「美容室の経営戦略」シリーズ第1弾として、こちらの記事で、厚生労働省・厚生科学審議会生活衛生適正化分科会による美容業の振興指針をご紹介しました。「振興指針があるのを初めて知った」という声を複数いただきましたので、全体像がつかみやすいよう、振興指針の骨組みを掲載します。
赤字は新規追加や修正事項、つまり市場環境や社会の変化を踏まえて政府が重要視している項目です。項目数が多いため、赤字部分をチェックしていただくだけでもよいかと思います。
5年ごとに更新されている振興指針ですが、前回からの大きな変化は、目標に「省エネルギーへの対応」「訪日・在留外国人への配慮」「受動喫煙防止対策への対応」が盛り込まれたこと、配慮すべき事項として「禁煙等に関する対策」「災害への対応と節電行動の徹底」「最低賃金の引上げに向けた対応」「働き方・休み方改革に向けた対応」が追加されたことです。
「美容業の振興指針」は以下の5章で構成されています。
第一 美容業を取り巻く状況
第二 前期の振興計画の実施状況
第三 美容業の振興の目標に関する事項
第四 美容業の振興の目標を達成するために必要な事項
第五 営業の振興に際し配慮すべき事項
それぞれの目次を見ると概要の想像がつくかと思いますので、以下にご紹介します。
最初は市場分析。「第一 美容業を取り巻く状況」については、こちらで詳しく紹介しています。
振興指針に基づき、国から美容組合に予算が下ります。
「第二 前期の振興計画の実施状況」は、前回(平成26年)策定の振興指針に基づく計画を組合がどれだけ実施できたかの自己評価の表となっています。
第三章は、振興指針のメインである目標についてです。省エネルギーへの対応、訪日・在留外国人への配慮、受動喫煙防止対策への対応が新たに盛り込まれました。
(1) 消費者ニーズの把握と創意工夫による経営展開
(2) 高齢者、障害者及び子育て世帯等への配慮
(3) 省エネルギーへの対応
(4) 訪日・在留外国人への配慮
(5) 受動喫煙防止対策への対応
第四章は、目標達成のための具体的な取り組みについてです。
(1) 日常の衛生管理に関する事項
(2) 衛生面における施設及び設備の改善に関する事項
(1) 経営方針の明確化及び独自性の発揮に関する事項
(2) サービスの見直し及び向上に関する事項
(3) 店舗及び設備の改善並びに業務改善等に関する事項
(4) 情報通信技術を利用した新規顧客の獲得及び顧客の確保に関する事項
(5) 表示の適正化と苦情の適切な処理に関する事項
(6) 人材育成及び自己啓発の推進に関する事項
(1) 衛生に関する知識及び意識の向上に関する事項
(2) サービス、店舗及び設備の改善並びに業務の効率化に関する事項
(3) 消費者利益の増進に関する事項
(4) 経営マネジメントの合理化及び効率化に関する事項
(5) 経営課題に即した相談支援に関する事項
(6) 営業者及び従業員の技能の向上に関する事項
(7) 事業の共同化及び協業化に関する事項
(8) 取引関係の改善に関する事項
(9) 従業員の福利の充実に関する事項
(10) 事業の承継及び後継者育成支援に関する事項
(1) 都道府県指導センター
(2) 全国指導センター
(3) 国及び都道府県等
(4) 日本公庫(日本政融公策金庫)
最後の第五章では、少子高齢化や働き方・休み方改革への対応など「時代の要請」が求められています。
(1) 高齢者、障害者、妊産婦及び子供連れの顧客等に配慮した店舗のバリアフリー対策
(2) 子供連れの顧客に対応した店内設備等の改善
(3) 在宅や施設への訪問美容
(4) 高齢者や障害者に配慮した美容施術の開発
(5) 障害者差別解消法の規定に基づく障害者への合理的配慮
(6) 従業員に対する教育及び研修の充実・強化
(7) 子育て世帯、共働き世帯等が働きやすい職場環境の整備
(8) 地域社会とのつながりを強化する観点も含めた地域の高齢者、障害者 等の積極的雇用の推進
(1) 省エネルギー対応の空調設備、太陽光発電設備等の導入
(2) 節電に資する人感センサー、LED照明、蓄電設備等の導入
(3) 廃棄物の最小化、分別回収の実施
(4) 薬品、化粧品等の各種容器や廃液、毛髪等の廃棄物の適切な処置
