④「お客さまとの共存共栄」という考え方
リアル化学の企業理念は「人を美しく、地球を美しく」というもの。この企業理念を、梢社長が役員と協議し改めて再定義したという。
「『人を美しく』は、『自分らしく、健やかで、美しく生きる』と捉えるようにしました。好きなこと(情熱)、得意なこと(才能)、大事なこと(価値観)を大切にし、人々が充実した時間を過ごせるようにする。それが実現できるよう、理美容師さまの技術と提案を大切にしながら、施術を受けるお客さまの期待に応える製品を開発していきます。『地球を美しく』は、SDGsのことです。自然環境に負担がかからない研究開発を重要テーマとし、地球を美しく、人への安心・安全に貢献します」
リアル化学は2025年12月に創業80周年を迎える。梢社長は新たな経営方針として三つの大きな目標を掲げた。
「一つ目は『100年企業になる』、二つ目は『社員とともに成長する企業になる』、そして三つ目は『グローバル経営を行う』。この三つのポイントを掲げて新しい経営方針にしています。私どもは小さな企業なので、一人ひとりの社員が活躍しなければ100年企業にはなれません。社員みんなで協力してこの会社を盛り立てていければと思います。グローバル経営に関しては、ASEANを中心に新たなお客さまとどんどんつながっていきたいと考えております」
行動指針は「すべてのお客さまの繁栄がなければ、私どもの繁栄もない」というものだ。
「ここで言う『お客さま』とは、消費者の皆さまのことであり、サロンの皆さま、サロンに届けていただく代理店の皆さま、私どもに原料を供給していただくお取引さま、OEMをお願いしている工場など、私どもを取り巻くすべての人たちという意味です。これは私の考えではなく、創業以来、ずっと続いている考え方です」
⑤「人を大切にする」企業を目指して
梢社長による新体制は、企業理念を再定義し、新しい経営方針を掲げ、変わらぬ行動指針を大切にしてきた。その上で、人材育成にも力を入れている。
「なによりも長く働いていただくことを大切にしております。65歳までの嘱託制度に加えて、ご希望があれば67歳まで働くことができる制度を備えました。介護や妊娠、出産、育児時の男女社員それぞれへのサポート強化、疾病予防や罹患した社員のサポート強化を進めています。性別に関係なく、長く安心して働くことができる企業であることを目指しています」
リアル化学の企業理念、経営方針、行動指針、人材育成に通底しているのは、「人を大切にする」ということだ。
「お客さまもお取引先さまも社員も全部含めて、共存共栄を追求していくことを常に考えています。私どもの歴史は、リアルの人間が製品を開発し、リアルの人間が製品を製造することで紡がれてきました。リアル化学らしい製品を研究し、開発し、製造することを大切にしていきたいと思っています」
⑥「おしゃれじゃない、でも……」心に残った言葉
入社後、全国の理美容室を行脚した梢社長は、ある美容師から聞いた言葉が心に残っているという。
「『あんたのところはおしゃれじゃない。ファッショナブルでもない。でも、真面目だよな。技術的にこだわったいいものを作ってるから、ウチはあんたのところのものを使い続けているんだ』と言われました。
リアル化学はPRも上手くありませんし、SNSのマーケティングも力足らずのところがあります。でも、やはり私どもがこだわっているのは、基本性能が高く、理美容師の方々と消費者の方々に安心安全で負担をかけない製品を作り続けることです。理美容業界は大きく変化し続けていますが、今後も製品の機能と価値を上げていき、お客さまに貢献できるようにしていきたいと思います」
梢 倫明
リアル化学 代表取締役
食品メーカーで長年、営業職や広域営業部長を務める。2019年にリアル化学へ入社し専務に就任。2024年1月1日付で代表取締役社長に就任。初の創業家以外からの社長となる。2025年12月の創業80周年へ向けて改革を進める。経営方針として「100年企業になる」「社員とともに成長する企業になる」「グローバル経営を行う」を掲げている。
取材・編集/大徳明子 文/大山くまお 撮影/上米良未来
■ あわせて読みたい