子どもの親権のあり方が大きく変わる、共同親権の導入。
一方でDVや児童虐待が離婚後も続いてしまうのではないかという懸念も出ています。
今回の「週刊タイパニュース」では、共同親権のもう1つの側面についてさらに深掘りします。
共同親権を導入する法律が国会で成立
こんにちは!ジャーナリストでVTuberとしても活動している宮原健太です。
これまで2回にわたってお届けした共同親権ですが、17日についに国会で改正民法が成立し、日本でも導入されることが決定しました。2026年にも施行される予定です。
しかし、その裏では共同親権の導入によって離婚後もDVや児童虐待が続いてしまうのではないかという懸念が出ています。
DVや児童虐待が継続してしまう?
共同親権によってDVや児童虐待が継続してしまうとは、どういうことなのか?
そもそも、共同親権とは、離婚後に片方の親だけが親権を持つ単独親権だけでなく、両方の親が親権を持つこともできるようにするということでした。
ただ、もしDVや児童虐待が原因で離婚した場合、両方の親が親権を持ってしまうと、そのもとで虐待などが続いてしまう恐れがあります。
共同親権では離婚後に別居をしたとしても、面会交流が拒みにくいことから、その後も子どもに悪い影響を与えてしまうかもしれないわけです。
DVの裏には「偽装DV」も
もちろん、そうしたことも見越して、新しい民法でもDVや児童虐待などが離婚の原因の場合は、共同親権ではなく単独親権とするように定められています。
難しいのは、離婚する際に親権を争っている場合、実際にはないDVや児童虐待をでっち上げてしまうこともあるのです。
前回、子ども連れ去り問題について解説しましたが、親権を得るために先に子どもと別居する親が、実際にはないDVや児童虐待を主張することもあります。
>> 子ども連れ去りが社会問題に、共同親権導入の背景 宮原健太の週刊タイパニュース(28)
こうしたことを「偽装DV」と言いますが、本当のDVか偽装DVかを判別するのは非常に難しい場合もあるわけです。
家庭裁判所は適切な判断をできるのか?
離婚後の親権についてもめた際、共同親権にするか、単独親権にするか、単独親権の場合にどちらが親権を持つのかは、家庭裁判所が判断することになります。
しかし、先ほど解説したDVと偽装DVを家庭裁判所が見分けて正しい判断を下すのは非常に難しいと言われています。
もし万が一、本当にDVや児童虐待が起きていたのに、裁判所が共同親権を認めてしまった場合、その後も子どもへの悪影響が続いてしまうわけです。
こうしたことから共同親権の導入には懸念も出ており、実際に法が施行されたあとも、きちんと子どもの利益になるための判断がなされているか、DVや児童虐待が継続してしまうような事態になっていないのかは、目を光らせる必要があるでしょう。
次回は、また別のニュースについて解説します。
ぜひ、お楽しみに!
宮原 健太
ジャーナリスト、YouTuber
1992年生まれ。2015年に東京大学文学部を卒業し、毎日新聞社に入社。宮崎、福岡でさまざまな事件、事故、災害現場の報道に携わった後、東京政治部で官邸や国会、政党や省庁などを取材。自民党の安倍晋三首相や立憲民主党の枝野幸男代表の番記者などを務めた。2023年に独立してフリーで活動を開始。文春や集英社、PRESIDENT Onlineや現代ビジネスなど様々な媒体に記事を寄稿している。YouTubeチャンネル「記者VTuberブンヤ新太」ではバーチャルYouTuberとしても活動しており、日々のニュースを分かりやすく解説している。
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編集/大徳明子 文・図表/宮原健太(ジャーナリスト)