【サロン六法】21.フリーランス新法(前編) サロン側に従業員がいない場合

特集・インタビュー
【サロン六法】21.フリーランス新法(前編) サロン側に従業員がいない場合

弁護士の松本隆さんによる連載『ヘアサロン六法』。第21回は「フリーランス新法ってなあに?」です。

美容専門学校で美容師法の講義を担当している松本さんが、軽妙なトークとイラストでとことんわかりやすく解説します!

「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく!」

松本隆弁護士( 横浜二幸法律事務所)

こんにちは!弁護士の松本隆です。

第21回は「フリーランス新法ってなあに?」です。

今回は前編・中編・後編の3回にわたり、ご紹介したいと思います。

美容室の経営者の方からの質問

フリーランス新法」という法律が2024年(令和6年)11月から適用されると聞きました。

うちのサロンでは、フリーランス(業務委託)の美容師が多いのですが、どんなことに気をつければよいでしょうか?

フリーランス(業務委託)の人を守れ!?

2023年(令和5年)4月、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」が成立しました。

この法律は別名「フリーランス新法」と呼ばれています。

2024年(令和6年)11月1日から施行されるので、もうすぐですね。

これまでの記事でも何度か触れていますが、フリーランス(業務委託)の美容師さんは個人事業主のため「労働基準法の適用がない」ので、雇用契約で雇われている美容師さんに比べると、収入は高い傾向にあるものの、不安定な立場にあります。

この「フリーランス新法」は、フリーランス(業務委託)の美容師さんを守るためにできたと言っても過言ではありません。

経営者の方は、違反をすると「事実の公表」や「罰金」の可能性もあり得るので、これを機会に知っていただければと思います。

知っておきたいパターンは2つ!

法律上の用語はとてもわかりにくいのですが、わかりやすくイラストで表現します。

経営者のみなさんが知っておけばいいパターンは2つです!

美容室の法律。フリーランス新法。弁護士が解説する連載「サロン六法」

まずは、①サロン側に従業員がいないパターンです。

この場合、サロン側を「業務委託事業者」と呼びます。

フリーランス美容師は「特定受託事業者」といいます。

美容室の法律。フリーランス新法。弁護士が解説する連載「サロン六法」

次は、②サロン側に従業員がいるパターンです。

この場合、サロン側を「特定業務委託事業者」と呼びます。

「特定」とつくのがポイントです。

①②で共通するのは「書面で取引条件を示す」こと!

①②のパターンで共通する義務は、サロン側がフリーランス美容師に業務委託をした場合、書⾯かメール等で、直ちに「取引条件を⽰す」ことです。

具体的な内容で美容師業に関係しそうなものは以下のとおりです。

・業務の内容(例:顧客に対する美容行為)

・報酬の額(例:報酬は売上のうちの●●パーセント)

・⽀払期⽇(例:20日締め月末払い)

・発注事業者・フリーランスの名称

・業務委託をした⽇

・役務提供を受ける⽇

・役務提供を受ける場所

特に、「報酬の額」は重要です。

後になって報酬の金額を変えるとトラブルになりますので、最初から明確に決めておくことが重要です。

例えば、売上のパーセンテージは「一律●●パーセント」とするよりは、

①売上〇〇万円までは50パーセント

②売上〇〇万円までは55パーセント

③売上〇〇万円までは60パーセント

というように、金額に応じてパーセンテージを決めるのも1つの方法だと思います。

そして、トラブル防止のために、サロン側は、1人美容師であっても、「業務委託契約書」を作成しておくことを強くオススメします。

弁護士業をやっていて驚くことが2つあります。それは

「契約書がない」という方

・契約書はあるけれど「ネットで拾った契約書を使っている」という方

が非常に多いという点です。

美容師業界は、働き方が他の業界と比べて特殊ですので、ご自身のサロンの働き方に応じた業務委託契約書を作っておくと安心です。

「契約書は作った側が有利」にできることが多いので、経営者の方はこれを機に自分のサロンだけの契約書を作りましょう。

ちなみに、パターン①(サロン側に従業員がいないパターン)の義務はこれだけです!

とにかく、「1人経営者がフリーランスを使うときは業務委託契約書をちゃんと作っておこう!」と覚えておけば間違いないでしょう。

美容室の法律。フリーランス新法。弁護士が解説する連載「サロン六法」

続きは中編へ!

中編では、②サロン側に従業員がいるパターンの義務についてお伝えしたいと思います。

それではまた次回に!

松本隆弁護士( 横浜二幸法律事務所)

松本 隆

弁護士/横浜二幸法律事務所・パートナー

早稲田大学法学部、慶応義塾大学法科大学院卒業。2012年弁護士登録(神奈川県弁護士会)。企業に寄り添う弁護士として労働問題を多く扱っており、交通事故や相続にも精通している。また、美容師養成専門学校において「美容師法」の講義を担当しており、美容業界にも身を置いている。社交ダンスの経験も豊富であり、メイクやヘアスタイルにも詳しい。2021年にはメンズ美容のモニターとして100日間チャレンジを行うなど、メンズ美容の重要性も説いている。「髪も肌もボディもケアさえちゃんとすればアンチエイジングは必ずできる」というのがモットー。

横浜二幸法律事務所
▽公式サイト=http://y-niko.jp/
▽TEL=045-651-5115

監修・執筆・イラスト/松本隆(弁護士) 編集/大徳明子 撮影/幡司誠

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