弁護士の松本隆さんによる連載『ヘアサロン六法』。第18回は「忘れがちな美容師法その1~美容師さんの衛生措置」です。
美容専門学校で美容師法の講義を担当している松本さんが、軽妙なトークとイラストでとことんわかりやすく解説します!
「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく!」
こんにちは!弁護士の松本隆です。
第18回は「忘れがちな美容師法その1~美容師さんの衛生措置」です。
「ヘアサロン経営者向けにわかりやすく」をモットーに、あえて内容をシンプルにしてお送りします。
美容師さんからの質問
私が勤務しているサロンではカットクロスを使い回しています。
これっていいのでしょうか?
結論から申し上げます。
ダメです!
美容師の衛生措置
美容師法は、美容師さんの衛生措置について、以下のように定めています。
美容師法第8条(美容の業を行う場合に講ずべき措置)
美容師は、美容の業を行うときは、次に掲げる措置を講じなければならない。
①皮ふに接する布片及び皮ふに接する器具を清潔に保つこと
②皮ふに接する布片を客1人ごとに取り換え、皮ふに接する器具を客1人ごとに消毒すること
つまり、「皮膚に接する布片(ふへん)」、つまり、カットクロスやタオルなどは清潔にしてお客さん1人ごとに取り換えてね、ということは「美容師の義務」として法律で定められているのです。
「うちのサロンでは、カットクロスは毎回必ず交換しております!」という宣伝を見かけますが、これって当たり前のことなんです。
「あ、うち、使い回してるかも…」と思う方はまずいないとは思いますが、現場に出ていらっしゃらない経営者の方は是非とも現場をご確認下さい。
ちなみに、「皮膚に接する器具」、つまり、クリッパー、はさみ、イヤーキャップ、くし、刷毛、ふけ取り、カミソリ、ロッド、ローラー、マニキュア器具、脱器具、ヘアアイロンなどは清潔にしてお客さん1人ごとに消毒してね、と定められています。
私は、美容師専門学校の授業では美容師さんの衛生措置は歌を作っており、学生さんに覚えてもらっています。
学生さんたちはちょっと引いてます(笑)
立入検査でチェックされている!?
「美容師の衛生措置」の実施状況は立入検査の対象です。
さすがにカットクロスを交換していないことが立入検査で発覚する可能性は低いですが、何があるかわかりませんので、心に留めておいてくださいね!
閉鎖に追い込まれる可能性も!?
閉鎖命令は、美容師法15条に定めがあります。
美容師法第15条(閉鎖命令)
1 都道府県知事は、美容所の開設者が、第12条の3若しくは第13条の規定に違反したとき、又は美容師でない者若しくは第10条第2項の規定による業務の停止処分を受けている者にその美容所において美容の業を行わせたときは、期間を定めて当該美容所の閉鎖を命ずることができる。
2 当該美容所において美容の業を行う美容師が第8条の規定に違反したときも、前項と同様とする。ただし、当該美容所の開設者が美容師の当該違反行為を防止するために相当の注意及び監督を尽したときは、この限りでない。
わかりやすくお伝えしますと、以下の4つのどれかに該当すると出されることがあります。
①管理美容師を置かなかった
②開設者が衛生措置をしなかった
③無資格者・業務停止中の人に美容業をさせた
④美容師が衛生措置をしなかったことについて、開設者が違反防止のために相当な注意・監督をしなかった
美容師国家試験ではこの4つは必須の知識なのですが、なかなか手が回らない部分ですので、覚えないまま合格してしまった方も多いかもしれません。
(私は、美容師専門学校の授業ではこの4つを語呂合わせで学生さんに覚えてもらっていますが、語呂合わせを使っても辛そうです)
今回は、④ですね。
美容師さんの衛生措置違反+開設者(オーナー)が注意監督をしなかった、という場合には閉鎖命令が出てしまうという話です。
例えば、サロンで伝染病罹患者が出て、原因がカットクロス未交換で開設者が監督してなかった、ということになら出る可能性は十分あります。
とは言え、さすがにカットクロスだけで閉鎖になることはないと思いますが、今はSNSや動画で炎上する時代ですので、衛生面をおろそかにしてしまうとどこでどう発覚するかはわかりませんよね。
さいごに
今回は基本的な美容師法の内容のお話でした。
ですが、当たり前のことができないとお客様はついてこないと思いますので、今一度ご確認いただけますとうれしいです。
それではまた次回!
松本 隆
弁護士/横浜二幸法律事務所・パートナー
早稲田大学法学部、慶応義塾大学法科大学院卒業。2012年弁護士登録(神奈川県弁護士会)。企業に寄り添う弁護士として労働問題を多く扱っており、交通事故や相続にも精通している。また、美容師養成専門学校において「美容師法」の講義を担当しており、美容業界にも身を置いている。社交ダンスの経験も豊富であり、メイクやヘアスタイルにも詳しい。2021年にはメンズ美容のモニターとして100日間チャレンジを行うなど、メンズ美容の重要性も説いている。「髪も肌もボディもケアさえちゃんとすればアンチエイジングは必ずできる」というのがモットー。
横浜二幸法律事務所
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▽TEL=045-651-5115
監修・執筆・イラスト/松本隆(弁護士) 編集/大徳明子 撮影/幡司誠