(5) 温室効果ガス排出の抑制
(1) 廃棄物の最小化、分別回収の普及啓発
(2) 業種を超えた組合間の相互協力
(1) 地域の街づくりへの積極的な参加
(2) 「賑わい」や「つながり」を通じた豊かな人間関係(ソーシャル・キ ャピタル)の形成
(3) 福祉施設における訪問美容の実施
(4) 共同ポイントサービス事業及びスタンプ事業の実施
(5) 地域の防犯、消防、防災、自殺防止、交通安全及び環境保護活動の推 進に対する協力
(6) 暴力団排除等への対応
(1) 地域の自治体等と連携し、社会活動の企画、指導及び援助ができる指導者を育成
(2) 業種を超えた相互協力の推進
(3) 地域における特色ある取組の支援
(4) 自治会、町内会、地区協議会、NPO、大学等との連携活動の推進
(5) 商店街役員への美容業の若手経営者の登用
(6) 地域における事業承継の推進(承継マッチング支援)
(7) 地域、商店街活性化に資する組合活動事例の周知
禁煙対策は、従来の小項目から大項目へと格上げ、新設されました。
前回の「東日本大震災への対応」から災害全般への対応となり、節電行動の徹底が盛り込まれました。
(1) 災害発生前段階における防災対策の実施及び災害対応能力の維持向上
(2) 地域における防災訓練への参加及び自店舗等での防災訓練の実施
(3) 近隣住民等の安否確認や被災状況の把握及び自治体等への情報提供
(4) 地震等の大規模災害が発生した場合における、地域住民への支援
(5) 災害発生時における、被災営業者のみならず営業者全体による相互扶助と連携の下での役割発揮
(6) 災害発生時における、被災営業者の営業再開を通じた被災者へのサービスの確保・充実や地域コミュニティの復元
(7) 従業員及び顧客に対する節電啓発
(8) 中長期の節電に資する省エネルギー対応の設備の導入
(9) 節電を通じた経営の合理化
(10) 電力制約下における新たな需要(ビジネス機会)の取り込み
(1) 営業者及び地域並びに災害種別を想定した防災対策への支援
(2) 同業者による支え合い(太い「絆」で再強化)
(3) 災害発生時の被災者の避難誘導などを通じた帰宅困難者防止等への取組
(4) 被災した地域住民への美容ボランティアに関する呼びかけ
(5) 節電啓発や節電行動に対する支援
(6) 節電に資する共同利用施設(共同蓄電設備等)の設置
(1) 過去の災害を教訓とした緊急に実施する必要性が高く、即効性の高い防災、減災等の施策
(2) 節電啓発や節電行動の取組に対する支援
「最低賃金の引上げに向けた対応」も新設項目です。『政府の目標として「年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げ、全国加重平均が 1000 円となることを目指す」ことが示されていることから、以下に掲げる事項を中心に積極的な取組に努めることが必要である」とされています。
(1) 最低賃金の遵守
(2) 業務改善助成金及びキャリアアップ助成金等各種制度の活用
(3) 関係機関が開催する最低賃金に関するセミナー等への参加を通じた最低賃金制度の理解
(1) 最低賃金の制度周知
(2) 助成金の利用促進
(1) 最低賃金の周知
(2) 助成金の利用促進
(3) 関係機関との連携によるセミナー等の開催
(1) 事業者への周知
(2) 監督の拡充
「働き方・休み方改革に向けた対応」も新設項目です。『従業員がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる職場環境をつくることで人材の確保に繋がり、ひいては生産性の向上が図られるよう、営業者には長時間労働の是正や、公正な待遇の確保等のための措置が求められる』とされています。
(1) 時間外労働の上限規制及び月 60 時間超の時間外割増賃金率の引き上げへの対応による長時間労働の是正
(2) 年5日の年次有給休暇の確実な取得
(3) 雇用形態又は就業形態に関わらない公正な待遇の確保
(4) 従業員に対する待遇に関する説明
(1) 事業者への周知
(2) 監督の拡充
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