容の重要性も説いている。「髪も肌もボディもケアさえちゃんとすればアンチエイジングは必ずできる」というのがモットー。
横浜二幸法律事務所
▽公式サイト=http://y-niko.jp/
▽TEL=045-651-5115
監修・執筆・イラスト/松本隆(弁護士) 編集/大徳明子